弟と同じく
祷
私は今、王宮へと移動をするため、馬車のドアの前にいる。
「・・・」
「大丈夫ですか?」
ゼイラルさんが心配そうに私を見ている。
ジャルは先に眠ってるエルと馬車の中。
ニーダン副隊長は馬を扱う係になっている。みんな私が乗るのを待ってる。
「大丈夫、です」
いざ、乗るとなるとあの日の事を思い出す。あの日の……お母さんと、お父さんとおじい――
「レイヴンさん。――」
――ゼイラルさんが話しかけてくれて、考えていることがなくなった。勇気を、もって。勇気を出して、レイヴン。乗るために少し動かした足が震えてる。でも、震えてるだけ!歩ける!
「大丈夫です。のり……ま、す……か…………」
――バサッ。
あれ、視界が、ぐにゃぐにゃして……まっしろに……
「―――ン――。―――ンさん、―イヴンさん」
「ん……」
誰かに呼ばれている。私は重いまぶたをなんとか開けた。
……ゼイラルさんが、目の前にいた。顔が近い。
「起きましたか?レイヴンさん」
「・・・」
そう言葉をかけるゼイラルさん……の周りを見て何が起こったのかを察してしまった。
ここは馬車の中。しかも揺れていない。
開いてるドアから見えるのは石の道。私が乗ろうとしてた所は砂地だった。
それに乗ろうとした時、視界がぐにゃぐにゃして……つまりは、
「・・・ゼイラルさんも」
「はい?」
「ゼイラルさんもやったんですね、私に」
「確かに、眠っていただきました。その方がレイヴンさんにいいかと思ったので」
ゼイラルさんも私を魔法で眠らせたんだ。確かに、その方が早いけど……早いけど……
「……もうちょっとでのれたのに」
「……ふっ」
もう少しで乗れたと言っただけで笑われた。怒ってもいいよね?
「なんでわらうんですか?」
「いえ。子どもらしい一面もあるのだと思いまして。では、降りましょうか。ジャルがミシュエル君を背負って待ってます」
「わかりました」
『子どもらしい一面もあるのだと――』それはつまり私が子どもっぽく見えてなかったけど、今の一言で子どもに見えたということだ。
私にとって子どもっぽく見えるのはあまり嬉しくないけれど、周りの人々は違うのだろうか?……今度ミューカさんに、いや、ポールさんにでも聞いてみようかな?
「ゆめからさめて。エル、おきて」
「…うっ……ん……ふぁ?おなぁー…ちぇん?」
夢から覚めるイメージをもって、エルを起こした。朝に起きたときのように舌足らずだ。
「ぷっ!おなぁーちぇんって……おもれぇ!」
「ジャル!?」
――ドッ。
「いてぇ!」「いたぁ!」
エルはジャルの背中で驚いたからか、曲がった肘両方がジャルの背中へと当たった。当てたエルも痛そうだ。
ジャルは痛みに耐えながらエルを地面へと下ろす。
「エル、大丈夫?」
「うぅ~!なんで、ジャルなんかのせなかにのせたの?!」
「あ、ご、ごめんね、エル」
エルの記憶力の良さがいま出た。怒りを覚えたときも記憶力が良くなるんだ、エル。って!こんなこと、考えてる場合じゃない!エルの怒りを静めなきゃ!
「むぅー!」
「今度デザートにプリン作ってあげるから」
「えっ?プリン!?やったー!じゃあ、おねぇちゃんをゆるしてあげます!」
「うん?ありがとう」
なんか言葉が変だったけど機嫌がなおって良かった。
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――ある日の一幕
エル『プリンにパンケー(キ)カステラ~♪チョコにだいふく、クッキーに♪マドレーヌもおいしいそう~♪きょうのデザートなんだろなぁ~♪』
レイヴン『エル!ごはんできたよ!』
エル『はーい♪』
――椅子に座る。
エル『おねぇちゃん!デザートある?』
レイヴン『う~ん。あると思う?』
エル『あまいにおいしたからある!』
レイヴン『ま、そうだよね。今日のデザートは、フルーツだよ』
エル『フルーツ!』
レイヴン『おばあちゃんのレシピの中にあった『アップルパイ』を作ってみから』
エル『あっぷるぱい!』
――食後。
エル『おねぇちゃん!アップルパイ!』
レイヴン『はいはい』
――ごくり。
エル『これが……アップルパイ』
レイヴン『食べてみて』
エル『うん!いただきます!』
――サクッ!もきゅもぐもぐ。
エル『おいしい!』
レイヴン『そう!良かった』
エル『おねぇちゃんも食べて!』
レイヴン『うん♪』




