3本目 『ドラゴンクエスト』、どうやって遊ぶ?(1)
今回の題材はファミコン版『ドラゴンクエストⅠ』です。
当時、エニックスが放った国民的RPGであり、今や知らない人は居ないかと思います。
そんなドラゴンクエストと勇者になりたかった就職活動中の女性の物語です。
将来の夢はお姫様―――。
そう思っていた時期が自分にもありました。
あれは幼稚園に通っていたぐらいだろうか?
スーパーファミコンと呼ばれるゲーム機を親が持っていて私はたまにそれで遊んでいた。
あまり記憶には無いけれど唯一覚えているソフトがある。
『ドラゴンクエストⅠ・Ⅱ』と書かれたパッケージ。
紺色の外観に勇者の子孫と呼ばれる3人の勇者が映っていた。
その3人はドラゴンクエスト2のキャラクター達。
パッケージの裏面を見ると勇者と思われる者とお姫様がツーショットで描かれていた。
その2人はドラゴンクエスト1のキャラクターで勇者ロトの子孫とヒロインであるローラ姫。
パッケージに描かれていたローラ姫はとても可愛くて、幼心に私は将来、こんな可愛いお姫様になりたいと思っていたものだ。
だからなのか、当時の私はドラゴンクエスト2には目もくれず、スーファミのスイッチを入れるなりドラゴンクエスト―――通称、『ドラクエ1』ばかりやっていた。
もっとも、最初はこのお姫様にあこがれたゆえに、自分でこのローラ姫を操作できるものだと思い込んでいたのである。
ドラゴンクエストは略して"ドラクエ"と呼ばれ、今や日本人であれば知らない人は居ないと言われるほどの1986年にエニックス(現:スクウェア・エニックス)から発売された国民的人気のRPG。
ゲーム内では勇者になり、アレフガルドを征服した竜王と呼ばれるラスボスを倒してローラ姫を救うという王道ストーリー。
この王道ストーリーが子供だった私でも理解しやすく入り込みやすかった。
ゲームをスタートする。
最初に現れるドラゴンクエストのロゴに少し戸惑いつつもゲームを開始。
そうすると、次の場面ではお城の中。勇者と王様が居る。でも私の目当てであるローラ姫の姿はそこには居なかった。
印象に残るBGMが繰り返される。竜王に敗れ去った兵士。さらわれた姫。勇者ロトの子孫である勇者は突如として王様に旅立つように命じられる。
そう、怒涛の展開。
そして、操作するのは勇者!・・・あれ、ローラ姫は使えないの?多少の戸惑い。でもそれはすぐに忘れた。
フィールドに出ればモンスターとの戦い。
特に青いゼリー状のスライムと呼ばれるモンスターは弱くていじめるのにちょうどいい(笑)
難易度としてはレベルを上げていけば確実に進めていけることから決して難しいわけではない。
ストーリーもそこまで長いわけではない、下手すれば一日でクリアできる量。クリアまでの想定時間は……8時間から12時間ぐらいだったかな。
短い物語だけど夢中になれる要素がそこにはあった。
孤独な一人旅に感じる不安と寂しさ。
橋を渡ったときに一段階強いレベルのモンスターと遭遇するワクワクとドキドキ感。
暗い洞窟をたいまつ片手に進んでいく恐怖。
滅んだ街に佇むゴーレムとの邂逅。
「もし、わしの味方になれば世界の半分を勇者にやろう」という悪魔の囁き。
ローラ姫との再会からの、ゆうべはお楽しみでしたね(笑)
全てが新しかった。
全てが楽しかった。
全てが忘れられない記憶。
苦戦の末に竜王を倒してエンディングを迎えたあの時の気持ちを私は今も鮮明に覚えている。
気が付いたら"お姫様になりたい"から"勇者になりたい"に気持ちを変わり、やがて中二病を発症。
「私は勇者のマイちゃんだー!」
と言ってみたり、ベギラマと叫んでみたり、転んで擦りむいたところにホイミと言ってみたり。。。
……といっても今となっては黒歴史なのですが(笑)
ただ、それだけじゃなく、私の"勇者になりたい"という思いは本気だった。
中学生になってからは更に中二病の症状は進行し、悪しきモンスターから世界や弱者を救うために空手を習い日々鍛錬を重ねるようになっていた。
クラス内でのいじめっ子からいじめられっ子を助けたし、カツアゲされかけた少年を助けたこともある。
もっとも、そのあとでいじめの対象になったり、逆にカツアゲされたりしたんだけど、それでも私は勇者になりたい一心だった。
勇者に一歩でも近づくために、異世界への道も探したし、不良モンスターを倒しに冒険にも出かけたし、とにかく考えられることすべてを行動に移した。
しかし、結果としてそれはただの中二病として終わり、私は勇者になることはできなかった。
そう、現実に"勇者"なんてものは居ないのだ。それに気が付くことが出来ただけでも大人になれたということなのだろう。
ドラゴンクエストの出会いから始まった私の中二病は終わりを告げたのである。
そう、勇者を目指していた自分、矢鱈羽 舞はいつの間にか消えていたのだ。自分自身の心からも―――。