あの時の。
あれから数日が過ぎたある日の夕方。
珍しく仕事が一切入っていない貴重な日。私とエルはお勉強をしたり、家の裏手にある畑に野菜を収穫にしいったりしていた。
――コンコン。
「ごめんくださーい」
玄関の扉を叩く音がすると、男の人の声がする。私達は動く事をやめて、ひっそりとする。
「エル!」
「っおねぇちゃん!」
私はエルに小声で呼びかけ、エルも私に小声で話しかけよってくる。
今私達はちょうどお風呂に向かう途中だった。焦ったからか2人とも着替えの服を地面に落としてしまったが、今はそれどころじゃない。
「エル。おばあちゃんの部屋にいて」
「ぼくもここにいる」
私の腕をぎゅっと掴んでくるエル。その力は強引に振りほどけるけど、でも、エルの意思は今は大事にしたい。
「……離れないでね」
「うん」
私達は外にいる男を警戒していた。
昼間ならここに来る人も時々いたりするが、今は陽が呉れたばかりの夜だ。そんな時間に来るものは、私達にとって不審者でしかない。
なぜなら、ここは森を通って来る場所にある家だから。ここにいまたどり着いてるということは、夕方に森にはいって私達の家に来たことになる。
私はエルを背に隠し、扉を挟んで出来るだけ発音よく声をかけた。子供っぽさを消すために。これで前に来た人はお母さんかとおもったっていってたし。
扉を開けるなんてことはしない。上の方に行けば扉の真ん中辺りに開け閉め出来る除き穴があるけど、台がないと届かない。
「どちら様ですか?」
「お?いた。おーい!ゼイラル。いるみたいだぜ!」
男が名前らしきものを呼んでいる。1人じゃなかったのっ!
「こんなかだ」
「それはそうだろう。ここは家なんだから」
扉の向こうから会話が聞こえる。1人が2人になったのか。
「夜分にすみません。こちらミサキ・バルオンさん所有のお宅でよろしいですか?」
後から来た男の方に変わったようだが……
『所有』。って、どういう意味?しょゆう、しょゆう、しよゆう、しょーゆ?醤油?うん。絶対違う。
確かミサキ・バルオンしよゆうのお宅でっていってたから、おばあちゃんの家でいいか?ってことを聞いてるんだよね。しよゆうが分かんなくても話出来るよね?
「あの……」
「そうですけど。なにかごようですか?」
「では、ミシュエル・バルオンくんはいらっしゃいますか?」
「え?」
後ろにいたエルの体が恐怖でビクッとなる。声を出さなかったのはいや、出なかったんだね。私は心構えてから問いかけた。
「ミシュエルになにかごようですか?」
「いるんですね。ジャル。お前から話せ」
「だな。実は先日、ミシュエル君と――」
「不快です」
「「え?」」
何故だか分からないが、先程までの男がエルの名前を呼ぶのは全然大丈夫だったのに、最初の男がエルの名前を呼ぶと、こう、心の奥底から怒りみたいなのが来る。
「すみません。続けてください」
「あー。分かった。先日、彼とぶつかった際に買ったばかりの靴を俺のせいで無くしてしまいまして……その、償いに来たしだいで」
・・・もしかしなくても、あの青男と赤男?
「それと、彼の姉であるレイヴンちゃんにも少し、話がありまして……」
・・・。素直に弁償してもらえばよかった。外にいる人物が分かれば声を帰る必要はない。青男に私だと分かりやすい話は……
「へいしさんに、解放してもらえたんですね。でも、あなたが後ろからコソコソ着けるから、誘拐でもするんじゃとおもってこわかったからしかたないですよね」
「は?」
青男の声と思われる1音が聞こえた。
「まさかっ?!今まで話してたのは嬢ちゃんの方か!?」
「はい」
――ドンッ!
「あんときはよくもやってくれたなぁ?!嬢ちゃんよ!」
青男だと思うけど、扉を蹴って怒りをぶつけてる。いや、コソコソつけた方が悪いとおもう。それに私はちゃんと断ったし。
――ドンッ!
「おねぇちゃんをわるくいうな!」
「エル?!」
今まで私の後ろにいたエルが、両手で扉を思いっきり叩き、私を悪くいったことを怒ってる。
「ふしんしゃのくせに!!」
「あ?不審者だと!?」
エルの言葉でさらに怒りを増したように聞こえる青男の声。でも、長くは続かなかった。
「ジャル、止めなさい。止めないと――に言って休暇を取り下げてもらいます」
「けどよ!」
「私達が不審者なのは確かです。こんな陽も呉れた時間に、中心部から離れたこの家に来る人は、不審者でしかないですよ」
もう1人の男は理解ある人のようで良かった。
「連れがすみません。今日はもう暗いですし、用件だけ伝えても?」
「はい」
「ありがとうございます。では。私達は先日のミシュエル君の件を主に知られてしまいまして。償ってこいと言われています。ですので、取られた靴の代わりを渡したいのですが……」
償ってこいってことは、償うまでまとわり付かれるってこと?この人達と関わらないようにしたとこが、こんなに長引くなんて……この人達の主とやらは、なかなかに面倒な性格をしているようで困るんですけど。
うーん。どーしよう。あ。私はエルに目がいった。
「エル。新しいくつがタダで貰えるならほしい?」
「ほしい!!」
言い方がちょっと誘導してたけど、これでエルがいるから貰いますって言いやすくなった。本人の気持ちも大事だからね。
「聞こえてしまったのですが、受け取ってもらえるということで、よろしいですか?」
「はい。代金を言えば今、もらえるんですか?」
「いえ。では、明日の朝。また来ます。行くぞ、ジャル」
「へーい」
私の問いかけにいいえと答えた人は、また明日来ると言って去っていく足音が聞こえた。
「えっ?待って……」
今、扉を開けて帰った振りをされていたら怖かったので、追ってどういうことかを聞くことは出来なかった。
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――ある日の一幕。
エル『えい!♪』
――レイヴンの顔面にお湯がヒット!!
レイヴン『ぶっ!』
――エルのお湯かけに驚いた!!
エル『あはははっ!』
――レイヴンの反応に笑う弟
レイヴン『エェーールゥゥ?』
――エルの行動に怒れる姉
【今ここに仁義なきお風呂場・お湯かけVS水かけ合戦が繰り広げられる】
レイヴン『えい!』
エル『りゃー!』




