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弟は愛らしい


キーワードに弟を追加しました。



神殿から結構歩くと、森の中にある木々の間に道が現れる。

我が家へと続く道だ。なんで途中からしか道がないのかは知らないけど、中心街に行き来するとこの森を通らないといけないから面倒ではある。

少し坂になってる道を抜けると、家が見えてくる。


家の作りは1階建てで中はキッチンと井戸、3つにお風呂とトイレ。鍵も付いてる。結構良い家で、私と弟の二人暮らしだ。

元々はおじいちゃんとおばあちゃんが2人で住んでいた家だったんだけど、2人とももういなくなって……


でも、2人で住むにしてもここはない。どれだけ隠れたいんだってくらい中心街から遠い。ご近所さんまで20分かかるし。



「ただいま~」



玄関の扉を開け中に声をかけると、ドタバタと弟が駆けてくる音がする。

玄関の目の前にある扉が開く。


よしっ。と、私は腹筋と脚に力を込めて構えた。



「おねぇーちゃーん!!おかえりー!」

「エルー!!」



――ガシッ。



私と同じ髪色と瞳をしているショートヘアでふわっとしている髪の弟、ミシュエル――愛称のエルと呼んでいる――が、廊下の縁からジャンプして私に飛び付いたのである。


ちなみに。私の髪型はゆるーいウェーブのかかった髪を今は後ろ手に一纏めにしている。


毎回私が帰ってくる度にやって来るが、日に日に受け止めるのが辛くなってきている。成長か。

力を抜くと受け止めないくて共倒れするし、腹筋に力込めないと時々鳩尾に入ってくる打撃が痛くなってきた今日この頃。



「おねぇちゃん!せいじょになれた?」

「ううん。なってないよ」

「ほんと!」

「ほんと、ほんと」

「よかった!」



私に抱きつきながら見上げるようにして、凄く嬉しそうな顔をしているエルを見て、私も笑みがこぼれる。

ほんと、エルは可愛い。



「離ればなれになっちゃうもんね」

「うん!あ。あのねあのね。さっき、ひとりでたべるはっぱとってきたよ!」

「おー!」



エルは私から離れて言い方を間違えてはいたが、食べれる野草を取って来たと誇らしげに言った。

……1人で?



「って、1人で出歩かないでと言ってるでしょっ!」



いくら家の近くに野草が生えてる森があるからって、一応は森の中なんだから。可愛いエルが誘拐とかされたらいけないんだから。

まぁ、こんなとこまで来る人はあんまりいないけど。

私はエルの頭に手刀を食らわせた。もちろん威力はそこまでない。



「いっ!うぅ~」



あぁ。しゃがんで痛がるエルが潤みそうな瞳でこちらを見てくる。愛くるしい。

じゃないじゃない。気持ちを切り替えなければ。日が暮れちゃう。



「さて。これからのくつを買いに行こうと思う」

「くつ?そんなのわらであめばいいよ!」



いや、確かに編めなくはないけど……



「でも、さすがに二足は欲しいから」

「でもっ!」

「お金のことなら大丈夫!くつ1つでどうにかなる訳じゃないし」



エルには靴が一足あるのだが、もう小さくなりかけている。

踵を潰してスリッパのような靴になっていて、靴とは呼べない。

それにエルの爪先が変な形になってもいやだし。



「・・・ほんとにいいの?」

「もちろん!あ、でも高すぎるのはダメだよ?」

「うん!安くてがんじょーなやつえらぶ!」



エルは出かけるために、奥から唯一持っている靴?を持ってくる。

街に繰り出すとき以外は、藁の靴を履いている。


この藁の靴は去年死んでしまったおばあちゃんが、教えてくれたものだ。

乾燥して水分が無くなっている茎を器用に編んで履けるまでの形にする。覚えるのが大変だった。

たまに藁の靴を安く売ったりしている。

足に砂利が刺さるのは痛いしね。



「おねぇちゃん!はいた!」

「じゃ、行こっか」

「うん!」



私は家の鍵を閉めて、靴を売っているお店までエルと手を繋いで向かった。



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