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頼姫の「ざまぁ」道  作者: 相川イナホ
4/10

URAGIRIは赦さないぜよ


 月出の国、陽立の国、皐貫の国。この3つの国は狭い地方に寄り添って存在する国だ。

 陽立の国が皐貫に攻め滅ぼされても、月出に統合されてもパワーバランスがくずれて覇権を争うこととなるだろう。

 幸い月出の入道殿は人徳に篤い平和主義者と聞く。

 入道殿と姻戚関係を結び後ろ盾になってもらえればこのまま荒ぶる皐貫に国を攻め落とされるよりは一族が生きのびれる勝算があると思う。


 と私が考えたところで家臣全てが納得できたわけではなく、いきり立つ兵達を宥めるのには骨が折れた。


 「武士道とは死ぬる事と覚えたり!生き恥をさらせと仰せですか!!!」


 まぁ頭の中まで筋肉な家臣は最期の一兵となっても戦う気満々だったし、玉砕に美学を持つものもいた。


 だがしかし、生きてこそだ。

 ここで一族郎党全て城とともに滅ぶ訳にはいかない。

というかはっきりいって死にたくはない。

 まだ幼い陽勝丸なんかが殺されてほしくない。

 婿殿を寝取った妹すら、死んでほしくない。


 だが残った兵達で何ほどの事が出来ようか。

 残念な事に父を始めとした主だった強硬武闘派は大多数が討ち死に。


留守居の家臣は若造とややボケがきている老人ときたもんだ。


まさに詰むしかないこの状況。


我が妹、旭を誑かした手腕といい、その後の戦いぶりといい、婿殿にしてやられたこの状況。

昨日や今日の思いつきでの結果ではあるまい。

相当の下準備に時間をかけたに違いない。


 「さぁ。入道殿はこう言われておる。いかがなされるか。責任をとって旭を娶るか。」


 そこで 芝居がかった動作で軍配がわりの扇子を取り出しビシっと婿殿を指し示す。


 「それともここで、死んでくれるか」

 

「気でも触れたか」


 そう言って口元をゆがめる婿殿。

 まぁ婿様が知ってる私ってば、公家世界かぶれの白塗り麻呂眉のおちょぼ口な典型的な「平安美人風」に装って「ごじゃるおじゃる」とまぁはっきりいっておかしな女だった。


それゆえに余計に怖いものがあるだろうか


 白装束に帷子をまとい、派手な打掛を羽織った女。

 

 「ただいま参った!」


 そこへ満を持しての伯父の登場だ。


 伯父は父とは違って細マッチョのシュッとしたイケメンである。そして伯父率いる部隊は我が国の精鋭といえる。

 婿様の策によって、父と兄が亡くなり、引かざるを得なかったがまだ戦える余力はあるようだ。。

 まぁこの部隊がここにたどり着くまでにと婿殿は勝敗を決めておきたかったのだろうけれど。

 ああ、ひきつっている、ひきつってる。婿様の顔が。


 「タイムオーバー。私の勝ちね」


  軍配の代わりに婿殿に突きつけていた扇をぱっと広げる。


 見れば入道殿の背後に月出の国の軍が追いついてきて静かに槍を構え陣を構えている。


 「ッ!」


 おお、婿様、悔しそうな顔をすること!


 気分爽快じゃ!


 婿殿の引き連れた兵達の様子だとスピードを重視して長帳場に十分な備えがあるとは思えない。


 ここで月出の国と陽立の国を相手に睨みあっていい事なんかひとつもないね。


 「くっ!改めて協議の要請をする!」


 ふーん。何を要求するつもりなのかな。

 こちらは旭は孕まされ、父と兄の首は取られている。

 兵だってけっこうな数を失っているはずだ。


「こちらは入道殿に調停を頼むつもりだ。たった一刻程度の婚姻とはいえ、離縁の手続きが必要だからな」


 まったくもってあの時間を返して欲しい。

 旭と通じていながらよくも私と式を挙げたものだ。


ともあれ、城を落とされる事態だけは避けられた。

次はどう動くか。


頭を悩ましていることなどおくびにも出さず、高笑いをしつつ去る。


「せいぜい首を洗って連絡を待つがいいわ!」


ウン。今の高笑いは悪役っぽくていいじゃないか。

 


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