王太子は去った
『王子の側にいて親しい女の子を、王妃様は逃がさない』
こんな風に言っていたジャルの言葉からすると、私は今、王子であるロットの近くにいる女の子。親しくは……ない?
けれどロットの近くにいるのは確かだから、ここに今王妃様が来たり、知ったりしたら……
「おうたいしでんか」
「!……もう名前では呼んでくれないのかな?」
王子様って分かったから言っただけだし。
でも、王子様が名前で呼んでいいって言ってるので、言わせてもらいましよう!
そういえば、私はまだロットの名前の全てを知らない。『ロット』『ランス』ロットランス?なんだか違和感。じゃあランスロットかな?
「……ロット。帰ってくれない?」
「えっ……」
「ジャルからきいたの。あなたがいると私の自由がなくなるって。おうひさまにめをつけられたくはないの」
「……」
「ジャル。よくやりました」
「王妃様と嬢ちゃんの性格を考えたら当然、嬢ちゃんを守るだろ。可哀想だ」
「王妃様に命令されたら私達にはどうすることも出来ませんからね。知られないうちに解決するのが得策です」
「……分かった。だが」
「?」
ロットは私を見つめる。
「……名前を、呼んでもいいかな?」
さっき呼んでいた気もするけどそういうことじゃないんだよね?多分。
「呼んでいいっていったら、ロットは帰ってくれるの?」
「うん。あ、あと、出来れば握手も」
「握手?」
握手?なぜ?
「分かった。『レイヴン』って呼んでもいいよ」
「! レイヴン…」
「あと、あくしゅね」
私はロットの右手に向かって手を伸ばすと、握手をした。
――ギュッッ。
握手した時にロットは少しだけ力を強く込めた。少しいたかったけど、男の子だし力が強いのは仕方ないよね。
「ありがとう。レイヴン」
「うん」
「ゼイラル、ジャル。レイヴンを頼んだ」
「「はい」」
「それじゃあね」
「うん」
ロットはゼイラルさんとジャルになにかを頼むと、そのまま出入口に向かい、去っていった。
「…おねぇちゃん!みてみてー!」
「わーすごいね」
ロットが去るとエルが描いた絵を持って駆け寄ってきた。
「うん!おうちにかざるの!」
「そっか」
エルが描いたのはここにある花達だった。エルも私もおばあちゃんのおかげで花がとても好きだ。
だから、見たことのない花や、育てるのが難しい花は絵にして部屋に飾っていたり、棚の中にしまわれている。
「ねぇ、まだおうちにかえらないの?」
「そうだね……こうたいひさまじゃなくて……おばちゃんがなにかくれるものをえらんでるからそれまでだね」
「そうなの?じゃあ、はやくっておねがいしてくる!」
「えっ…」
「おばちゃーん!」
エルは后太妃様のいる衣装部屋へといくと、『はやくしてー』とか『まだ~?』などの言葉をかけた。
エルの偉い人に対する態度をダメだという人が、ここにはいないのが凄く幸せなことだと今になって思う。
普通は叱れるか、怒られるか、とにかく『なんというやつだ!』的な目で言葉を向けられるから。
まぁ、それを后太妃様自身が望んでても良くは思われないだろうけど……ここにはそんな人はいないみたいで安心だ。
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ブックマークをしていただきありがとうございます。
作者は誉めると伸びる子なので、ありがたく嬉しい限りです
明日は番外編を投稿します。6時に。




