夢を叶えるために
ある街に、一人の少年がいました。
その少年は、夢くんと言い、いつも一人ぼっちでした。
幼い頃に孤児院に捨てられて、厳しい生活だけれども、それでもなにか変わると、一生懸命に生きていました。
「ユメくん。あなたはどうして、そんなに一生懸命なの?」
同じ孤児院の女の子、ユニちゃんが不思議そうに尋ねました。
「僕は、独りだから。一生懸命に生きるしかないんだよ」
どこか、寂しそうにユメくんは笑いました。
「私たちがいるよ?ユメくんは独りじゃないよ」
ユニちゃんがそう励ましても、ユメくんは首を横に振るばかり。
だって、孤児院の仲間たちは、気に入られたら大人の人にもらわれて、そこで幸せに暮らすからです。
別れは、痛くて辛い。そう考えるとどうしても距離をとってしまいます。
ユメくんはいつもの駅前広場で、靴磨きをして稼いでいました。
そして、手の空いた時、人々を見て思うのです。
家族連れはいいなと。僕のお父さんとお母さんはどうして僕を捨てたんだろう?
そんなある日のこと。ユニちゃんが、大人の人にもらわれることになりました。
かわいくて優しいから、そうなるだろうなと思っていました。
「さよなら、ユメくん」
「うん。幸せにね」
悲しい心を隠して、笑顔で見送りました。ほらね。僕は独りなんだ。
ユメくんは、ユニちゃんのことが好きでしたが言わないことにしました。
そして、それでも毎日靴磨きをする日々。そこにある変化が投じられます。
駅前広場では、夢を持った人々が、演技をしたり演奏をしたりしているのです。
それは、駅前広場でのある劇団のパフォーマンスでした。
それを見て、ふと思いました。
劇団で有名になれば、自分のお父さんとお母さんも見てくれる。
そう思いこんだユメくんは、その劇団、『回る招き猫』で下積みから頑張って働きました。
「お主、やるにゃ~」
いつも、演技の練習を夜中にしている団長のニャルーカスは、ユメくんに端役をさせることにしました。
ぼっちでも、イケメンなユメくんは、たちまち駅前広場や劇場で人気者になっていきました。
「ユメくん」
そんなある日のこと。舞台が終わり、声をかけられました。
「……ユニちゃん?」
「うん、久しぶり」
そこにいたのは、月日が流れ成長してキレイになったユニちゃんがいました。
綺麗な服装。自分とは違うなと、自嘲気味に笑うユメくん。
その手を握り、にっこり笑うユニちゃん。
「ほら。また会えたから、独りじゃないよ!」
「そうだね。会えて嬉しいよ」
それからもユニちゃんは、時間がある時はユメくんの舞台を見に行きました。
そして、そんなある日のこと。ユメくんは舞台に上がらなくなったのです。
ユニちゃんは気になって、団長に尋ねると分からないとにゃんと鳴きました。
劇団で働くようになってからユメくんは、劇団の事務所で住み込んでいたユメくんは、なにをするでもなくボーッとしていました。
「ユメくん、どうしたの?有名になって親に見てもらいたいんじゃないの?」
「……もういい。生きる意味がない」
ユメくんは、ある日体調を崩して病院に行ったら、余命宣告されたのです。
ぼっちで、友達もいない。それでも生きろと周りは縛るのかと。
もうすぐ死ぬのに、一生懸命に生きないといけないのかと。
「カッコ悪い」
「ユニに僕の気持ちが分かるか!」
乱暴に突き放してユニちゃんは、それでもなにも言わずにそばにいて、時間が立つにつれてまた練習しているユメがいて。
自分には、舞台しかないんだなと思いました。
いや、ユメもいる。光りは見えないけれど、月明かりの下でユメはいつか、命の尽きるその瞬間まで演技をして両親に見てもらう夢を見続けました。
ユメくんは、その後余命よりも五年長く生きて、ユニちゃんと結婚までしました。




