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18/20

水曜日 ・ 東京 ・ 一年後1

   水曜日


 洋子はビルが運転する車の後部座席に座り、空港へと向かっていた。


 荷物は今朝早く届けられた。ビルの後について廊下を歩いている時に洋子はそれを目にした。ガラス越しに見えたオフィスの一室。書類やファイルで雑然とした机が多い中、一つだけほとんど物が置かれていない机があった。その上に、あの日ルークが着ていたポンチョと同じ色の布が丸めて置かれていたのだ。赤と黄色の菱形模様の刺繍も見える。洋子は目を伏せ、何も言わずにその前を通り過ぎた。

 車が走り出すと、前を向いたままビルが口を開いた。

「少しは眠れたのか?」

「ええ」

洋子は俯いたまま嘘をついた。眠るどころか、目を閉じることさえ怖くて出来なかった。目を閉じればすぐにルークが撃たれた場面が浮かんでくる。部屋の中にあるもの一つ一つを目を凝らして見た。見る物が無くなると、壁や天井のシミを一つ一つ数えていた。どうせみんな嘘ばかりついているのだから、自分のこんな小さな嘘の一つ、何の罪にもなりはしない。そんな風に心の中で突っ張ってみたものの、洋子の目にはビルの方がよっぽど疲れているように見える。

「あの子はどうなったの? あの女の子……」

「ああ、ミランダか。帰った。健康状態も問題なかった。両親が迎えに来て……昨日だ」

「そう。良かった」

洋子はミランダを思い出して顔を綻ばせた。

「あの子、可愛かったわ。天使みたいで……今は家族と一緒なのね。本当に良かった……」

洋子は口元に笑みを浮かべたまま窓の外を眺めた。立ち並ぶ近代的な建物と、歩道に植えられた緑の葉を茂らせる街路樹。ここが荒野の真ん中だとは信じられないくらいの整備された都市。人工的な景色の中を車で走りながら、洋子はもう一度あの美しいシルバー・レイクを見たいと思った。

 長い沈黙の後、ビルが重い口を開いた。

「あそこで何があった?」

「えっ?」

ルームミラーに映る洋子が首を傾げるのが見え、ビルは言葉を選びながら訊き直した。

「あの町で、レイクサイド・インの管理人と何があったんだ?」

洋子はルームミラーに映るビルの顔を見て、苦笑いした。

「管理人……。そうね、あの人は管理人だったわね……」

洋子は笑うのを止め「何も」と答えようとして口をつぐんだ。何も無かったと言いきれるのか。ルークとの間に、確かに何かがあったはずだ。ビルはいったい何を聞き出したいのか。それが単なる好奇心だとしたら許せない。洋子はルームミラーに映るビルを睨みつけた。

「何があったかなんて、私には分からないわ……。あの人に訊いてよ。あの管理人に……あの人が全部知ってるわ。私のことも、多分……」

 洋子はそれきり口をつぐんでしまった。ビルもそれ以上は訊かなかった。それだけ聞けば充分だ。

「この女を愛したのか……」

震える両手を膝の上で組み顔を俯かせている後部座席の洋子を、ビルはチラチラとミラーで覗き見て呟いた。奴がこの女と寝たかとか、そんな事は問題じゃない。この女も自分が愛されていたことを知っている。

 車が空港の敷地に入った。ビルは自分がしたことは間違いだったのかと考えた。奴にこの女の監視を命じた事。車のキーを回してエンジンを切りながらビルは首を振った。この女が勝手に来たのだ。二人は勝手に出会ったのだ。そんな事は、誰にもどうすることも出来ない。

 

 空港のカウンターでチェックインを済ませた洋子は、搭乗口に向かうエスカレーターの前でビルに最後のお願いをした。ルークの血が染み付き、革の色が変わってしまったココペリのブレスレットを外すとビルに差し出した。

「これを、あの人に渡してほしいの……。お守りだって、あの人がくれたの。今は私よりも、あの人に必要だと思うから……」

ビルは黙ってそれを受け取ると、無造作に背広のポケットに突っ込んだ。

「さよなら」

俯いて洋子が言った。

「元気でな」

ビルは踵を返して歩き出した。

 洋子は下りのエスカレーターに乗り、見えなくなるまで遠ざかるビルの後姿を見つめた。少し丸まった寂しそうな背中を。


 駐車場に停めた自分の車に乗り込むと、ビルはポケットからブレスレットを取り出して眺めた。奴に信心深い一面など見たことも無く、何か胡散臭さを感じる。裏側を見た時、プレートを留めている平たいマイナスネジがどうしても気になった。ビルは座席の上で腰を上げ、ズボンのポケットから小銭を出した。


 離陸態勢に入った飛行機の中で、洋子はぼんやりと窓の外を見ていた。気掛かりな事がたくさんある。アンソニーは無事だろうか。シルバーレイク・タウンの皆は、突然消えたルークと自分の事をどう思っているのだろうか。そしてルークは、今どこにいるのだろう。

 自分にそれを確かめる手立ては無い。厄介者として追い返されただけだ。何も手に入れたものは無いのに、それ以上のものを奪われてしまった。心の中は大きな敗北感、そして引き裂かれそうなほどの喪失感に支配されている。

 飛び立った飛行機の窓の下、街は瞬く間に小さくなり、その周りに広がる荒野が見えた。真っ直ぐに伸びた道。オレンジ色の岩山。朗が憧れた広大な景色が、今では虚ろな世界の果てに思える。

 そして今から自分が戻るのは、ここよりももっと虚ろな世界だという事も、洋子にはよく分かっていた。


 ビルは病院の廊下を歩いていた。ちょうど病室から出て来た看護師を捕まえ声を掛けた。その看護師は黙ったまま、伏目がちに首を横に振っただけだった。ビルもまた、視線を自分の足元に向け大きな息を吐いた。医師からも見通しの明るい話は聞く事が出来ないでいる。

 病室に入ったビルは、酸素マスクを付けられ、たくさんのチューブとコードに繫がれてベッドに横たわるルークを見下ろした。動いているのは、自動的に送られる酸素によって規則的に上下する胸だけだ。口を聞くことも、目を開けることも無い。

 初めて会った時から生意気な奴だと思った。仕事を頼んだ時に決まって露骨に嫌な顔をして細める目も、もう見ることは無い。上司を上司とも思わない悪態を聞く事もない。聞こえる音といえば、シューシューという酸素を送り出す音と、ピッピッという心音を示す音だけだ。それすら、すぐにでも止まるかも知れない。

 ビルはポケットからブレスレットを出し、ベッド脇のチェストの上に置いた。

「何がお守りだ。発信機じゃねえか……。上手くやったな、この色男……」

まだ仕事が残っている。ビルは出口へ向かうと吐き捨てるように呟いた。

「クソッ!」




   東京


 帰国してから数日が経ったある朝、時計代わりに点けていたテレビの情報番組で洋子はそのニュースを耳にした。約半年前に起きたシルバーレイク・タウンの事件で、当初、加害者であるといわれた後藤朗が、実は被害者であったという話を。洋子は出勤仕度の手を止め、立ったままテレビの画面を見つめた。世間はやっと朗の無実を知ったのだ。興奮した口調の司会者。もっともらしいコメントを述べる評論家達。番組ではその事実を衝撃的に扱っていたが、洋子の気持ちが動かされる事は無かった。その事実をルークから聞かされたのが、遥か遠い昔のように感じたからだ。実際には一週間ほどしか経っていないのだが。ただ、朗の名前がテレビから聞こえる度に、心に開いた穴は広がっていくばかりだ。

 世間はしばらくそのニュースでもちきりだった。シルバーレイク・タウンに再びマスコミが押し寄せた。洋子の知っている顔が、カメラの前でインタビューに答える。でも、誰もルークと洋子の話をする人はいなかった。

 ルークと何度となく車で走った湖畔のメインロードが映る度、薄汚れた緑のチェロキージープが走ってはいないかと画面に目を凝らしたが、もちろんそんなものを見つけることは出来なかった。

 マスコミは朗の家にも押しかけた。

「息子が潔白なのが分かって良かったが、それで息子が帰って来る訳ではない……」

インターホン越しに応える朗の母親の声をテレビで聞いた。癒える事のない悲しみと闘っている朗の家族の姿が頭に浮かんだ。ただの元婚約者で、家族でも何でもない洋子の周りはとても静かだった。

 ニュース番組では、その事件に関連して人身売買組織と売春斡旋を行っていた犯罪組織の一つが、アメリカ連邦捜査局によって壊滅したことを伝えた。しかし、その組織が行った取引に一人の日本人女性が巻き込まれたことは伝えていなかった。おそらくビルがもみ消したのだ。洋子の中からルークの存在をもみ消そうとしたように。でもそれはビルがした事で唯一、洋子が感謝したことだった。

 それも、次々に起こる新しい事件によって徐々に脇へ押しやられ、暫く経つと誰もその話をしなくなった。




   一年後


 その年初めての木枯らしが吹く晩秋の金曜日、洋子はいつものように銀行の窓口に座っていた。

 あれから一年が経とうとしている。毎日は静かに過ぎていった。生活のリズムを取り戻すのは容易かった。朝起きて仕事に行き食事をする。週末には溜まった家事を片付ける。体が勝手に動くのだ。心だけ遠い場所に置き去りにしたまま。それでも、繰り返し見る悪夢には悩まされていた。

 日々の生活に追われながらも、東京の空が夕焼けに染まるのを見ると、あの日の馬に乗ったルークの姿が胸を締め付けてくる。それでも、連なる東京のビルの群れがアリゾナの岩山に見えることはなく、瞬く間に現実に引き戻されてしまう。胸の痛みを残したまま。

 洋子はいつしか、あの場所に帰りたいと思うようになっていた。自分の居場所ではないと分かっていても、あの場所に帰らせてほしいと願っていた。


 窓口の客が一旦途切れ、一息ついたところに同僚の由美が近付いてきた。座っている洋子の肩に手を置き、身体を屈めて囁き声を掛けてくる。

「ねえ、今夜合コンがあるんだけど来てくれない?」

洋子は眉をひそめた。何年も前からその手の誘いは気が向かないので断っていたし、誘われることもほとんどなかった。由美は目を細め、両手を合わせて懇願してきた。

「本当は麻里が来る予定だったけど、今日風邪で休みでしょ? 人数がね……お願い!」

その誘いに珍しくも洋子は悩んでいた。ルークに言われたことが、ずっと心に引っ掛かっているのだ。「そうやって他人を遠ざけている」と。

その言葉を思い出す度、洋子は首を振った。それは違う。ルークを遠ざけたことなど一度もなかった。他人を遠ざけていたのはルークの方だ。あの男はいつも冷めた目で相手を眺め、決して本音を言おうとはしない。

 唇を噛んだ洋子の前に客がやって来て自動発券機から番号札を取っていった。

「分かった。行く」

洋子は急いで由美に告げると、客に笑顔を向け仕事に戻った。

 中年の女性から振込依頼書を受け取りながら、洋子は大喧嘩をした最後の朝を思い出していた。訳の分からないことでルークに責められた事を。しかもあの男は自分自身のことを棚に上げていたのだ。あの男の欠点は分かっている。怒りっぽくて子供っぽくて、セクハラも酷かった。もっとも、それはまったく口だけだったが。

 呼ぶまで後ろのソファで待つよう中年女性に促した洋子は顔を俯かせた。ルークのそんな欠点すら、愛おしいと思っている自分がいるのだ。その思いを向けることなど、もう出来はしないのに。洋子はそっと額に手をあてた。あの完璧な唇が触れた唯一の場所に。


「今ハマッてる物って何?」

合コンの席で向かいに座っている男から訊かれた。銀行から程近い場所にある洋風居酒屋の薄暗い照明の中、取り皿のサラダをつつきながら洋子はそれについて考えた。自分の趣味は何か。そういえば、趣味など無い事に気が付いた。テニスをやっていたのは高校までで、三年生の一学期に引退してからは一度もラケットなど握っていない。

 洋子が答えに困っていると,由美が助け舟を出した。

「洋子ってさあ、一人で海外旅行とか行けちゃうんだよね。すごいと思わない?」

その言葉に、今年の春入った後輩の女の子がおおげさに驚いた。

「え~一人で? 私だったらあり得な~い!」

「去年行ったでしょ? アメリカだっけ? その時の話ほとんど聞いてないんだけど。どこ行ったの? ロス? ニューヨーク?」

「アリゾナ」

洋子が答えた。皆、あまりピンと来ない感じだ。ただ感心したように、しきりに頷いている。

「それで、何をして過ごしてたの?」

隣の男が訊いてくると、洋子は苦笑いしながら答えた。

「えーと、掃除とか、洗濯とか……」

「何それ? ホテルに泊まったんじゃないの? コンドミニアム?」

由美の問いに洋子は何と答えればいいのか困ってしまい、曖昧に頷いた。

「そうね」

「それじゃ、自炊で?」

「あのね、食事は出たの」

どういう宿泊形態なのか、首を捻っている皆を眺めながら「何回かは私が作ったけど……」と、洋子は心の中で付け足した。

「何かスポーツでもしてたの?」

「馬に乗ったわ。でも、もう二度と乗らない」

 よほど話がつまらなかったのだろう。隣の男は自分が行った海外の話を始めた。

「前にハワイに行った時にさあ、実弾射撃場でピストル撃ってきたんだ……」

洋子の心臓がひとつ大きな音を立てて鳴った。

「すごかったよ。衝撃っていうか、反動っていうか……」

話を聞いているうちに洋子は段々息苦しくなり、額には冷たい汗が滲んでいた。しかし誰もその様子に気付くことはない。隣の男は右手の指でピストルの形を作り、左手でそれを支えるように構えると、その時の手順を事細かに説明している。洋子はきつく目を閉じた。隣の男は指で作ったピストルを構えたまま頭を振った。

「……やっぱ、あんなんで撃たれたら死ぬよなあ……」

洋子は弾かれたように、テーブルに突いていた肘を引いた。あの日、ルークを貫いた銃声が頭の中で鳴り響く。まるで自分が射抜かれたように、洋子は激しく息を喘がせた。

「ダメだ……もういられない……」

洋子は立ち上がり、バッグとコートを手にした。話の途中に無言で席を立った洋子を、隣の男がキョトンとした顔で見上げている。洋子は引きつるような作り笑いを浮かべた。

「ちょっと、トイレに……」

 トイレの洗面台で流れる水に手を浸した。冷え切った手を備え付けのペーパータオルで拭き、熱くなった頬にあてる。その冷たさが心地良かったが、気持ちの動揺を抑えるには至らない。大きく深呼吸をしてコートを着込み、バッグを摑んでトイレを出た所で由美と鉢合わせになった。

「何でトイレに行くのにバッグとコートが必要なの?」

由美が咎めるように言った。トイレに続く通路と客席は上半分がガラスになった衝立で仕切られている。洋子はガラス越しに見える、さっきまで自分がいたテーブルに顔を向けた。ひっきりなしに笑い声が届いてくる。盛り上がっているようだ。なおさら、自分の居場所など無いと感じた。

「ごめん。私もう帰る……」

「急にどうしたの? つまらなかった?」

「そういう事じゃないの」

洋子は慌てて否定した。その顔を由美が覗き込み、眉根を寄せて心配そうに尋ねてきた。

「顔色が悪い……具合悪いの? 大丈夫?」

顔色が悪いのならば、そういう事にしておこうと考えた。洋子は頷くと財布から五千円札を出して由美に渡した。どことなく納得がいかない様子の由美に謝罪を告げると、洋子は逃げるように店を出た。


 たまに大声を上げて泣きたくなることがある。そんなことすら出来ないでいた。一人きりの部屋の中でも。誰かに聞かれてしまいそうで。両親が死んだ時、妹の泣き声を聞くのが辛かったように、自分の泣き声を聞いたらどうにかなってしまいそうで。


 満員の電車を降りた洋子は駅前のスーパーに寄りビールを買った。ビニール袋を持った手が木枯らしに吹かれてかじかんでくる中、とぼとぼと家路についていた。いつまでも前に踏み出せないでいる自分が情けない。自宅近くの小学校の前に差し掛かった。校庭に植えられた木から引きちぎられた葉が、街頭の光の中をアスファルトに向かって落ちてゆく。水分を失ったカサカサの茶色い葉は、その大きさの割に重さは無い。地面に着く前に風に煽られ、洋子の足元を他のゴミやらと一緒にクルクルと回り出す。歩を進める洋子の右足がその葉を踏み、乾いた音を立てて粉々に崩れてしまった。何故だかとても悪いことをしてしまった気になり洋子は立ち止まった。しかし、葉だった物の欠片は止まない木枯らしによって瞬く間に吹き散らされた。さっきまで確かに形としてそこにあったものが、ちょっとした事ですぐに姿を消してしまう。そんな事は今までに何度も経験した。サムの言うとおりだ。その喪失感に決して慣れる事はない。

 冷え切った身体を包むコートの前をかき合わせ、自宅があるマンションの角を曲がった時その姿が目に入った。一年近く経っても記憶がぼやけることはない。それどころか時が経つにつれ、より鮮明になっていく。

撃たれた時、自分の腕の中にいたルークの額に浮かんだ汗の一粒一粒。首筋に寄り添う黒い髪の一本一本まで。その鮮烈な記憶のままのルークがそこにいた。ポンチョは着ていない。焦げ茶色のスエードのコートのポケットに両手を突っ込み、マンションのエントランス横のフェンスに背中を預けて立っている。

 一年間捜し求めたルークの姿を目にしても、洋子は駆け寄ることが出来なかった。そんな事をして、もし目の前でさっきの枯葉のようにルークの幻が掻き消えたら、きっとその場で泣き崩れてしまう。このまま何でもない振りをしてゆっくりと歩いていけば、諦めの溜息を一つつき、正気を保っていられる。そう思った。

 ルークは吹き付ける木枯らしに乱された前髪を、邪魔だとばかりに払うため頭を振った時、近付いて来る洋子に気付いた。ルークもフェンスに寄りかかったまま、無表情でただ洋子を見ているだけだった。洋子が目の前に来て立ち止まった時、やっとルークもフェンスから離れた

 洋子は凍りついたように瞬きも忘れ、その男の顔を見つめていた。もう一度会いたいと、あんなに願っていたにも関わらず、その姿を前にどうしていいのか分からない。

「……どうしたの?」

必死に頭を巡らせた挙句、洋子の口から出た言葉はそれだけだ。ルークは軽く苦笑いして口を開く。

「顔を見に来た」

そして、洋子が提げている重そうな買い物袋をさり気なく手に取った。中身がビールだと分かると少し安心したように唇の端を歪め、一年前と変わらない笑みを浮かべた。


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