ミシュエル騎士隊長
30000万文字達成
エルのトイレが終わり、私達は2人で家の外で待つジャルとゼイラルさんの前に向かった。
外に出る前に2人の名前はエルに伝えておいた。
「お待たせしました!」
「した!」
「いえ。このくらいは待つ時間には入りません」
「だな」
2人の服を見て地面に座った後もないし、木も近くにないから背中を預けて立つこともできない。
つまりは、約15分くらい立ち続けるのが辛くなかったと。エルだったら、絶対に5分も立たずに飽きてるなぁ。
「あと、エルにお名前をつたえておきましたけど、どう呼ぶかはエルしだいなので。すみません」
一応、勝手に名前を教えておいたことを言ったが、2人が気にする様子はなかった。
「じゃ、行くか」
「ダメ!」
「はぁ?」
行こうと言ったジャルを遮るようにしてエルがダメだと叫ぶ。
「ぼくがせんとうなの!」
「いや、危ないだろ?」
「ダメ!ごぜんだから、たいちょうはぼく!」
隊長ごっこは外でも使われている。
「『ごぜんだから』?」
「エルは午前中だけこの森を通るための、きし隊長なんです」
エルはいつも森を遊び場のように駆け回ることがあり、それを直させようと言った『明るいうちだけ森から守ってくれますか?きし様?』という言葉を気に入ったようで、いつもは考えるのをすぐやめるエルが、それを自分なりに考えて『『ごぜんちゅうだけ』おねぇちゃんを守る、きしのたいちょうになる!』と張り切ってしまった。
「ごごはおねぇちゃんが、たいちょうだよ!」
暗くなっていく森の中を先頭で歩く勇気はまだないみたいだけど。
「ジャル。隊長の言うことは聞くのが利口ですよ」
「・・・利口ね」
ゼイラルさんはエルに合わせてくれるらしく、ジャルを説得したみたい。言葉は短かったけど伝わってるみたいだから、すごい。
「みなのもの!ぼくにつづけー!」
はりきるエルは私達に向かってそういうと、森に向かって駆けていく。私のその後ろをついて走る。
「って!走んのかよ!」
「さすがに驚きました!」
私の後ろにいるジャルとゼイラルさんは驚いてはいるがちゃんとついてきている。まぁ、子供の全力で走る早さなんて、大人に比べたら遅いからね。
ただ、今エルが走っているのは、遊ぶためなんだけどね。
「って、あいつ前見てねぇーのかよ!」
「ぶつかります!」
エルは楽しそうに走っていて、倒れている木が目の前に迫っていも走る事をやめなかった。むしろ、止まる気がない。
が、それはそうだ。
「風よ!」
私はエルに向かって、手を向けると風がエルをふんわりととばすようにイメージする。
「キャーー☆」
「マジか……」
「魔法ですか……」
私達は走るのを止めて空に浮かんでいるエルを見上げる。
私はエルに手を向けたまま、私はどうしてこうなったのかをジャルとゼイラルさんに話すことにした。だって、驚いただろうし。
「前にエルが、森を走っているさいちゅうに、転んでケガをしそうになったときがあったんです。危ないと思って、私がまほうで浮かせたら、危ない目にあうところだったのに、よろこんじゃって。それからは森を走れば浮かせてくれるとおもいこんじゃって……」
エルはいまだに浮いていることを喜んでいた。鳥や蝶の気分になれて嬉しいらしい。そう。エルが喜んでいる。
「危ないのでやめてといいたいんだけど、弟がよろこんでるのがうれしくて、私も止められなくて……」
「弟にあめーな」
「お好きなんですね。弟さんが」
「姉弟愛ですので」
ブラコン。
兄や弟を好きすぎる人のとこをいう単語。
姉とか妹だったらシスコンらしい。前に弟が好きすぎるなと悩んで、病気なのかと思って図書館で調べた。
『異常きょうだい愛者ではあるが、病気ではない』って書かれていた。自分もそうなのかと思うと『異常』の部分に違和感を覚えるが、病気じゃないからよかったとおもう。
人に言われてもはっきりと『そうだよ』と答えられる。
「おねぇちゃーん!おろしてー!」
「風よ」
浮かぶのを楽しんだエルを、風を使ってゆっくりとおろした。
「たのしかった!ありがと!おねぇちゃん!」
「どういたしまして」
エルは地面に降り立つと私にお礼を言ってきた。
「じゃ、行こっか!」
エルの言葉にジャルから『また走んのか』という言葉が聞こえた。
「しゅっぱーつ!」
が、エルは歩いて森を進んでいく。私も後ろからついていくとジャルとゼイラルさんも続く。
「歩くんだな」
「遊び終わりましたから」
こうして私達は歩いて森を進んでいった。
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