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勇気をもって


私達は急いで着替えると、ニーダン副隊長とジャルを先頭にして真ん中に私とエル、後ろにゼイラルさんの並びで森の中を歩いていく。今回ばかりはエルを走らせることはしない。

服に土がつくから。


もう少しで森を抜ける所でゼイラルさんが、私の横に来て話しかけてきた。エルに聞こえないように小声で。



「レイヴンさん」

「はい」



ゼイラルさんは私の身長に合わせながら歩いて小声で話してるから、おばあさんが腰を折って歩いてるみたいな姿になってる。



「非常に申し訳ないのですが、馬車に乗っていただけませんか?」

「……馬車に」



ゼイラルさんは本当にごめんなさいって顔をしてる。でも、私も、エルも馬車に乗るのは嫌なのに……



「どうにかなりませんか?」



馬車しかないの?本当に?



「すみません。私達にもっと魔力があれば、レイヴンさんとミシュエル君と空を飛んでいけたのですが……今は馬車以外に急げる移動手段がないんです」

「そう、なんですか……」



ゼイラルさんに謝らせてばかりだ。

勇気を、出すしかないのかな……心臓の音がうるさい……息も少し辛い……大丈夫、私は大丈夫。



「おねぇちゃん?」

「エル……」



エルが手をギュッと握ってきた。その瞳は心配と不安の瞳をしている。


エルに、弟に心配させたらダメっ!私はおねぇちゃんなんだから!その場で歩みを止めた。



「レイヴンさん?」

「嬢ちゃん?」

「?」



大人の3人が突然止まった私を不思議そうに見た。横にいるエルも。



「ジャル。ちょっとエルがつかれちゃったみたいだから、…せおって」

「は?弟君が?疲れる?」



ジャルはまるでエルが疲れる訳がないみたいな言い方をする。確かに、エルは疲れてない。



「――」



でもエルは今から倒れるし、私が背負ったら私が疲れるから。ごめんね、エル。



「おねぇちゃん、ぼく……つかれてなゃんてぇ………」

――バサッ。



エルは疲れてないと言いながら、前のめりに倒れそうになるのを私が支える。



「レイヴンさん……何を……」

「眠らせただけです。ジャル、せおって?」



そう。私は眠らせた。

馬車になんて乗るのを嫌がりそうなエルを、夢の中へと。王宮について、馬車から離れたら起こしてあげとようと思う。


これが今のおねぇちゃんに出来る精一杯。大人になるまでにはなおそうね、エル。



「あ、あぁ」



ジャルが駆けより私の腕の中からエルを受けとると、エルを抱っこした。



「……せおっていったのに」

「え、あ、わりぃ」


ジャルは抱っこから背負いなおした。


抱きつかれるのが嫌だって言ったのを忘れたの?背負うだけなら、病気の人とかもそうして運ぶことがあるからまだましと思って『背負って』と言ったのに。



「ジャルには後できつく言っておく」

「ありがとうございます、ゼイラルさん」



そうして私達は、エルを眠らせ、ジャルの信頼度が下がり、ゼイラルさんの信頼度が上がった以外は何事もなく森を抜けた。


その間のニーダン副隊長の存在は、空気みたいになかったと思う。




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