再会
あれから后太妃様は衣装部屋と呼ばれる場所に入ってしまって戻ってこない。
ただ、その部屋に通じる扉は開いているから、ガタゴソと何かを探す音や横切る后太妃様が時おり見える。
その間、メイドさん達は后太妃様が探し終わった場所の整頓をしているようだと、話し相手を頼まれたジャルが教えてくれた。
ゼイラルさんはエルが起きたときに側にいるようにするため、戻ってくることはないと、これもジャルが教えてくれた。
「后太妃様は何を探してるんだろうな…」
「わかんない…」
私達はただのんびりと待っている。
「ジャルは座らないの?」
「まぁな」
「へぇ。ジャルとゼイラルさんはお…こうたいひ様のきし?」
「いや、俺達はただ嬢ちゃんと弟君と顔見知りだって知られたから、ここにいるだけだ。主は別にいる」
別に……でもその主の人も大変だ。
いきなり后太妃様から騎士を貸してって言われたんだろうから。あ、でも、私は感謝しないといけない。エルの靴のことを。
「こうたいひ様のおねがいをことわれるのは、王様だけだと思う」
「断るつもりだったのか?」
「それはない」
「だろうな」
部屋の中には后太妃様の何かを探す音と、風で草木が揺れる音だけがしている――
――コンコン。
「おばあ様。いますか?」
男の人の声。あれ?今『おばあ様』って言わなかった?つまり、王様!?いや、声が幼い感じだから王子様?!うそ!
私だって女の子だ。おとぎ話の王子様にだって憧れる。……でも、上がったテンションは顔には出ないが押さえられない。
「あら?」
衣装部屋から顔を出した后太妃様は、扉に向かって歩きだすと自らで扉を少し開けた。后太妃様で隠れてみ、見えない!
「おばあ様。とつぜんの訪問、申し訳ありません」
「いえ。それで?なんのようです?」
「……分かっているでしょう?」
「そうですね。しかし、今2人は私の与えた仕事をこなしています。まだ返せませんよ」
2人。与えた仕事。まだ返せない。
・・・私はちらりと扉から視線を外し、ジャルを見る。私が考えていたことが真実であることをジャルの気まずそうな顔を見て、やっぱりそうなのだと思った。
ジャルとゼイラルさんは、王子様の騎士だったのだ。ゼイラルさんはともかく、ジャルが王子様の騎士だなんて……解せない。
「せめて、事情くらいは教えてくれても良いのではないですか?」
「貴方が口が固いのなら教えて差し上げます」
「かたいですよ?」
「リリーナさんに問われても?」
「・・・母上は押しが強くて……」
「なら、ダメですね。お帰りなさい」
「・・・どうしてもですか?」
后太妃様相手に王子様もなかなか引き下がらない……
「えぇ。ですからお帰りな――」
「おばちゃん!」
扉の外からエルの声がする。起きたのだ。
迎えにいきたいが、后太妃様が扉の前に陣取っていて、ことわりなく出ることは難しそう。
「まぁ!エル君、起きたの?」
「うん!・・・だあれ?」
多分、エルは王子様に向かって言ったのだろう。
でも、金髪金眼で喜ばないなんて、勇者とか王子様定番だったと思うんだけどな……
「君こそ。それにおばあ様をそんな風に呼ぶのは――」
『君』?なんだろう。前に、ごく最近この声を聞いた気がする。それも近くで。
「おばちゃん、おねぇちゃんは?」
「中にいますよ。さ、入って」
「うん!おねぇちゃーん!」
「おばあ様!彼は――!!!」
「あっ」
エルが扉を通ってこちらに来る際、開いた扉から見えた顔は、見ま違うはずもない金髪金眼の男の子。
「『ロット』?」
「『君』?!」
私とロットは再会を果たした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




