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涙、涙


私は無言になって理事長を睨むように見つめた。



「知ってる理由を言えばいいのか?」



私はうなずいた。



「特待生制度を使う者の身辺調査は基本だ。だから、調べられることは全て調べた。祖父母、両親、姉弟、知人、仕事先。人物の性格などな。


ミシュエル君は現在姉と2人暮らし。

親しい者は孤児院の同世代、子爵の息子……この子はこの学園に入学するから一緒になれるのは、嬉しいだろうな。それと、両親の件で馬車に無意識的に嫌悪感を抱いている。あってるな?」

「……はい」



理事長が調べて知っていたことは全てあっていた。

理事長が知っているように喋っていたのは本当に知っていたからだった。恐怖を感じた損だ。



「だが……」

「?」



まだ何か知っていることを話すの?



「だが、俺は調べていくうちに2人の身内の気分になっていた。兄や父のような気分だ。ミシュエルが可愛くて、レイヴンが可愛くて仕方がない」

「は?」

「レイヴンもいずれはこの学園に特待生制度で入りたがっているのが調べていて分かった。だから、レイヴンのことも調べた。おばあさんが亡くなってエルを1人で育てて、その上仕事に勉強……うっ……」

「えっ?!」



理事長が泣き出した。

大人が泣くほどのことはしてないと思うんだけど……



「苦労して……いや。レイヴンに、取っては、苦労じゃないんだろうが、見てる方からしたら、うぅ……」

「あの、ハンカチ……」

「あぁ、ありがとう……うぅっ…」



『見てる方からしたら』の後に続くはずだったのは、多分『苦労して可哀想』とか『つらそう』とかなんだろう。今までこそこそ言われてきたからなれてるけど……ここまで泣く人はいなかった。

それに大人がここまで泣いている姿は、見たことがないからどうしたらいいのか――



――ガチャッ、バン!!!


「おねぇちゃぁぁん!!!」

「エル!?」



私の考えを途切れさせるように扉が勢い良く開き、エルが、泣いているエルが私の胸に飛び込んでくる。



「ぐっ…!エ、エル?どうした、の?」

「うぁーーーん!!!」



エルのタックルのような抱きつきに少しだけ痛かったが、それよりもエルだ。

なぜトイレに行っただけでこんなにも泣いているのか。お化けでも出たのか?いやいや、エルはお化けでも友達になりたいと向かっていくような子だし、それはない。

だとしたら何?あ、一緒に行ってた女の人なら!


しかし、エルが開けた扉の近くには女の人はいなかった。


この部屋には今、



「うぁーーん!!」

「ミシュエル……ぐすっ。いったい何が……」



大泣きしているエルに、エルが飛び込んできて涙が引きだした理事長。

とてもどうしていいかわからなくなる状況だ。



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