靴屋さん
※この話は元々『弟は愛らしいから』分離したものです。
靴の絵が書かれている看板のお店を見つけ、入店する。
どの店も自分が売り物にしている物をモチーフとした絵と、添えるようにして書かれている靴屋の文字が、店の看板などの定番だ。
「いらっしゃ――ちっ、貴族じゃねーのかよ」
私達を見て舌打ちするカウンターの男。
貴族じゃなくても、客になるかもしれないのに……
「おねぇちゃん……」
「気にしないで選んできな。ただし」
「うん!触らないよ!」
カウンターの男の言葉で縮こまったエルを送り出す。
注意事項を確認させて。
エルは靴が並べられている棚に向かう。
触るなというのは、汚れたから買い取れ!とか言われるのを防ぐためだ。
「すいません」
私はその間にカウンターにいる男に声をかけた。
「あ?なんだよ」
「捨てるかわはありますか?」
「ふん。あってもやらねーよ。ゴミんなか明後日探せばどっかから出てくんだろ」
笑い混じりに拒否された。というか平民をゴミ扱いって……
ここまで腐ってる人だったか。
この王都――国にもヒエラルキーがあり、頂点が王、二番目が王妃や側妃、三番目に王太子、四番目以降は生まれた子供が順に王位継承権を得る。
次に来るのは王の血縁者で構成されている王族、次は貴族という位を持つ者で、公爵、伯爵、子爵。そして、位がなにもない平民。
王都では平民より子爵の方が少し多いが、子爵は平民よりの位持ちと言われている。
私達は平民の中でも一番下のいちにいる。家はあるけどお金がないからね……
王都は広く、王様が住んでる城までは私の家から歩いても40分以上、この前行った神殿は30分もかかった程遠い。
私達の家とその回りは、おばあちゃんがおじいちゃんがいた頃に土地ごと買っていたらしいから、住む場所の心配は100年くらいないとおばあちゃんが言っていた。
土地の権利書が取られなければ。
灯りは火を起こす。もちろん近くに水を置いてるから火事の心配は多分ない。
火が消えても、夜ならば月明かりで見える。
水は家の中にある井戸から汲んでる。地下水らしい。
何故家の中にあるかは想像できる。外に置いておいて木の葉とかのゴミが入らないようにするためだ。
あとは自力で手に入らない衣服と調味料。これが主にお金を使う。
あ、包丁も買わなきゃ。
「おねぇちゃん」
エルが靴選びから戻ってきた。
「ん?どうしたの?靴はあった?」
「ううん。なかった。ここにあるのは、えっと、凄くてはきたくない」
エルよ、言葉を選んでそれか。
せめて、履けないにしてほしかったけど、まぁ、言葉が出てくるだけ上出来かな。
「そっか。私達には似合わないから履けないよね。じゃあ、他の場所に行ってみよ」
「うん!」
私も一応言葉にしておく。
そう。これは店員に向けた『私達には似合いませーん』アピールそのものだ。
案の定、カウンターの男はニヤニヤと、多分お前達に似合うわけがないだろ(笑)とでも思ってるような笑みを浮かべてる。
まぁ、ほつれた服に靴だけ綺麗だと違和感が凄そうだしね。
その後も何件か回るとようやくエルが靴を選ぶことができた。
紺色の革が使われているもので、2500デル。まぁ、長く使うなら良いよね。
エルには一回り大きい靴のサイズを選ばせた。
男の子の成長は早いからね。
ブカブカするのは靴擦れとかになりそうだけど、ちゃんと綺麗に詰めれば大丈夫。私もそうしてるし。
「ありがとうございました」
店員さんの挨拶を受け店から出ると、次は包丁・調味料を買いに様々な店が簡易的に建ち並ぶ露店商に向かおうと思う。
エルは片手に先程買ったくつが入った袋と、もう片方は私と手を繋いでいる。転ばせないように注意しながら、露店商に向けあるきだした。
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このあと18時くらいに新しい話が出ます。
文字数は同じくらいです。