表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/267

馬車


私達はエルを先頭にして、何事もなく森を抜けた。



「エル隊長、ごくろうさまでした」

「うん!」



お疲れ様というとやりきったという表情で、エルは笑顔で答えた。



「では、ここからは私達が。あちらに馬車がありますので、どうぞ」



ゼイラルさんが言った『あちら』の方には、白と青で作られた高級馬車が止まっていた。

高級な馬車じゃないものは、塗装されていないただの荷車。雨も防げないただ乗って移動するもの。

でも、高級馬車は天井もあって、イスにはクッションもあってと凄い豪華なもの。



「おねぇちゃん。あれに乗るの?」

「そうだね……」



高級馬車を、正確には馬車を見つけて、明らかにテンションの下がる私とエル。

それに気づいたジャルとゼイラルさんが話しかけてくる。



「どうした?」

「気分でも?」



理由を話す前に、ひとつだけ私も聞きたいことがあった。



「あの。2人はどうやって私達の事を知ったんですか?」

「どうって……聞き込み?」

「レイヴンさんがあの辺りで有名でしたので。とあることがあって償いたいと言ったら教えていただきました。ミサキ・バルオンさんの家にいるというのも聞きましたし、お孫さんだというのも」

「あ……そうですか」



私は有名だったのか。まぁ、確かにお金を稼ぐために色んな所(何かの売店なら手当たり次第に)『雇ってください!』とは言ったけど……



「嬢ちゃん、口達者な妖精って呼ばれてたぜ」

「くちたっしゃ?」

「喋ることが得意な人のことです。レイヴンさんは幼いながらに頭がよく、喋るのがうまいですし」

「ありがとうございます、ゼイラルさん。分かりやすかったです」



ジャルの言葉はともかく、ゼイラルの言葉は嬉しかったし、知識になることだったから、お礼を言っておく。



「俺は?」

「・・・ようせいって言われてうれしかった。」



嬉しくはなかった。



「そうか」



ジャルも私が嬉しくはなかったのを分かってくれたようだった。



「で?それがどうかしたのか」



ジャルにそう聞かれ、短く、分かりやすく、話す。長く話していると思い出して悲しくなっちゃうから。涙は出ないけど。



「・・・。みじかくいいます。お父さんとお母さん、おじいちゃんがなくなったとき、馬車に乗ってたんです。さっしてください」

「「・・・」」



両親とおじいちゃんはお仕事の帰り、土が崩れて馬車ごと崖下に落ちた。

色んな場所を私達に見せたいという観光目的でもあったため、その馬車には私とエルも乗っていた。両親とおじいちゃんが守ってくれて、私とエルはほぼ無傷で奇跡に近い生還をした。

エルは覚えてるはずがないが、狭く暗い場所が苦手だ。トイレなどは扉を閉めずにいる。

だから、狭く暗そうな高級馬車には『乗りたくない』という気持ちがある。


おばあちゃんは病気で家に残っていた。



「なら、歩いてくか」

「少し距離がありますが大丈夫ですか?」



察してくれた2人が、歩いていこうと言ってくれた。



「大丈夫です。エル、馬車乗らないで行くって」

「ほんと?」



エルは不安そうに聞いてくる。



「ほんとう、ほんとう」

「じゃあ、行こ!」

「ちょっと待って!」

「ぎゃ!」



エルが手を引っ張っていこうとするので、踏ん張って移動させることをやめさせた。



「ゼイラルさん、どこのくつ屋さんに行くんですか?」

「我々がよく行く、靴屋です。……ジャル。――――」



私の質問に答えてくれたゼイラルさんは、小声で『ジャル。ミシュエル君の気を晴らしてあげなさい』って言ってた。

ありがとうございます、ゼイラルさん……ジャルも。



「へいへい、りょーかい。弟君、俺の早さに付いてこれるか?」

「はやさ?かけっこならまけないよ!」

「へぇ~?なら行くぜ!」

「あー!ずるい!」



エルが挑発にのって、走っていく2人を見送る。



「私達後から追いましょう」

「はい」



ゼイラルさんは馬車を引く人に乗らないという事を伝えると、目的の靴屋へとも少しだけ早く走る。


私はちらりと高級馬車を見た。

私も……私もあれには乗りたくない。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ