家の前で
――ゴーン。ゴーン。
タダンさんの家の振り子時計が時間を知らせた。
「あ。そろそろ帰らないと」
「そうだね……」
私の話を聞き続けてくれたタダンさんは、少し疲れているようにも見える。ちょっと私だけで話しすぎたのかな?
「タダンさん。聞いてくれて答えてくれてありがとう」
「いや。レイヴンの気持ちが分かって良かったよ」
「そう?ならシンデレルにもよろしく」
「きつく言っておこう」
タダンさんとの話が終わる頃には『理事長』から『シンデレル』と呼ぶようが慣れてきてしまった。本人に呼び捨てにしていいか聞いてみよう。
【レイヴンさん、終わった~?】
「終わったよ」
【レイヴンさんがあんなにお喋りだとは思わなかったよ~】
「エルとタダンさんにだけだよ」
【お友達?】
「エルはいっぱいいるよ」
【いや、ミシュエル君のことじゃなくて……】
そんなことは分かってるけど、イズミにはっきり「いない」というのはなぜか嫌だった。それに「エルは」って言ったので私にはいないのだと理解してほしい
「さ。帰るよ。それじゃあ、タダンさん、タマサン。また。今度は図書館で」
「あぁ」
【またね】
私はタマサンの頭を撫でてからタダンさんの家を出た。
【ねぇねぇ、オレは撫でてくれないの?】
「・・・家に帰ったらね」
【家じゃなくてもここで撫でてくれてもいいんだよ?】
「・・・家に帰ったらね?」
【わ、分かった】
私はイズミと共に家にまた走って帰った。
【猫は短足なんだよー!】
とイズミは途中で言ってたけど、猫科で人より足の早い動物はいる。魔法を使ってる人とは知らないけど。
家に付くと、エルが何かを両手で持ち上げて揺さぶっていた。
【やーめーてーぇーーー!!!】
エルが揺さぶっている動物は喋っており、陛下から造り出された影だと分かった。大きさは猫くらい。
「おねぇちゃんをどこにやった!!!」
エルは怒っていた……私のために……じゃない。止めないと。私はエルに駆け寄る。
「エル!」
「あ、おねぇちゃん!!」
【ぐぇっ】
エルは私に気づくと持っていた影をパッと放して私に抱きついてきた。
「おねぇちゃん!どこ行ってたの?」
「書き置き見てないの?」
「かきおき?」
「玄関のドアの所に貼っておいたんだけど?」
「見てくる!」
エルは私から離れ玄関のドアまで駆けていくと、書き置きを読んだのかすぐに戻ってくる。
「ほんとだ!『ちょっとお出掛けしてくる』って!帰ってくる時間も書いてあった!」
「エルが寝てるときいつも書き置き残してくでしょ?」
「ごめんなさい……」
「……謝るのならその動物さんに謝りなさい」
「動物。ぐらぐらしてごめんなさい」
【許せるかっーー!】
その影は地面にぐったりとしていたがエルの言葉に、怒りでかすぐに起き上がった。
【ワタシを見るなり掴みかかってきて簡単に許せる分けないでしょー!】
「だって、ドア開けたらいきなり【やぁ。お姉さんからワタシのこと聞いてる?】って言ったんだもん!おねぇちゃん連れていかれたと思ったんだもん!」
私がいないと分かって最初に会ったやつからいきなり私のことを言われたら、連れていかれたとか思っても仕方がないと思うけどね……
「エル。落ち着いて。影さん。ちょっと話し合おうか?」
【話し合うって何を……】
エルが悪かったは認める。イズミ同様いきなり出て来てというのはやっぱり戸惑いでどう思われても仕方がないとも思う。
「エル。この猫さんとじゃれてて?」
「猫?あ、ほんとだ!猫いる!」
「猫さん。猫らしくよろしくね?」
【……にゃー】
イズミにエルと遊んでおいてもらっている間にこの影……いや、子狐が喋っていたことを思い出してほしい。
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