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プロローグ 1

 閻魔界・法王庁――そこは死者の生前の行いを審判し、裁きを言い渡す場所。そして、天国と地獄の門を管理する場所。


 法王庁のトップは閻魔王である。閻魔王は天神の一員である閻魔族から選ばれる。


 かつては多くの閻魔族が法王庁で仕事を行っていたが、とある事情から現在では隠れ里で隠棲している。


 では、現在の法王庁では誰が仕事をしているのか――それは“死神”と呼ばれる、かつて人だった者達である。


 死神は呪殺や生け贄、身代わりといった人外の力により命を奪われた人間の魂から選ばれる。


 死神は大別すると“知の死神”と“武の死神”とに分けられる。読んで字のごとく知識を武器とする死神と武力を武器とする死神である。それは生前の職業や習得していた技術によるものだ。


 そんな死神の中でも古株であり特に優秀な者達は単独行動を許されており、様々な権限が与えられていた。


 法王庁の書庫に存在する禁書室の利用もまたその権限の一つである。





【禁書室】



「――ふむ、そういうことか」


 低い声の男が呟く。


「それでぇ、何が書いてあったのぉ?」


 ねっとりとした甘い声の女がその呟きに問いかける。


「伝承通り、ということだ。なんとしてでも防がねばならんだろう」


「っは。たった一人の閻魔族に何ができるっつーのって感じだけどな」


 軽い調子の声の男が嘲笑する。


「閻魔族は天神の一員だ。元は人間である我々には想像もできない力を持っている可能性がある。油断はするべきではないな」


「ちっ、わかってるっつーの。今のまま自由に権限を行使し続けるためには、その“閻魔法王”ってのを誕生させちゃならねぇってことだろ?」


「そういうことだ。わかったなら、行くぞ」


「へいへい」


「んもぅ、行くなら早くしてぇ。認識阻害の術は結構疲れるのよぉ」


 文句を口にしつつ、女は禁書室にかけられていた認識阻害の術を解く。そして、禁書室を後にした3人はそれぞれに無関係を装い、各々の部署へと戻っていった。





 禁書室の深奥。そこに封じられている古書。それは閻魔族の秘伝が書かれている本である。


「――封印が解かれたか・・・・・・。

 死神として再生されたとはいえ、人の性が残っているのは否定できない。

 とはいえ、死神の権限を使うのであれば、欲望に忠実であってはいけないのだけれどね」


 呆れた口調で呟く男が封印が解かれた古書を撫でると、古書は姿を変えて再び封じられる。


 改竄解除の術と封印の術を同時に行使した男は、それでも疲労した様子もなく肩を竦める。


「さて、この封印を解いたとなると、犯人は結構絞られてくるな。

 しかし、あまり大きくは内容を改竄できなかったし、妙なことを企んでなければいいのだけれど・・・・・・」


 そんな彼の願いは、想定されるうえで一番最悪の状態で裏切られることになる。

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