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自称サバサバ女を落としたら、私も落とされた件

作者: 井上さん
掲載日:2026/10/21

名前を借りました



フィクションです

 私ノアの友人のナンドが、婚約者カンデラと自称サバサバ女のクーロンに悩まされている。


同じ騎士科の生徒同士の付き合いとかで、いつも一緒にいる。


婚約者を放置して。




「こいつとは男友だちでしかないよ」


「サバサバしてるから、私、男友だちといる方が楽なんだよね」


 などと言いながら、腕を組んでいる。

いくら友だちでも、腕は組まないと思うが?




 ナンドの婚約者が、そんな作られたサバサバ女に手玉に取られている。


カンデラ、鼻の下伸びてるぞ。


どんなハニトラだよ。




「こいつとは男友だちでしかないよ」


「私サバサバしてるから、陰湿な女より男友だちといる方が楽なんだよね〜」


 今日もまた、肩を組んで、友情アピールをしている。




「そうか。なら婚約はやめよう」


「は?」


 声のした方向を見ると。


そこには、皆の憧れの侯爵家の子息バッファ様がいた。

 銀色の髪に銀色の目をした、整った顔で、成績も優秀、おまけに侯爵子息ときたら、モテないわけがない。


「騎士科の令嬢と婚約したかったのだが、男は友だちなのだろう?そんな令嬢とは結婚できない」


 バッファ様が言った。


「え!?」


 クーロンが目を見開いた。慌ててカンデラから離れる。


「婚約の申し込みする前に分かって良かった」


「待ってください!」


 必死に止めるクーロン。


「婚約者がいる男が友だちか…私と婚約しても、友だち付き合いは続けるのだろう?私は、私だけを愛してくれる令嬢が良いからな」


 バッファ様が言うと


「私は一途です!一途で有名な女です!」


 とクーロンは必死にアピールした。


「は?何言って…」


 カンデラが目を剥いた。


「他の男に触れた手で私を触るのか?気持ち悪いな。二度と私の前に現れないでくれ」


 バッファ様が冷たい目をした。


「そんな…!」


 愕然とするクーロン。

よく考えなくても、誰だって嫌だと思うよ。


婚約者がいる男と、友情ごっこの振りで腕や肩を組む女なんて。


ついでに、婚約者がいるのに、他の女から腕や肩を組まれて受け入れる男も嫌だな。






 カンデラは、バッファ様を選ぼうとしたクーロンを、裏切り者だと詰り、離れた。


そしてナンドから、浮気したカンデラ有責で婚約破棄をされた。


 ハニトラに引っかかったと見做されたカンデラに、新しい婚約者が見つかることは無かった。


学園を退学して、領地の騎士団に入れられて、厳しい訓練を受けているという。






 バッファ様に見切りをつけられた(と周りに思われた)クーロンは、婚約の申し込みが来なくなった。

今は学園を退学して、領地に引き籠もっているらしい。






 ナンドは、悩みから解放されて喜んでいる。


しかも、新しい婚約が決まった。

バッファ様の友人の、侯爵子息ヘンリー様だ。


 優しく思いやりのある婚約者で、ナンドは幸せそうだ。良かった。




そして何故か、私はバッファ様の婚約者になった。


「『何でも言うことを聞く』契約だろう?」


 とバッファ様に言われて


「はい」


 と言うしかなかった。

どうしてこうなった?







 爽やかな風が吹き抜ける侯爵邸の庭の東屋で、4人でお茶をしている。


バッファ様と私。

ヘンリー様と、ナンド。




 幸せそうに微笑み合うナンドとヘンリー様を見て、良かったなと思う。


助けてくれたバッファ様には感謝だ。


「助けてくださり、ありがとうございました」


 小声でバッファ様に言った。


「うん?可愛い婚約者の為だからね」


 バッファ様はニコリとした。


「それに、ナンドにヘンリー様を紹介してくださりありがとうございました」


「友人想いの、可愛い婚約者の為だからね」


「…両方とも、まだ婚約してない時でしたよね?」


「うん?婚約するつもりだったから、問題ないよ」


「!?」


 婚約するつもりだった!?




バッファ様に、蕩けるようなとても良い笑顔で見つめられる。

 愛おしそうに見つめられて、色々爆発しそうだ。




真っ赤になる私を、ナンドとヘンリー様が温かく見守っていたのに、気付かなかったくらいだ。






※※※


 私は、侯爵子息のバッファ。

静かな学園の図書室で勉強していると。


見知らぬ令嬢から、いきなり、とんでもないお願いをされた。


「すみません!友人を助ける為に、一芝居うってください!」


 何の話なんだ?


ちょっと聞いてみようか。


「友人を助けるとは?」


「友人の婚約者と自称サバサバ女が、人目も憚らずイチャイチャしているのを、ぶち壊したいのです」


何て?


「じしょうさばさばおんな?」


 初耳だな。


「『私、サバサバしてるから、陰湿な女より、男友だちといる方が楽なんだよね〜』と言いながら、男子生徒に腕を絡ませるんです」


「はぁ?」


 何だそりゃ?男同士で腕を組むかよ?気持ち悪い。


「婚約者がいる男子生徒だけに『私達、友だちだよな〜』と肩を組んだり」


 男同士でも、めったに肩なんて組まないが?


「自称サバサバ女の幻想を砕きたいのです」


 まぁ、気持ちは分かる。


「何で私なのだ?」


「侯爵子息だし、顔が良いし、成績も良い、令嬢達の憧れの存在だからです!」


 と言いながら、この子は私をそんな風には思ってないみたいだな。


「皆の憧れの子息が、私に婚約を!?と糠喜びさせてから、やっぱり無しでって言われたら、絶望するでしょう?」


 それは確かに。頭良いな。

面白い子だな。


でもな…


「…それ、私に何のメリットが?」


「え?え〜っと…え〜と…」


 彼女はしばらく悩んでいたが、こちらを真っ直ぐに見て


「何でも言うことを聞きます!」


 と、宣言した。


…何でも?


令嬢が、そんな事を言ったらいけないよ。私が悪い男だったらどうなるか、考えられないのかな?




 彼女は、ピンクの髪にピンクの目の、可愛らしい見た目なのに、初対面の上位貴族の私にお願いをしてくる度胸のある令嬢だ。




 私は悪い男なんだよ。


可哀想に。


悪い男に目をつけられちゃって。


もう逃げられないよ。




こんな面白い子、初めてだ。


逃さない。




「良いだろう」


 私は、安心させるように微笑んだ。


「どうすれば良い?」


 名前も知らない彼女の作戦を聞いた。


「サバサバ女が『男は友だち』と言っているところへ突撃して『じゃあ婚約を申し込むのはやめよう』と言うのです」


「ふむ」


「サバサバ女が『男は友だち』と今、言ったばかりなのに、バッファ様から婚約をと言われて手の平返して婚約する気になったら『男友だちより婚約を選んだ女』と周りから見られてサバサバ女が幻滅されます」


「ふむ」


「そこで『男友だちとイチャイチャする女とは婚約は無し』と、とどめを刺して絶望に突き落とす」


 彼女は、可愛らしい見た目とは裏腹に、割りと物騒な発想をするな。



でも、面白い。



 相手を持ち上げて有頂天にしてから、地獄に突き落とす…なんて、貴族がよくやる手じゃないか。




 この子は成績が良いと聞くし、友人の為に力を尽くそうとする優しい子でもある。

 それに、初対面の私に、いきなりお願いしてくる度胸もある。




「分かった。では『友人を助ける為に何でも言うことを聞く』と契約書を作ろう」


「はい」


 彼女は頷いた。


契約書にサインしたら、逃げられないよ?

ちゃんと、先のことまで考えないといけないよ。


「本当に、サインして良いのかい?」


「はい」


 彼女の真っ直ぐな視線が眩しい。


この視線を独占したい。




すぐさま契約書を2枚作り、お互いにサインした。




彼女の名前はノア。可愛らしい見た目と可愛らしい名前。




「ありがとうございます」


 満面の笑みで言われた。




初対面の男を信じてはいけないのに。




『何でも言うことを聞く』を理由に、『婚約して』と言ったら、彼女はどんな顔をするだろう?

 しかも、契約書まであるのだから、逃げられない。




 あぁ…彼女が婚約者になる日が楽しみだな。


私の色の、銀のアクセサリーを贈ろう。

きっと可愛い私のノアに似合う。



読んでいただきありがとうございます

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