糸電話
放課後。掃除が終わり、さて帰るかと思ったら、友達の奈緒が、にこにこしながら、やって来た。
いつも、ふざけあったりして気の合う友だちだ。
「はい」
「………なにこれ?」
紙コッブ?二つの内の一つを奈緒は俺に渡す。
「見て分かんない?紙コップだよー!」
「いや、分かるけども」
遠回しになにか、ドリンクをせがんでるのか?まあ、いいけど。
「喉乾いたのか?奢ってやるよ」
「そうじゃないって。私ね」
「ああ」
「今日で、あなたと友達を止めます」
「は?」
「だから、友達止めます」
そう言って、にこやかに手を振って行ってしまう。
「え?え?」
訳が分からない。俺は、なにかしたか?心当たりがない。
まさか、昨日の休み時間に、パンスト相撲をやろうって言ったことか?
いつも、ふざけあってるから、その延長だと思ったんだが。そうだとしたら、悪いことしたな。
「お、一弥。フラれたのか?」
「フラれてねー!それ以前に付き合ってねーし!」
友達の光太が、にやにやしながら肩に手を置く。
ともかく分からん。奈緒とは、高校に入ってから一緒だが、好きな音楽がクラシック。
全く聴いたことのなかった俺が、奈緒がスマホで聴いてるのを興味持って、CD借りたりしてる内に、よく話すようになった。
「ま。ちゃんとフォローしとけよ」
なにが楽しんだか、さっさと行ってしまう。ま、明日ちゃんと話そ。
帰る途中、スマホにメッセージがあったので開くと、奈緒だった。
『こんにちわ。先程渡した紙コップは、魔法の糸電話です。後で、声を届けますので、ちゃんと聴いて下さい』
「…………」
もろ、他人行儀が、心に突き刺さる。女性って、そう言うとこあるよなー。
距離詰めても、ちょっとなんかあったら、すぐに崩す。ジエンガか!
それに、魔法の糸電話ってなに?
そう言えば、なにかの物作りのお店やってるとか話してたな。
トボトボと帰宅して、自分の部屋へ。
しばらくごろごろしてたら眠くなって、うとうと。
『おーい!』
「 ……うう」
『おーい!聴こえてますかー?一弥くーん!むっつり一弥!』
「誰が、むっつりだ!」
しかし起きても、誰もいない。気のせいか?
部屋を見回すも、誰もいない。寝ぼけてたか?
『こっちこっち!』
「奈緒?」
見ると、鞄から出していた紙コップから、奈緒の声が聴こえる!?
思わず手に取って覗いてみる。見たとこ、フツーの紙コップだよな。
「奈緒!?これ、どーなってるんだ!?」
「だから、言ったでしょー。魔法の糸電話だってさ」
「言ったけども、普通は信じないだろ?」
「ふふ、私のお父さんが、魔法道具の職人なんだよ。誕生日に作ってもらったのです」
そんな職人がいるのか?どうやら、秘密の職人らしいと得意気に話してくれたけど。
「…友達でもない俺に、話していいんですかね?」
「あ、怒ってますか?」
「………んで、話しって?」
傷つけられたんだから、少しくらい冷たく突き放してもいいだろう。
「え、とね」
なにか、ためらってるな。これ以上傷つけるつもりか。
「………俺、お前になんかした?」
「お前って言うな」
「わりわり」
奈緒は、お前って、言われるとすぐ怒る。気持ちは分かるが。
「ともかく、いきなり友達やめるとか、酷いって!
昨日のパンスト相撲で怒ってるんだろ?奈緒はノリがいいから、一緒にしてくれると思ったんだよ。悪かったって!」
「…そんなことじゃないよ、鈍感!」
パンスト相撲は、そんなことか。なら、なんだ?分からん。
「一弥のことが好きだから、友達やめるって言ったのー!」
「いい!?」
奈緒が、俺のことを?友達としか見られてないと思ってた。
突然のことに、何て答えていいか分からない。
「………」
「ちょっとー、女の子にここまで言わせたんだから、なにか言いなさいよー!」
「じゃあ、俺も友達やめるわ」
「え?それって……」
「す、好きだよ、奈緒」
顔を見て言ってないのに、これはこれで恥ずかしい。上擦ってしまった。初の告白だから、しょうがない。
「ホントに?嬉しい!」
奈緒が、嬉しそうに笑ってる姿が思い浮かぶ。
「でも、なんで糸電話?」
「大切な人に、渡したかった」
「ど、どうも」
「それに、糸電話なら、ずっと、しゃべってられるでしょ?」
「そうだな」
こうして、奈緒との長電話(?)は、夜遅くまで続いた。
明日、学校で会うのが照れくさ。さっきまで、友達で、明日会うときには、恋人だから、世の中、なにが起きるか分からないな




