↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

友に裏切られた俺は、奈落の底でLvカンストします! 謝っても、もう遅い! 今度は貴様が地獄を見る番だ!

掲載日:2026/09/01

「ざまあ」モノ短編です。


俺の名は、レオン。職業《ジョブ》は剣士、冒険者のはしくれだ。


俺は今、未踏破ダンジョン地下10階層にいる。

この階層中央部に、ぽっかりと開いている『奈落』と呼ばれる大穴。

その縁に片手でぶら下がっているのだ。


なぜかって? 


簡単な話だ。ペアを組んでる冒険者仲間であり、俺の友人……

いや、友人だと思っていた、ルジアンの野郎に突き落とされたのだ。


ルジアンは、奈落の縁に仁王立ちして、俺を見下ろしている。


ニタニタ笑いながら、俺の手を踏みつけている奴に問う。

「なぜだ、ルジアン!? なぜ俺を殺そうとする!?」


「君の恋人、リリヤ嬢を僕がいただくためさ!

町一番の美女の相手は、君みたいな地味な剣士じゃなく、この僕こそふさわしいと思わないかい?」


 理由は横恋慕か……確かにリリヤは、男なら誰もが恋焦がれるほどの、清楚で麗しい美女だ。

ルジアンは彼女に脳を焼かれちまったらしい。


「リリヤ嬢には、君が魔獣との戦いの最中、奈落に落ちて死んだって報告する。

傷心のレディーは落としやすい。僕がたっぷり彼女を慰めてあげるよ」


ルジアンは長い金髪をキザにかき上げながら、碧眼を細めた。


「そうそう、君がリリヤ嬢と住むために、必死に貯めた金で買った新築の家も、僕がいただく。

君の家でリリヤ嬢を、たっぷりと可愛がってあげるよ!

ああっ! 想像するだけでギンギンになってきた!

君の代わりに、あの麗しい美女の穴という穴に、僕の節くれをぶち込み、空っぽになるまで毎晩、毎晩、毎晩、ヒイヒイヒイヒイよがらせてあげるんだ!」

 

踏んづけていた俺の手を、ルジアンの奴が踵《かかと》で蹴り落とした。


「僕に感謝しながら、地獄でマスでもかくんだね! ギャハハハハハハーッ!」


奴の歪んだ笑顔と勝ち誇る笑い声が遠のいていき、俺は暗黒に包まれた――




意識が戻ると、俺は巨大な網の上に寝転がっていた。

網に引っ掛かり、奈落の底に激突せずに済んだらしい。


(助かったのか……)


安堵したが、視界に飛び込んだ光景に、そうではないとすぐにわかった。

牡牛ほどもある大蜘蛛の魔獣が、俺の身体を足元からせっせと糸で絡めている最中だったのだ。


視線を左右に動かすと、周囲には冒険者《せんきゃく》の骨や錆びた剣、破れた鞄がぶら下がっている。

俺が引っかかったのは、網ではなく大蜘蛛の巣だったのだ。


(くそうっ! ここまでか……)


と、


諦めかけた俺に、一筋の光明がさす。


(あれ!? 手が動くぞ……痺れてない……?)


 普通、蜘蛛類は巣に引っかかった獲物に麻痺毒を注入し、仮死状態にして保存する。

だが、俺の身体は麻痺していなかった。

おそらく、気絶した俺がすでに麻痺していると勘違いし、毒を注入していないのだ。


大蜘蛛に気づかれないように、ソロリと腰の剣を抜き、両手で握り――


渾身の力を込めて、奴の複眼に突き立てた。

剣が根元までぶっ刺さる。

大蜘蛛が耳障りな悲鳴を上げて暴れ出す。

俺は激しく振り回されながらも、必死で剣をねじり込んだ。

胆汁に似た体液を、盛大にまき散らす大蜘蛛。

やがて動きを止め、長い脚をたたんで動かなくなった。


『ピローン。レベルが6から7に上がりました』


頭の中でベルが鳴り、神のお告げが聞こえた。

俺は数日前Lv6になったばかりだ。それが、魔獣を1匹倒しただけでLvが上がった。倒した大蜘蛛のLvが、それだけ高かったのだ。

奈落はダンジョン最深部に直結している、と予想はされていたが、事実のようだ。


「取り敢えず、命拾いはしたのか……」


一息つくと、今度は怒りが沸々と湧いてくる。


「あの、クソ野郎! 絶対許さねえ!」


いやが応にも、恋人《リリヤ》のなまめかしい白い肌が、ルジアンに舐めまわされ、組み敷かれ、奴のモノで汚される姿を想像してしまう。

どす黒い感情が煮えたぎり、心を染めていく。

大蜘蛛から剣を引き抜き、宣言した。


「必ず生き延びて、奴のにやけ顔にこの剣を突き立ててやる!――」



奈落の底は、高レベルの魔獣が巣喰う巨大な迷路となっていた。

出会った数々の魔獣と死闘に及び、斬って、逃げて、また斬った。

ダンジョン壁から染み出る水をなめすすり、犬も食わない糞不味い魔獣の肉を食い、血を呑み、飢えと渇きを凌ぐ。

幾度、死線をくぐり抜けたかわからない。

ルジアンへの復讐心だけが、俺を支えていた。

 

*


「3650回……」


ダンジョン壁を所々覆っている光粘菌が、赤から青に変わり、夜を伝える。

俺は、魔獣の皮で作った帳面に印を書く。

光粘菌は昼と夜で色が変わる。日差しの届かないダンジョン内でも一日の経過が分かるのだ。


「10年、か……」


 ルジアンに復讐を誓って10年。いまだに奈落の底をさまよっている。

ダンジョンは地下ピラミッド構造になっていて、深ければ深いほど広くなる。

奈落の底はとんでもなく広大な上、時折、壁や通路の構造が変わるのだ。

俺は迷い続け、ボス部屋はおろか、階段すら見つけられていない。


剣や防具、衣服は半年でボロボロになった。

今は、剣の代わりに巨大な魔獣の牙を背負い、魔獣の毛皮で作った簡素な服を纏っている。考古学者が唱えるところの原始人さながらである。


俺のLvは2年前からLv99で止まっている。多分、人類が到達できる最高レベルになってしまったのだ。

かつて魔王を討伐した、勇者パーティーの平均がLv50だったと聞く。

今の俺なら単独《さし》で魔王に勝ててしまうだろう。


 

 「今日はこの辺で寝るか」


仰向けに寝転がると、視界にあるモノが映った。

そして、身体の芯から笑いがこみ上げてくる。


「ぶはっ、ぶぁははははははははーっ! これで、クソ野郎に復讐できるぞっ!!!」


見覚えのある光景だった。天井に延々と続く巨大な穴が開いている――

そう、奈落の穴だ。ここは俺が落ちた場所だったのだ。

10年かけて偶然にも戻ってきたのだ。


俺は立ちあがると、両足で思い切り、地面を蹴った。

Lv99の俺は軽く100メートル上に跳ぶ。

そこで壁を蹴り、さらに100メートル上昇する。壁を蹴る。また跳ぶ。

壁を蹴る。また跳ぶ。

それを繰り返すこと100回。俺は、ダンジョン10階の床に着地した。


ダンジョンから地上に出ると、夜のはずなのに異様に明るい。

「今日は三輪満月《みわまんげつ》の日だったか……」

空に浮かぶ三つの月が満月となっていた。数十年に一度しか見られない天体現象だ。


「取り敢えず、俺の家に行ってみるか」




 月明かりに照らされた赤い屋根の家は、漆喰の壁もまだ白く、手入れが行き届いていた。

俺とリリヤの愛の巣になるはずだったその家の前で、腕を組み思案する。

新居に引っ越す前に奈落に落とされたので、実は一度も住んでいない。


さて、どうしたもんか。ルジアンかリリヤが住んでいるとは限らない。


 その時、玄関の扉がバタンと音を立て、勢いよく開いた。

「たっ、助けてくれぇ~~~っ!」


全裸の男が悲鳴を上げ、転がるように飛び出してきた。

骨と皮だけのやせ細った手足。肋骨の浮き上がった胸。

ミイラの様に落ちくぼんだ眼球。頭部には申し訳程度の髪が残っている。


「あんた、助けてくれ~~っ! に、女房に殺されるぅっ!」


俺の前で跪き、懇願する骨皮男。

そいつは、なんと、ルジアンだった。

金髪碧眼のキザ男の、あまりの変貌ぶりにわが目を疑ったが、紛れもなくクソ野郎のルジアンだ。


逆に奴は、目の前にいる男が俺《レオン》だと気づいていない様子だった。

10年間サバイバル生活をしていた今の風体は、

ボサボサの髪と髭がドワーフ並みに伸び放題。魔獣の牙を背負い、毛皮を羽織った原始人である。たとえ母親《おふくろ》でも俺だと分からないだろう。


ドス、ドス、ドス、ドス、と地面を揺らす音を立て、ルジアンが脅える元凶が現れた。

玄関から出てきたのは、奈落の魔獣だった。


(なに!? 馬鹿な! 何故こんな所にドドゴンが!?)


ドドゴンは、その見た目から俺が適当に名付けた、奈落の迷宮に住み着く魔獣だ。

分厚い皮下脂肪に守られ、防御力が突出している、最も厄介な敵である。

Lv99の俺をもってしても一撃では倒せない。


驚き身構える俺に、さらに衝撃が走る。


「あんた! 逃げんじゃないよ! 夜のお勤めがまだ済んじゃいないよ!」


(な、なにぃ!? 魔獣《ドドゴン》がしゃべった!?……いや、違う。まさか!)


ドドゴンは四足歩行の魔獣だが、それは二足歩行をしていた。

よくよく観察してみると、下着《ブラジャー》を付けている。垂れ下がった脂肪でまったく視認できないが、おそらくパンツもはいていると思われた。


(リ……リリヤ―― なのか!?)


そして、その声は、紛れもなく清楚で麗しいリリヤのものだった。

が、ピンク色の髪と鳶色の瞳以外は見る影もない。


「あたしを口説いた時、毎晩あたしを可愛がるって言ったのは、あんただろ!」

「勘弁してくれぇ。もうアレがおっ立たねえ!」


泣いて許しを請うルジアンに、リリヤは8段腹の間から軟膏の瓶を取り出すと、ゲヘラッと笑った。


「大枚をはたいて、錬金術師の婆さんに媚薬を調合してもらったんだよ! これさえ塗りゃあどんなフニャチンも、三日三晩ガチガチになるってしろものさ!」

「いやだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


リリヤがハムのような指を、絶望の表情で絶叫を放ったルジアンの鼻に強引にねじ込む。

俺には一瞥もくれずに、そのままルジアンを家の中に引きずり込んでいった。


扉が閉まり、程なくして、断末魔に似た男の悲鳴と、盛ったドドゴンの遠吠えに似た女の喘ぎが流れてくる。


俺は茫然としたまま暫くの間、その場で立ち尽くした。

やがて、心の整理を付ける為、非常に複雑な己の心境の言語化を試みる……


「ええ~と、その……なんだな。つまりだな……

俺と付き合っていた時より遥かに元気(凶暴)で、幸せそう(ふくよか)なリリヤを見て、

復讐に囚われている虚しさに気付いた……??? 

と、いうことに取り敢えずしておこう! うんっ、決定!」


俺はきびすを返し、その場を立ち去る。

もう二度とここに来ることはないであろう。


最後にルジアンに対しても、俺の偽らざる心境を言語化する……


「ざまあ…… そして感謝を……」


かくして、ひとつの復讐譚は終わり、新たな物語がようやく始まる。

三輪満月が行く手を照らす。

振り返らずに歩く俺の前で、三つの月が、俺自身の道を示すように輝いていた。


 

―― 完 ――


「異世界転移」モノの長編も投稿しています。

似たような感じで笑える冒険コメディです。

『草太くんのBIG(ビッグ)り異世界冒険記』

https://ncode.syosetu.com/n8485mr/


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。