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誇り
逢魔が時。染まる稲穂を見ながら、長屋町へ急いでいると、一之心がまたいつものように、苛められていた。
同じ長屋に住む子で、母一人、子一人だ。
「やーい、妾の子!」
「こらー!」
石を投げていたので注意したら、走って逃げて行った。
「一之心。どうしていつも、耐えているの?やり返せばいいのに」
うずくまって耐えていた一之心に声をかける。
「……そんなことしたら、あいつらと同じだ。私の人としての誇りがそれを許さない」
ああ。この子がお偉いとこの侍のとこの妾の子だとしても、侍としての誇りは誰にも折れないのかな。
私が、彼に惚れた瞬間はこの時かもしれない。
「夏奈緒、見てろ。いつか剣の腕で成り上がってやるからな」
怪我をものともせず、私を見てにこりと笑う。
「はい。楽しみです」
私は、陰ながらこの人を支えたいと思った。




