表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君と僕の物語  作者: かずねこ
2/34

相合い傘

梅雨の時期は、雨が世界を変えてしまう。

雨を好きか嫌いかは、人それぞれだが、天野晴明は、比較的好きだった。

傘に当たる雨の音や、いつもと見える景色が、変わってしまう感じが好きだったりする。

なにより嬉しいのは、晴明の斜め前を歩くクラスメイトの久遠雨月も、雨の世界を、楽しそうに眺めてるそとだ。

高校に入ってから、三年間ずっと一緒で、今日みたいに登下校のさいにも、一緒になることが多々あった。


その中で、好きになってしまったのだ。

晴明は、二年ちょいもの間、告白出来ずにいた。

雨月は人気者で、静かだが、にこにこしてるから人が集まる。

黒髪の似合う人だと、晴明は見るたび思う。


「晴明くん」

「ん?」

「今日一緒に帰らない?」

「え?いいけど…」

晴明は、ドキドキした。帰りが、偶然重なって、一緒に帰ることがあるけれど、誘われたのは初めてだから。


その日の授業中ずっと、雨月のことばかり考えていた。

いつ、食堂でご飯を食べたのかも分からない。



そして、放課後。ゲーセンにでもよろうぜと言う誘いを断り、晴明は教室を出る。待ち合わせは下駄箱だ。

廊下を歩きながら窓の外を見ると、不機嫌な空の下で、雨はしとしとと、降っている。


下駄箱に着くと、なんだか冷たい冷気がつきまとい、ブルッと震えてしまう。雨のせいだろう。


革靴を履き替え晴明は、雨月を探すと、昇降口のとこにいた。

雨の降る校庭を、どこかうきうきとして眺めてる。


「…待たせたかな?」

「ううん、大丈夫」

にこにこしなが、雨月は答える。その手に持つ傘は、Jkが持つにしては渋い赤色の番傘。

あれ?朝持っていたのは、ピンク色の傘だったような?

そう思う晴明だったが、それ口に出すことなく傘を広げる。


「行こう。話しは歩きながら聞くよ」

「あ、うん。あのね?」

雨月は、躊躇うようにもじもじしてる。首をかしげる晴明は、傘に当たる雨音を聞きながら尋ねた。

「どうしたの、帰らないの?」

「そっちの傘に、入れてもらえる?」

恥ずかしそうに、顔を真っ赤にして言う。

「え?自分の傘あるじゃん?」

戸惑う晴明。女の子と相合い傘なんて。ましてや好きな人となんて。心臓が破裂してしまう。

リア充ではないので、サッと傘を差し出すことは出来ない。


「えい!」

雨月は、しかし強引に傘に入って来ると、照れながらも微笑む。

「行こ?」

「…ああ」

雨月の肩が、濡れないように歩き出す。


「えへへ」

雨月は、晴明のことが気になっていたので、なんとか一歩前に進めたかったのだ。



でも、それとは別にこの傘の施しが、晴明には解けて見えてることに気づいたので、秘密を明かすことにしたのだ。

この傘は、唐笠お化け。今も挨拶したくてうずうずしてるのが、手のひら越しに伝わってくる。



この後、晴明は新しい世界をしることになる。

梅雨時に二人の距離は、縮まったのである。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ