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震える


「うっ……」



地面に叩きつれられたと思った。


でもこの感触は地面じゃない……布だ。



「・・・」

「ロット?」



身体を少しおこすとすぐ側のロットの顔が見える。私が落ちたのはロットの上だったのだと気づく。

しかしロットは意識がないようだ。


……ロットが私を助けてくれた。


でも落下してきたのをなんの準備もなく受け止めていたらどこしらをケガしているかもしれない。ロットが気を失っているのもその影響……


私はロットからずれるように降りると震える手でなおす魔法をかけた。まだ落下した時に味わった感覚が取れないけど、なおすことが先だ。



「ロット?」



なおす魔法はいつもより眩い光を放っていた。黄色い光の中に青色の光が混じったことでロットは本当にケガをしていたと理解する。

無事になおせたようなのでロットの意識が戻るように、名前を呼び続けた。



しばらくして、



「…ん……。っレイヴン!無事っ!」



ロットは寝起きのように目を覚ましたが、私を見ると両肩を強く掴んできて、無事かと心配してくれた。

いきなり掴まれたけど、心配でというのが分かったから振りほどかなかった。



「うん。ロットのお陰で」

「…良かった」

「良くないよ。どうして無茶したの?ロットは王太子なんだから、自分のこと大事にしないと」

「目の前で落ちていく、お、お友達がいたら助けたいと思うのは当然だよ」



確かに目の前で誰かが困っていたら助けられるのなら助けたいと思うのは仕方がないかもしれない。



「だとしてもダメだよ」



それでもだ。ロットは国の次の王様。こうして会っている事ですらありえないのに、ケガをさせたと誰かに知られれば何が起こるかわからない。



「すまない……レイヴン?どこか痛いの?」

「えっ?どうして?」



ロットは急に私がどこかに痛みを感じているかを聞いてきた。

どこか痛いだなんて……そんなことは、ないけど。



「手が……震えている」



私は自分の手を見た。


震えている……



「っう……」

「レイヴン?」



私は自分の身体を抱きしめた。大丈夫。大丈夫だと。でも、自覚してしまった震えは止まらない。むしろ思い出してしまって手の震えだけじゃなくなってくる。



――トン、トン……



ロットが私の背中を優しく、寝付けない赤ちゃんを寝かすようにトン、トン、とたたくいてくる。



「ロット……?」

「大丈夫。僕もレイヴンも無事だよ。何も恐れることはないよ」

「……わかってる」



分かっていても、なかなか震えは止まらない。頭では分かっていても、体感したことは忘れることができない。



「……ミシュエル君の迎えは行けそう?」

「ぇ……」



何で今、エルのことを?あぁ、でもそうだ。エルを迎えに行かないと……

私はエルのためだと思うと少し気がはれる……でも、こんな状態でエルと会ったら心配をかけるかもしれない。



「もしよかったら僕が行ってくるよ?」

「……なんで?」

「今のレイヴンを見たらミシュエル君なら、何かあったと心配するだろうし、少しでも落ち着く時間を稼げるはずだから」

「・・・」



確かに。ロットと話している間にもほんの少しだけど、震えは小さくなってきてる……体感したことを一時でも忘れれば、しまい込める。


ロットが私の気持ちを分かってくれたことは、凄く今はありがたかった。



「ロットに。エルのこと頼むのは、本当に嫌だけど……」

「嫌とは…本当にレイヴンは弟好きだね」

「悪い?」

「いや。悪くない」

「・・・頼める?」

「任せてくれ」



ロットは私の背中から手を放すと、転移の魔法で飛んでいった。



その時。私の影が揺らめいた。



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