肉体能力強化
シャローヌから外に出たジャルが、一番最初に言葉を発した。
「じゃあ、俺らはここで――」
「家までお送りしますね」
ジャルの『俺らはここで――帰るな』と続くはずだった言葉は、ゼイラルさんがかぶるようにした言葉で消された。
消されただけだから、聞こえはしたけど、ゼイラルさんの言葉の方が、より大きく聞こえた。
「マジか」
「では、今度は歩いていきましょうか」
「歩いて……」
私はポケットの中の懐中時計を見る。ここから歩くとさっきの倍の時間がかかって、お昼ご飯を作って、食べて……ギリギリ仕事に間に合うかなって感じだ……。でも、よゆうをもって仕事場にいきたい。
「レイヴンさん?」
「嬢ちゃん?」
下を向いて考えていた私に、ゼイラルさんは心配して声をかけてくれた。ジャルも。
でも2人には悪いけど……本当に悪いと思うけど!ごめんなさい。私は――
「・・・ごめんなさい。走ります!――エル!走るよ!」
――私は、エルとお金と仕事の信頼の方が大事なんです!
「おー!」
私はエルの手を掴んで走り出す。疲れるけどすぐ治るし大丈夫!
「ちょ――」「レイヴ――」
2人の声が一瞬耳に入ったが、それを上回る早さで走り出していたから、全部は聞き取れなかった。
私達は、街の小道をすいすいと走っていく。
「おねぇーちゃん!たのしぃ!」
「そう!」
後ろを振り返ることはなかったけど、ついてきてる感じはする。どんどん離れていってるけど。でも、しょうがない。魔法の力を借りているから。
魔法使用の規則は、家事などの日常生活環境に必要なもの。自分に対して、もしくは自身に魔法を使用していいと言っている人にはかけても良い。なおす魔法に関してはそれを問わない。のが魔法使用の規則。
だから、私は、私とエルに『体を強化して』といって、あしりょく……じゃなくて……う…おかな…しき…きゃ…きゃく、りょく!が一番強くつくイメージをしたから、今なら大人くらいの足の早さがある!
「おねぇちゃん!あっち!」
「わかった!」
エルはほとんど私に引かれているように見えるが、回りを見て出来るだけ人のいない方へ避けている。
動くものを見る力が上がってるのだ。もちろん、ちゃんと前に進んでる。
「――嬢ちゃん!!!」
「!?」
聞いたことのある声がした。この声はジャルだ。でも、足を止めるわけには……いかない!
「おい!止まれ!話をっ!」
「ついてこられたら!する!」
「んだと!?」
それならゼイラルさんの送るっていうことにもなるし。
「ジャルおそーい!」
「ちょーしのりやがってっ!脚力強化!」
エルの挑発にジャルが乗った。行きとは逆だ。しかも、魔法使えたんだ。きゃくりょくきょうかって聞こえたから、ジャルも足が早くなってる。
でも、そっか。『体を』じゃなくて、『きゃくりょくを』って言えば足だけを強化するイメージが早く出来るようになるってことだよね。うん。学んだ。
「きゃくりょくきょうか!」
「なっ!」
やってみたけど、『体を』っていうより『脚力を』って言った方が、すぐにイメージ出来た!でも、なんでだろう?今度図書館で調べてみよ。
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マジック、イメージ、イマジネーション♪




