表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

プロローグ

最近、ようやく身辺が落ち着いたので、久しぶりに投稿します。

リハビリがてらの作品になるので、文章とか変なところはありますが、生暖かい目で見てくれると助かります。


基本、最低週一投稿を目指して投稿する予定です。



「よし……実験最終段階に突入。順調と言えるな」


「博士、またその実験っすか。懲りないっすね、ほんと……」


バチバチと迸る紫電と机に描かれた陣、そしてその陣の上に鎮座している実験用マウスを見て、助手が溜息を吐く。


空間転移(テレポート)は人類の夢だろう?何度失敗したって諦めるつもりはない。寧ろ同じ錬成術師を極めんとする同好の士である亜美にこの野望が伝わらないのが納得いかないな」


そう言って、手元にいるマウスから目を離し、助手の方を見る。


助手は、クルクルと回転する椅子に背を預けながら、だらしない格好で再び溜息を吐いた。


「既に充分すぎるくらい錬成術を極めたじゃないっすか。物の構築、分解、生成、生体錬成から果てはアンチエイジングまで……。博士歳いくつっすか?」


「正確には数えていないが、300くらいか……?」


「それでそのピチピチボディっすよね?もう充分っすよ」


そう言って、助手は黒の縦セタに身を包んだ豊満な胸部を持ち上げて見せる。

男だったら思わず唾を飲んでしまう魅力的な光景に、視線が釘付けとなった。

そんな私の無様な姿に助手は嘲笑の笑みを浮かべる。


「どうやら若返ったのは身体だけではないみたいっすね……?」


「……うるさいな。君だって、90は超えているくせに……。便利な錬成術の力によってその恩恵を受けた割にはその有り難みが分かっていないようだが?」


私がそう切り返すと、助手は痛いところを突かれたとうっと唸る。


元々、捨て子だった彼女を拾い上げ、助手としたのはこの私だ。

彼女の正確な実年齢までは覚えいないが、それでも見かけ上のお姉さんの年齢ではないことは知っている。


女性というものは、幾つになっても若く見られたいものなのだろう。

実年齢の話になると途端に口数が減ったが、それでも私の実験には消極的な姿勢を崩さなかった。


「ふぅ……まあ、意見は人それぞれだが、私の邪魔だけはしてくれるなよ?」


「……」


助手から無言の肯定を受けて、手元のマウスに視線を戻す。


机上には、間隔20センチほど空けて、幾何学的な紋様の陣が二つ。

片方には衰弱して大人しく蹲るマウスを置き、もう片方には何も置かない。

陣は所謂錬成陣と呼ばれるものでここに生命エネルギー、ルクスを流すことで式が完成する。


先ほど助手に話した通り、今回の実験の目的は、このマウスを20センチ先の錬成陣に飛ばすことだ。

今まで何人もの錬成術師達が空間転移に挑んできたが、未だ成功の兆しが見えない超高難易度の錬成術。

成功すれば、また一歩高みへと近づくはずだ。


歳甲斐もなくワクワクした気持ちで手のひらからルクスを流す。


じんわりとした淡い光が陣へ吸い込まれ、式が発動する。

幾層にも重ねた複雑な陣は、少しずつ光を増していき、机上を眩い光が覆い尽くす。


ジジジっと紫電が発生すると共に、マウスはもう片方の陣へ転移する。


実験は成功だっ!と思わず立ち上がりかけたが、よく見るとマウスの様子がおかしい。


「ん……?何だこれは。……死んでいる?」


「……っすね」


助手も私の方から覗き込むようにマウスの確認をする。


先ほどまで衰弱はしていたものの、生命体が発するルクス(生命力)は確かにあった。

だが、今転移先の陣の上にあるこれは、出来の悪い標本のように全くルクスを発していない。


少し毛皮に触れてみると、まだほんのり暖かい。先ほどまでは生きていた証だ。

つまりは、陣の発動に耐えきれずに死んだということになる。


「んー、何とも言えないな。転移といえば転移なんだが……」


「死んでいる状態で転移されても全然嬉しくないっすね……」


「……だな」


私としては、今後の物流を更に良くするため、何より遠方の人間同士の交流をもっと気軽に行うための開発のつもりだ。

物はともかく、生物が死んでしまうのでは移動手段としては使い物にならないのだが……。


「いや、まだ分からないぞ……」


「……?」


「先ほどのは暴れないようにしてもらうために衰弱したマウスを使っていたが、もしかしたら転移には転移する生物のルクスも消費するものかもしれない……。転移エネルギーの消費に耐えきれなかったとしたら、もう少し生命力のあるやつでやればあるいは……」


「じゃあ、もう一匹マウス連れてくるっすか?元気なの」


「いや……それには及ばない……」


「……?」


怪訝そうな顔をする助手に対して、私は机上の陣に右腕を置き、陣にルクスを注ぐ。


その姿を見て、助手もすぐに察する。


「もしかしてーーー自分を転移させるつもりっすか!?」


「ああ、もしかしたらマウス程度の小動物のルクスじゃ足りないかもしれないだろ?ここは一度人間の中でもルクス総量に自信のある私自身で行った方がーー」


早い、なんて言葉を言おうとしたところで、助手から普段聞いたこともないような声量でかきけされた。


「バカっすよ!!!まだ、安全性も保証されていない技術に自分の身を投じるなんて!!!いつもいつも思ってたっすけど、マジ大馬鹿っすよ!!!危険なんで早く手離してください!!!」


おい、いつも私のことバカだと思っていたのか。抗議するぞ、まじで。


そう言うよりもはやく、式が発動してしまった。


「……あっーーー」


部屋中を覆う眩い光の中、眦に涙を浮かべ、こちらに手を差し伸ばしてくる助手。

その姿を最後に、私はこの世界から姿を消したーーー







「はっ……何だ、ここは?」


長い夢から覚めたような感じ。

ゆっくりと意識が浮上していくような感覚と共に、目を開けると見晴らしの良い荒野に私は立っていた。


「コウエオジョアjホホghジャjホグエハhッjpjさjgぴkpjっpjかpjkjpじゃg?」


「何だ、こいつは……?」


そして、目の前には巨大な鉄の塊と思しき人形。

目、鼻、口と顔のパーツが全く付いていないのっぺりとした顔に、発される機械音声のような何か。

頭、胴、四肢と人形としての最低限のパーツを持った鉄人形がこちらに手を伸ばしてくる。


「過疎じゃwと絵ホアhg帆gはshdf日オアg帆jgはhgじゃjそghぼsdfんlのh?」


「何を言っている?」


意味のある言語とは思えない。

しかし、こちらに何らかの問いかけを行おうとしている確かな意思を感じる音。

その音と共に、私の頭を鷲掴みにしてくる。


「痛っ……」


「jaslhgftoh御slgrbのいあhそjgjgはおdしょmが;sjのh?」


夢の中か、とも思うが、この痛みが私に現実と教えてくれる。

巨大な鉄人形は、何度か私の体を左右に揺らすと、地面に投げ飛ばす。


「ガハっ!」


「あしょgthごあhgろphgのえgろph;gラオhrぽ!」


何かを叫びながら殴りかかる鉄人形。


「状況が飲み込めないが……貴様は、敵ってことで良いんだな?」


「h竿;hgいう亞bほ;んレオgっはsrぉぉぉぉぉっ!!!」


「ちっ!言葉が通じないとは不便だな、全く!」


鉄人形の敵認定と共に、私も戦闘態勢に入る。

本職は研究だが、300年という長い人生を謳歌してきている。

多少の戦闘行為は可能だ。


鉄人形は咆哮のようなけたたましい音声を出すと、巨大な腕を振り下ろしてくる。


「ふんっ!」


「!!?」


私はルクスを両腕に展開。ガードの姿勢をとり、鉄人形に迎撃。

振り下ろされた鉄腕を逸らし、一発腹に拳をぶち込む。


ガンっという音と共に、鉄人形の驚愕したような音が聞こえるが、こちらも想定外の鉄人形の硬さに驚愕している。


「何だ、こいつ……中身まで鋼鉄でできているのか?中の人はいません的な?」


全身鋼鉄で作られた自立型ロボットを思わせる硬さ。

ルクスで拳を強化して殴ったのに、びくともしない。

それどころか殴った反動でこちらの拳がダメージを負っている。


というか、よろめきすらしない。普通なら、中の人間には多少の反動があるはずだが。


遠隔で操作されたロボットと考えるのが自然だが、私の目には微かに奴から生命体の気配(ルクス)が立ち昇っているのが見える。全身が機械のロボットでは出せないものだ。私の経験則上、何らかの生命体と見るのが妥当だ。


「こんな生き物、300年生きてきて見たこと無いぞ、まったく……。しかも、妙に身体がだるいような」


転移の影響か?周囲を見渡せば私のラボからは遠く離れたところに跳んだことは確実。

流石に私のルクスもかなりの消耗を強いられたとみる。

というか、あの式は指定した陣に跳ぶよう双方向に陣を刻まないと跳べないようにしたつもりだが……一体、どうなっているのか。


「さおgthごあいhzslfgjほhじゃsおおおおおっ!!!」


「まあ、考察は後にして、と。とりあえずは、こいつを黙らせるか」


ドンっ!と振り下ろされる拳を回避。

数メートル距離を置いて、敵を観察する。


鋼のように硬いボディ。私のルクス込みの膂力を多少とは言え、上回るパワー。

高さはおそらく3メートル近くで1.5メートルほどしかない私の身長と比べて、約2倍。

だが、材質が全て鋼鉄と仮定するなら、割と簡単に決着するかもしれないな……。


「jぁgsrhごじゃおおhjろほhgじゃdそphじょjぉぉぉぉぉおおおっ!!!」


「……『酸化(オキシダイズ)』」


鉄人形の拳に合わせるように、先ほど負傷した際に出た血を利用して手のひらに書いた錬成陣を起動する。


「!!?」


すると、真っ黒だった奴の全身に一瞬で赤錆が生じ、硬直した。


振り下ろされた拳が重力に耐えきれず、ドサッという音を立てて、地面に崩れ落ちる。


「ふむ……本当に中身まで鉄でできていたとはな」


目の前の鉄人形に生命の気配が失われていることを確認し、残心を解く。

分離した鉄人形の腕を見れば、分解面までしっかりと錆が回っていることが観察できる。


「少なくとも戦闘中は生き物だったはずだが……今は、ただの鉄屑同然。謎は深まるばかりだな」


転移には成功(?)したが、全くの未知の場所に放り出されることとなった。


これから先、どうすれば良いのか、と思案しながら、荒野の果てを私は見据えた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ