最終話 これから一体、どうなっちゃうの!?
――それは、大事な家族・友人といった周囲の”縄張り”を守り抜くという誓い。
――それは、『凌辱的な純愛劇を繰り広げたい』という理性や理屈では制御出来ない研ぎ澄まされた熱き”衝動”の塊。
――それは、新たな時代を切り開く事を夢見る”BE-POP”な意思の力。
そういった意思とともに、私の中から爆発的な”創作力”らしきものが湧き上がってくる。
「――ッ!?これなら……きっと!!」
ラルクさんとリュージが食い止めている間にも、ゲルジスが第二の釘を装填している。
……これを見過ごすわけにはいかない!
気づくと私は、すぐさま駆け出していた。
「……これ以上バカな争いすんの、やっめろぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」
そう叫びながら、三人の間に割って入る形でアタシは疾走していく。
「――なっ!?何をしているんだ、君は!!」
「オイ!流石にこれは笑えねぇぞ!?」
「……フンッ」
三者三様にアタシに向かって何か叫んでいるみたいだ。
だけど今はそんな事を気にしてはいられない。
アタシは自身の中で湧き上がる”創作力”を最大限使って、渾身の気合いを込める――!!
「――派閥争いなんてくだらない!!そんなもの、新たな創作者であるこのアタシが!……絶対に終わらせてやるんだからッ!!」
これまでに三人が示した”イチャラブ♡”や”快楽堕ち”、”強制蹂躙”とも異なる”凌辱に見せかけた純愛劇”とでも呼ぶべき自身の中から湧き出た渇望を込めて、アタシは全力の一撃を放つ。
アタシの拳から勢いよく放たれた力の奔流が、三人の激突によって生じた強大な力場に直撃する。
激しく攻め立てるかの如く内側から盛大に食い破り、外側に爆散しそうになっていたエネルギーを優しく抱擁するかの如く受け止めることによって、次元を崩壊しかけるほどの力の塊が嘘のように雲散霧消していく――。
「――ッ!?馬鹿な……全年齢の加護も、運営神群の権能すら歪曲させるほどの力を持つ俺の“釘”を打ち消すほどの力だと!?」
「……こんなの、どんなに乱パを開いても体験したことのないスペクタクルだろ……!!やっぱ俺の見込んだ通り、おもしれぇ女だぜ――!!」
「……純愛のようでありながら、凌辱のような激しさに満ちた執筆力……!?――ッ!!まさか、君こそがそうだと言うのか!?」
ラルクさん達が口々に何か言っているけど、渾身の力を使い果たしたアタシはそれどころじゃない。
それでも、ここでへばるのは情けないよなー、という半ば意地のような感情とともに、アタシはニッと告げる。
「……ハァ、ハァ!どうよ、これがアタシの実力ってヤツよ……!!」
その言葉を受けて、息をのむ三人の男達。
これで、少しは戦う意欲がなくなってくれたのなら良いけど……。
そんなことを考えている間にも、アタシのもとにぞろぞろと人が集まってきた。
「ヤッタ〜〜〜!!……彼女こそが、新たな救世主だったんだ〜〜〜ッ!!」
「――今日はアタイの奢りだよ!!アンタ達、めでたい日なんだからジャンジャン飲み食いしな!」
魔物達の襲撃から逃げ延びたらしい町の人達が瞬時に現れたかと思うと、アタシをそっちのけで盛大に宴を始めていく。
「ブヒヒ……!!一時ハドウナル事カト思ッタガ、無事二創作界隈ガ生キ残レタ喜ビト、期待ノアイドルノ新生ヲ祝シテ、乾杯ッ!!」
「……ったく、だから、あくまでお試しであって、アタシは本当にアイドルやるとは言ってないっつーか……」
「あっ!?街を襲った魔物達が犠牲者を連れて、ノコノコ出てきやがったぞ!?……て、てめぇら、どのツラ下げて……!!」
「まぁまぁ、今はせっかくのめでたい席なんだから良いじゃないの!詫びのつもりなのか、蟲みたいな奴が大量にコミチキを持ち寄ってくれてるわけだし」
「キシャーッ!!フシュルルルッ!」
「そうそう!何事もブルマが一番!!」
「忍、忍♪」
「……ったく、しょうがねぇなぁ!!今日だけだぞ!」
そんなやり取りをしながら、立場や種族の垣根を越えて、ワイワイと創作界隈が賑わいに満ちていく――。
創作界隈の人達にもみくちゃにされそうになりながらもなんとか脱出すると、そこには派閥のトップである三人が並んでアタシの事を見つめていた。
思わずたじろぎながらも、アタシは単なる観光客ではなく”創作力”に覚醒した一人の作者として、三人になんとか反論を試みる。
「な、何よ……三人ともまだ喧嘩をしなきゃ気が済まないっての!?」
我ながら半ば威嚇とも言える言葉をぶつけてしまったが、ラルクさんからもたらされたのは意外な答えだった。
「いや、この創作界隈を救った君に感謝はすれども、今はこれ以上無粋な事をする気はないさ……君には心から礼を言うよ」
そのうえで、とラルクさんは続ける。
「僕達の激突によって次元崩壊まで起こしかけていた力場を食い止めてみせた君の”創作力”は並大抵のものではない。……奇跡、と称してもおかしくない、僕達のような既存の派閥の属性とも異なる”第四”の可能性を君からは感じるんだ……!!」
……第四の可能性!?
た、確かに戦いの最中にそんな事を願ったりはしたけど、まさかアタシの力がそんな”奇跡”扱いされるくらい途轍もない代物だったなんて……!!
困惑するアタシに、ラルクさんが言葉を重ねる。
「君は庇護されるだけの対象ではなくなったかもしれない。……けれど、その力を巡ってこれ以上危険に晒されるのを僕は見たくないんだ。――だから傍で、僕とともに同じ道を歩んでくれないか?」
そう言いながら、ラルクさんがアタシへと右手を差し出す。
「ヘッ、そんな窮屈な鳥籠に自分から飛び込むような真似はやめておけよ!誰にも縛られない力を持ったアンタなら、俺と一緒にいた方がサイコーってなもんよ!!――なぁに、絶対アンタの事をいっときたりとも退屈なんてさせねぇからよ?」
そう言いながら、ニヒルな笑みとともに見つめてくるリュージ。
「他の奴等なんて関係ない。貴様が選ぶ答えなど明白だな。――真に新時代を築きあげるなら、俺の隣を置いて他にはないはずだ……!!」
憮然とした口調とは裏腹に、ゲルジスが強い意志とともに心震わせる声音で告げる。
――かくして、争いはとめられたものの創作力に覚醒めて早々、アタシは三大派閥のトップに言い寄られる事態に陥ってしまっていた。
……どうして、こんなことに……?
――これからのアタシの創作ライフ、一体、どうなっちゃうの〜〜〜!?
これからこの創作界隈で活動していくアタシは、この三大派閥のどこかと組む事になるのだろうか。
それとも、それらとも違う”第四の可能性”をアタシ自身の意志と力で模索していくことになるのだろうか。
……いずれにせよ、この先がどうなるのかなんて運営神群にもわからないことに違いない。
それでもきっと、アタシには……ううん、“創作力”を持った人なら誰だって、例え神様でも予測できない自分だけの未来ってヤツを描いていけるはずなんだ――!!
無限の可能性と同じくらいに、悩ましい選択肢が渦巻く街:“創作界隈”。
――アナタなら、どうする?
『創作界隈の派閥争いは淫靡なる調べとともに 〜屋台のオッサンに怒鳴られてはじまるアタシの受難〜』 〜〜fin〜〜