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1 明と重蔵と異世界と

注意事項


・軽いですが奴隷調教などの表現があります






 ご主人様なんて嫌いです!


 元の世界からこの異世界に落ちて来たのは同じなのに!


 私みたいな酷い目に会わないノーマルモードだったのが許せないです!


 なんで私の方だけハードモードだったんですか!


 なんで私と違って、普通に冒険者として活躍とかしてるんですか!


 なんで私、奴隷になってんですか!





 ご主人様の本名は黒木くろき重蔵じゅうぞうだそうです。



 おっさんくさい名前だと思います。


 見た目も良く言えば渋い、はっきりいえばなんか老けてます。


 そのくせ私より実年齢は下だそうです。


 下手したら二十歳になってないかもしれません。


 正確に教えてくれないんですが……


 レスラーみたいなガタイに、三十過ぎみたいな老け顔してます。


 日本人だから異世界補正で童顔に見られる……みたいなことはまったく無し。


 体格の良い、迫力のある、成人男性。


 これだけで私に比べたら超イージーモードだったと言えるでしょう!





 ていうか私は元々、二十代も半ばの社会人の成人女性……だったはず……なのですが


 どうもよく思い出せませんね、なぜでしょう……


 名前は藍田明、これで間違いないとは思うのですが


 とにかく、今のこの十代半ばっぽい体はおかしいと感じる!


 赤みがかった背中まで伸びるキューティクルな長髪!


 まだちょっと未熟だけど将来性を感じさせる柔らかなプロポーション!


 ちょっと気の強そうな釣り目がちな目鼻立ちだけど文句なしの美少女!


 鈴の音を転がすような可愛く澄んだ声!




 大混乱でしたよ、ええ、大混乱でした。



 服装まで変わっていました


 女物の動きやすそうな恰好。


 ハイキングとかで着るような? いやそれにしては装飾が多くて


 微妙に実用性が低いような……



 残業終わって帰宅途中に一体、なにがあったのか。


 今でもわかりません。



 ただ気付いたら異世界の森の中で。


 しかも赤毛の美少女になっていたわけです。


 わけわかりません。



 この点についてもご主人様はずるいのです!




 つまり私は、異世界にいつの間にか来てたってだけでなく


 外見も服装も体格も変化していて混乱の二乗!


 それに対してご主人様は、ただ気付いたら異世界にいた、だけです!



 ずるいです、ずるいです!



 だから私がヘマしてしまったのは私、悪くないんです!




 ご主人はかなり前に、私とは全然別の場所に、いきなり気付いたらいたそうです


 それはもう最初は混乱していたものの。


 その後、まずゴブリンに遭遇。


 必死になって殴ったらゴブリン、死ぬ。



 ご主人様の異世界特典は……


 分かりやすい、近接戦闘能力でした。


 ゴブリンを撲殺できるほどの腕力でした。



 ああ、私が見てたわけじゃないですよ。


 あとから聞いた話です。


 でもずるいです。



 何がずるいって腕力って分かりやすいものだったのがずるい。



 さて私の方は。


 肉体的な強化ってものが無かったのです。


 むしろ唐突に少女になってたことにより弱体化してました。



 それだけでなく、後から検証して、やっと分かったこととして。


 私の異世界特典は、魔力だったのです。


 赤くなった髪の毛に合わせてなのか知りませんが。


 分かりやすく、火系の魔法が強かったのです。




 でもね、いきなり魔法使おうとか、思わないって!


 自分に豊富な魔力があるとか分かるわけないって!


 だから、私は、ご主人様のようにいかなかったのです。



 しかも最初に出会ったのが、奴隷商人でした……最悪です……



 いや、森の中から、命からがら、ふらふらになって街道沿いまで出て来て


 それで最初に出会った商人さん


 とても親切な人で食事や水をタダで提供してくれて……



 気付いたら首輪を嵌められて奴隷ですよ


 いい商品が手に入った、拾い物だと


 商人さんは全開の笑顔でニコニコしてました……


 全く罪悪感とか感じさせない、実に良い笑顔でした……


 未だにトラウマです……



 そのまま私は大きな町まで連れてこられて卸売の人に売られて。


 染み一つない輝くような白い肌!


 滑らかで艶やかな輝くような赤い髪!


 ちょっと釣り目がちな以外、非の打ち所のない容貌!


 これは娼婦になれば間違いなく最高級の「姫」になる!


 もしかしたら貴族様の妾にすらなれる器かもしれん!



 ということで。



 徹底的に教育され、調教されました。


 いや、性的な意味でやられるってことはなかったですよ。


 間違いなく初物ってことでも大きな付加価値がありましたから。


 しっかり確認されてしまったのもトラウマの一つですが……



 鞭うたれるとか、殴られるとかは、なかったです。


 商品に傷つけるわけにいかないので。



 でもねー



 反抗的だと、まずメシを抜かれる、水も飲ませてもらえない。


 本気で、死にそうになるレベルで、飢え、渇くってのは……


 ハイ、無理でした、耐えられませんでした。


 平和に暮らして来た平均的日本人にそんなに期待されても困る!



 大体、これも異世界補正か、なぜか読み書きは出来るとは言え。


 右も左も分からない異世界で。


 おまけに原因不明の少女化で。


 まともな思考能力は、無かったですね、私、あのころ。



 それに目の前で、奴隷たちを脅すための


 「壊して良い」「安物」の奴隷をですね……


 死ぬまで鞭打つとか、死ぬまで殴るとか、死ぬまで犯すとか。


 ショーみたいに見せつけてくれるんですよ。



 直接的な暴力を、至近距離で、見せつけられる。


 強烈でした、あれも超トラウマです。




 そういうわけで一年もしたら、私はすっかり従順な女奴隷になっていました。


 この世界の教養とか礼儀とか。


 あと閨の作法とかテクニックとかも知識だけだけど。



 言葉遣いも丁寧語しか喋れなくなりました。


 今でも崩すの無理です、これもトラウマです。




 外見からして14歳くらいだと判断された私は一年の調教期間を経て。


 満を持して、オークションに出されることになりました。



 労働などしたことなさそうな、白魚のような繊細な手をしていたので。


 まず間違いなく貴族の娘だろうってことで。



 没落貴族の娘、男性経験なし、上流階級向けの教養、礼儀作法あり、十五歳



 今回のオークションの目玉の一つとなりました。




 街の高級娼館二つが競り合って値段はつり上がり……



 そろそろ落札かってところで!


 なんとそれまでの値段の倍額の提示が!



 私を落札したのが……




 ご主人様だったわけです。




 私は、日本にいた頃は、身長は160センチ超えてたと思うのですが


 こっちにきて少女化して、150センチもあるかどうかになってました。



 対して、ご主人様は、二メートル級の大男です。


 これ、元からそうだったとか。


 日本では柔道やってて結構いいところまで行ったって。


 昔、言ってました。



 さらにご主人様はこの異世界に落ちて来て数年。


 冒険者として豊富な実戦経験を積み。


 額に向こう傷とか、うっすらとあって。


 本当はまだ二十歳前のくせに、既に三十過ぎの歴戦の冒険者!


 みたいな風格を備えていました。




 初対面で私がどう思ったかって


 そりゃ、怖い


 ええ、怖いとしか思いませんでした。


 まだ高級娼館に買われた方がマシだったと思いました。



 こんな恐ろしい乱暴そうな男に個人的な性奴隷として買われるとか。


 多分、最悪に近いケース。


 どんな目に会わされるか分からない……



 正直絶望しましたね。




 もちろんご主人様は私を、そういう目的で買ったのです。


 この点については疑う余地はありません!



 しかし、中学時代にこの世界に落ちて来て以来!


 最初は生き延びるだけに必死!


 なんとか慣れて来てBクラス冒険者に!


 そしてこの前の冒険で偶然、大儲け!


 この金をどうしようかと考えたご主人様は



 これは可愛い女奴隷を買うしかないでしょ! と



 ええ、分かりますよ、別に責めません。男なら当然です。


 私に関係ない話なら好きにしたらってなもんです。


 ご主人様は冒険者仲間の付き合いで、そういうお店には行ったことあるそうです。


 でも素人童貞でした。


 だから十五歳の没落貴族の処女の女の子、とか



 どういうふうに話したら良いかも本当は全く分からない。



 そういうわけで私を宿に連れて来たご主人様は……



 まず私を、普通に椅子に座らせて、お茶とか出して。


 不器用に、話しかけて来たわけです。


 いきなりベッドに押し倒すとかそういう度胸は無かったわけですね。



 今でも、ご主人様の第一声は覚えてます。



「ロックって名前で通ってる。冒険者だ。本名は黒木重蔵って言うんだが……


 こっちの世界の人間はうまく発音できないみたいなんでな。


 クロキって呼んでくれって言っても認識できないみたいなんで


 結局、いつの間にかロックって呼ばれるように……」




 衝撃でした。


 言葉も出ないほど驚愕しました。



「に……日本人!?」


 私は自分でそう言ったことも気付きませんでした。



 驚いたのはご主人様も同じことで。



「え! ちょっと待て! いや髪の色とか!」


 確かにこんな輝くようなナチュラルな赤毛とか日本人では無いでしょう。



「わ、私、藍田明! アイダ、アキラ! 気付いたら、こんな世界で!


 見た目も変わってて! わけわからなくて!


 騙されて、捕まって! それで、調教されて!」



「うっわー……マジかよ……そんな場合もあるのか……」



 その後のことは良く覚えてないのですが。



 絶望して、諦めきっていたところで同郷の人間に会えた私は。


 ご主人様に抱き着いて、泣いて泣いて大泣きして。


 そのまま寝てしまったそうです。





宜しくお願い致します。

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