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悪意、あるいは善意の鼓動
「クソッ! 何でだ! 一体どうなってるんだッ!」
ボクは部屋に響いた叫び声で目を覚ます。固い地面で寝た事で体が痛い。思考も靄がかかったかのように働かない。それでも無理矢理体を起こして周囲を見渡した。
そして、拳を震わせて叫ぶ親友の姿を認識する。どうやら彼が拳を震わせる原因は怒りのようだった。
なぜ、彼が怒っているのかと判断できたのか。それは、部屋の壁に縫い付けられたモノに起因する。
人が一人、壁に縫い付けられて死んでいたのだ。
「一体、どうやって……」
ボクの隣で白衣の男が呟いた。
どうやって。どうやってか。そんなのは簡単だろう。部屋の中央にポツンと落ちているクロスボウを使えばそれで済む話だ。
だが、問題はそこじゃない。
「一体、どうやってクロスボウを持ち込んだんだ……?」
部屋は閉じられ外部からの侵入は不可能だった。絶対に、絶対にだ。
そして、部屋が閉じられる前にクロスボウを持ち込んだ人物は、一人もいない。
物語の犯人は次話の『登場人物紹介』で名前があがっている人物の中にいます。