大事にする
エルは家に帰ってからすぐに、作って貰った青色の靴を脱いで、草履を履く。
そして、土の付いた靴を二個あるうちの1つのたらいに入れ、水を汲み入れ、せっせとタワシとタオルを持ってきて洗い始めた。
「気に入ったの?」
「うん!すごく!ぼくだけのくつだから!だいじにするんだ!」
「そうだね」
エルは丁寧に靴から泥を落としていた。
たまに食器や洗濯物を洗うのを手伝っているから手際はいい。時々、水や洗剤で滑って物が何処かに飛んだり、力加減を間違えて服をダメにしたりするから、まだ洗い物関係のお仕事はやらせられない。
出来るようになれば、エルのやる気次第でやらせるつもりだ。
エルは最近、孤児院だけじゃなくて、他にも『お仕事』をしたいみたいで困ってる。
エルの無邪気さが可愛すぎて引き取りたいとか言われたらどーしよ!エルが!エルがぁぁぁ!と、思うからまだ他の仕事は絶対にさせないけどね。
「おねぇちゃん!きれいになった?」
「どれどれ~?」
私がエルの事を考えていると、靴を洗い終えたエルが本当に落ちているか私に確認してくる。服の前と袖がびちゃびちゃだけど、うん、完璧に落ちてる。
ただ……
――コロコロコロ~。
「エル、くつの中に小石なんこか入ってるよ。出して、出して」
「はーい!」
あくまでも洗うのはエル。
ここで私が代わりにやったら、せっかくの『自分でやりたい!』って気持ちがエルの中でモヤモヤしちゃうから。まぁ、危なかったり、やる気がなくなってたら私がやりだすけどね。
「こんどこそ、きれい?」
「うん。きれいになったよ!今少し拭いて、かわかして終わり!」
「じゃあ、よるはいっしょにねれるね!」
「くつと?」
「?うん!」
「そう……」
布団の中にまで持ってくるつもりで洗ってたのか……飾るとかかなと思ったんだけど、一緒に寝たいくらい気に入ってたんだね。
「じゃあ、お風呂に入ろっか」
「わかった!!きがえもってくる!おねぇちゃんのももってくるから、まってて!」
「わかった。よろしくね!」
「うん!」
エルは靴を縁に置いていくと、バタバタと足音を立てて服を取りに行ってくれた。その間靴に少し触らしてもらう。
うん。この革なら長く持ちそう。そういえば、ナディさんから貰った紙。何が書いてあったんだろう?
いまだに持っていた鞄から紙を探しだして、読んだ。
『レイヴンへ。ミシュエルのくつが小さくなったらまた来い。タダで作ってやる。今度はレイヴンの分も作ってやるから。
ナディ』
「・・・」
分からないけど、何故か悲しくなった。
でも、どうしよう。関わったら。貴族と。でも。ナディさん達は、いい人そうだったし。靴を。靴を作ってもらうだけなら……大丈夫だよね?おばあちゃん。
でも、そうするとゼイラルさんとジャルになんだか申し訳なくなる。……今度あえたら、少しだけ喋るならいいかな?
「おねぇちゃん!もってきた!」
「なら。行こう!お風呂へ!」
「おー!」
考えを、考えないようにして、私はエルとお風呂に向かった。
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