"戮戯"
灰色のアスファルトに、赤い滴りが落ちていく
それが面白くて
僕は口の端を上げて、ぼんやりと、滴りが染みを増やしていくのを視続けて居た
この赤いものが何なのか、少しずつ僕は鈍化した頭で思考を巡らせて────相当な時間の後、僕はそれが『四つん這いに倒れた自分の、鼻から止め処無く溢れる血』だと気が付いた
僕は、がくがく揺れる左手を地に突いて、右手で口と鼻の辺りを覆って居るらしい
他人事のようにではあるが今、それが急に理解出来た
───だとすると
ようやく意識の戻り始めた意識で、視線を上げる
君は僕を待ちくたびれて居たらしく、僕が立ち上がろうとするのに気付くと静かに、それでも何処か苛立たしげに喜びながら、腕に血管を浮かべて、拳を硬く強く握る
僕は、君の拳がとても痛そうで硬そうなのを視ると、あはぁ……と、愉しそうに息を吐いた
唾液がアスファルトに落ちる
せっかく綺麗だった血の模様を、唾液はきっと邪魔して居る事だろう
しかし、僕は握られた君の拳を観察しながら、どの部分が自分の躰にどうめり込み、どう快楽を与えるのかの想像をする事で頭がいっぱいだった
そうしている内に君の拳が僕の顔、鼻の少し下辺りを乱暴に捉える
頭が、車に撥ねられたみたいに後ろに仰け反る
そのまま後ろに倒れると、僕は虫のように血と唾液だらけの地面をのたくった
───もっと、もっと欲しい
意識がそれでいっぱいになり、僕はよろよろと立ち上がる
今度は腹を打たれる
躰がくの字になり、足が僅かに浮かび上がった
耐え切れなくなり吐瀉物を吐く
『続き』が欲しい僕は、無意識に口から出る血と吐瀉物を、君の新しい靴に吐きかけて居た
本当に許せなかったらしく、君は僕の首を絞めると、自分の身長より高く片手で僕の喉を持ち上げた
気道を押しつぶしたいのか親指を食い込ませて、血が出るくらい喉にそれを突き刺してくる
酸素が足らないのか、頭の中で静かな轟音と共に光が拡がっていく
両脚の付け根くらいから、熱い躰液がズボンの中を満たし始める
こんな快楽は初めてだった




