言っていない
講堂での新入生への『入学おめでとう』の挨拶が理事長からされ、今後の説明もされた。
この後新入生は、授業の感覚を掴むためにテストを少しやり、学校の施設を巡るそうだ。保護者達は帰るもよし、待つもよしらしい。
「また、寮に入る子は授業後に鍵を渡すから教室に残って、先生から受け取ってくれ」
その言葉を聞いたミューカさんに話しかけられた。やっぱり来た……
「ねぇ、レイちゃん。ミシュくんは寮に入れないわよね?」
「後ででいいですか?」
「えっ」
「こうどうの外で話します」
「まさか……いえ、分かったわ。後でちゃんと聞かせてね」
「はい」
ミューカさんに話すタイミングはここでしたかった。
エルの入学が決まったときに話してたら、寮のことは反対されそうだったから。私のため、エルのために。
理事長の話が終わるとクラスごとに教室へと向かうようだ。……ここでエルとはお別れだ。
エルとカイルが私達の席のそばを通る。エルは小さく「いってきまーす!」と言って教室へと向かった。
他の保護者も各々と動き始めた。私はミューカさんと講堂の外へと向かうと、人が少ないまで行き話をした。
「レイちゃん。ミシュくんを寮に入れるのね!?どうして相談してくれなかったの!?学園から遠いだけなら家を借るくらいはす――」
「――ごめんなさい。でも、決まったことですから」
ミューカさんは言いたかったことを早口な言葉で言い出して『家を借りるくらいはするわよ!?』と言うであろう言葉を言わせないように、私は決まったことだと言った。
「決まったことって……ミシュくんはちゃんと理解してるの?」
「エルには言ってません」
「言ってないって……レイちゃん。なんでも1人で決めすぎじゃない?大人は私達だっているのよ?」
確かにそうだとは思う。でも。
「……エルはきっと、家をはなれるくらいなら学校なんていかないっていうか、がんばってって通おうとします。でも魔法も不安定で体力はそこまでなくて、疲れはすぐに回復しますけど、夜になると疲れてごはんも食べずに寝ちゃうんです」
「・・・」
「それをあの家から毎日やろうとすれば……エルの今の体は持ちません。魔法でなおせますけど、毎日なおしていたら体力が付かなくなります。勉強時間もなくなります。だから、寮に住ませるんです」
エルを学校に通わせるって決めたときから、考えて、たくさん考えて決めたんだ。私1人でだけど出来るだけ
「レイちゃん……」
「私とエルのことを思うなら、寮に入ったエルが帰ってこないように協力してください。おねがいします」
私はミューカさんにお願いした。少しの時間、私もミューカさんも喋らなくなったけど、
「……ミシュくんはきっとレイちゃんが思っている通りにするわね。子供の考えはとても分かりやすいから。次にミシュくんがレイちゃんに会ったら、一緒に帰ろうとするわね」
「ミューカさん……」
ミューカさんは短い時間で考えてくれてたのだ。私のこと、エルのことを。
「協力はするけれど。レイちゃん。ミシュくんが落ち着いたら会いに来るんでしょ?」
「もちろんです」
「学校がお休みの日はどうするの?」
「会いません。そこは理事長にお願いしてあります」
「理事長に?レイちゃん。いつの間に知り合ったの?」
「特待生制度の件で……知り合って」
そういえば特待生制度で受けたことも言ってなかった。
「ミシュくんって、特待生制度を受けてたの!?」
「あ。はい」
その後私はミューカさんから色々と質問をいっぱいされた……
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