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プロローグ 2

 少し肌寒くなった深夜、ぐっすりと寝ていた傍で小さな足音がして、ふと意識が浮上した。


「――やれやれ。気付くのがもう少し遅ければ手遅れになるところだった」


 渋くて低い、男の人の声。


 ―――誰?


 声に出そうとしたのに、声帯は震えなかった。その感覚は家の職業柄、良く知るものだった。


 ―――金縛り?


 瞼さえも動かせないその状態に、私は秘かに焦る。


「んー・・・“あの方”はてっきりどこかで隠居されていると思っていたんだけどねー」


 今度は違う男の人。こちらは高く響く声だ。


「そうねぇ、『封印の書』を見つけていなければ、今でもそう信じていたわぁ」


 次は女の人の声で、ねっとりとした甘い声。


 しかし、声は聞こえるけれど、目が開かないせいで姿は見えないし、気配も感じない。どういう状況なのかわからなくて不安に思ったその時。


「――ふふ、悪く思わないでくださいませねぇ、お嬢様?」


 女の人が愉悦を含んだ声でそう言って、するりと私の頬を撫でる。そのぞくっとするほどに冷たい手。不快で振り払いたいのに、未だに身体は動かない。


「魂ごと消滅させろ。***は本来***の存在だから、肉体だけ殺しても死んだことにはならない」


「わかっているわぁ。何年**をやっていると思っているのぉ?」


 ―――死んだことって・・・私、殺される?


 よく聞き取れない部分があったが、どうやら彼等は私を殺したいらしい。なぜ?と疑問ばかりが頭にうかぶ。


「・・・おい、『緊縛(きんばく)の術』にほころびができているぞ」


「うわー、やっぱり***は違うねー。これでも俺の全力で抑えつけてるんだけどー」


「あらぁ、急いで『魂滅(こんめつ)』しないとぉ」


 まるで遊んでいるかのような声音で、私を殺す算段をつけないで欲しい。


 恐怖よりも先にそんなことを考えてしまうあたり、私も余裕があるのだろうか?それとも混乱しすぎて一周回って冷静になった?


 そんなことを考えていたら、突然のふわりと身体が浮く感覚。


「「「なっ?!」」」


 彼等の驚く声と共に、私の意識は途絶えた。


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