ナディさんの家族
靴を作って貰ってから3日後。私とエルは、孤児院の帰りに靴を取りに行くため、シャローヌへと寄ることにした。
「こんにちは」
「こんにちは~?」
「いらっしゃいませ~って子供じゃん」
「こら!お客様なんだから!」
店の中にいたのはズボンを履いた若い女の人と、同じく女性でスカートを履いている方の人は、あの人だ!前にここで雇ってくださいと言って断る時に、別の雇い先を教えてくれた。
それにしても、2人は顔立ちが似ている。姉妹かな?
「はいはい。で?女の子2人でどうしたの?お使い?」
ズボンの女の人が、『女の子2人』と言った。間違われたのはエルの性別だ。エルが可愛いからといって女の子に間違えるのは可哀想だ。
いや、実際エルが女の子に見えるのは間違ってはないけど……
「あの。こっちは男の子です」
「えっ?うそでしょ!その可愛さで?!ありえない!」
「ぼくが、かわいい?」
エルが首を傾げて、自分が可愛いと言われたのかを確認する。
「きゃー!コテッて首傾げたー!もーほんとかわいすぎるんですけど~!」
「……うれしくない」
ズボンの女の人がエルの可愛さを言葉にするが、エルはその言葉に対して不機嫌そうにした。
エルは『可愛い』と言われるのがあまり、結構好きじゃない。男の子としてのプライドだろう。
私はエルのことを可愛いと思ってはいるが、言葉にはしてない。はず。
逆に『かっこいい』とか『頼もしい』という言葉をかけると、照れる。その照れた顔も可愛いのだが。
「こら!いい加減仕事をしなさい!」
スカートの女の人が、ズボンの女の人を怒った。
「何よ!少しくらい、いーじゃない!」
「もうすぐ暗くなるのよ!この子達が暗い中、帰ることになるとは思わないの!?」
「うちの店に来るのは貴族様しかいないんだから、馬車くらい外で待ってるよ!」
「外から馬車の音なんてしなかったわ」
「じゃあ離れたところに停めてあるんだよ!」
言葉をかけるタイミングすらなく、喧嘩を始めてしまった……どうしよう。
と、その時。
「何を喧嘩してる!」
店の奥、カーテンが閉められていた場所からナディさんが現れて、2人を怒鳴った。
「父さん」「あなた…」
ズボンの女の人が『父さん』と、スカートの女の人が『あなた』と言った。えっ?夫婦と娘さん?
「お前達は何をしてるんだ!喧嘩なら家でやれ!」
「ごめんなさい……」「すみません。あなた」
2人は落ち込みながらも謝った。
「ふぅ。ん?あぁ、レイヴンか。靴を取りに来たのか?」
「はい」
「待ってろ、持ってくる」
ナディさんは私達がここにいる理由を、先日作った靴を取りに来たのだとすぐにわかってくれて、店の奥へと取りに行ったようだった。
「さっきはごめんなさいね」
「いえ」
「私は彼の妻のスンよ。こっちは娘のバンナ」
「喧嘩目の前でしちゃってごめんね!」
スカートの女の人はスンさんでナディさんの奥さん。
ズボンの女の人はバンナさんでナディさんの娘さん。ということは、バンナを産んだのはスンさん……
スンさんの見た目が若すぎて姉妹かと思ってたけど、親子だったとは。
「いえ。大丈夫です」
「そっか。父さんに靴作ってもらうなんて、貴族様なんでしょ?公爵様?それとも王族の方?」
「え?」
バンナさんは私に質問をしてきたが、内容に驚いた。ナディさんの店って相当な高級店だったの?王族の人が通う程の。だとしたら、ゼイラルさんとジャルも相当な貴族関係者……関わっちゃったよ…
「子供だけで来るなんて両親はどこかで待ってるの?」
「あの」
「あ、家名は?なんて名前?これからも贔屓にしてほしいから教えてくれない?家族全員でこの店の常連になってくれたら、嬉しいんだけど」
「バンナ!やめなさい!やっぱり貴方は接客業は向いていないようですね!」
「あっ、ちょっと待ってよ母さん!」
バンナさんの、返事をする暇もないほどの質問が続くかと思ったけど、スンさんに止められた。
「言い訳はこれまでもさんざん聞いてきました!しばらくは接客業に関わらせません!奥に行きなさい!あとでお父さんにもしっかりとお説教をしてもらいますからね!」
「いや、話を聞いてよ!」
「一人でいけないのなら連れていくまでです!」
バンナさんは、スンさんに腕を捕まれて店の奥に消えていった。2人は似た者同士なんだなと思う会話だった……
その場から誰もいなくなった私とエルは、2人でおんなじことを呟いた。
「「すごかった……」」
多分、スンさんとバンナさんの会話してるようすを見た感想だろうと思う。
店の奥からは小さくだが、2人が言い争う声が聞こえた。
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