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学校では怖いと有名なJKヤンキーのアマガミさん。家ではめっちゃ可愛い。  作者: 結乃拓也/ゆのや
第1章 【 ヤンキーとあだ名で呼び合うまで 】
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第91話 『 本当に一緒に行きたい人は 』

 僕と水野さんはお互いに読書が趣味ということもあり、カフェから出た後は書店へと足を運んでいた。


「そういえば水野さん、海斗くんと水族館に行くんだってね」

「げっ。なんで知ってるの」

「海斗くんからメールが来たんだよ。琉莉と水族館行く! って。メールでも分かるほど喜んでたよ」


 そう告げると、水野さんは心底呆れたように肩を落とした。


「あのばか。帆織くんに言うなんて信じられない」

「もしかして知らないフリしてた方がよかった?」

「いいよもう知られちゃったんだし。後悔したところで無意味だ」

「あはは。そんなに知られたくなかったんだ。べつにいいことだと思うけどね」


 僕は丁度話題にも挙がっていた水族館が舞台の小説を手に取りながら会話を続ける。


「いいじゃない。せっかくの夏休みなんだから。遊びに行くのはいい気分転換になるよ」

「気分転換になるかは状況次第だよ。私は大勢の人がいる所は苦手だから」

「水野さんは静かな場所が好きだもんね。そうなると水族館は水野さんが好きそうな場所じゃない?」

「うん。好き、かな。あまり行ったことがないから分からない」


 普段は家に引きこもってるから、と僕が手に取った本と同じものを手に取りながら呟く水野さん。


「そっか。ならきっと気に入ると思うよ。静かで涼しくて、水中を漂うお魚さんたちが水野さんを癒してくれると思う。イルカショーも楽しいよ」

「楽しめるかな。相手が相手だから分からない」

「もしかして、水野さんは海斗くんのことが苦手?」


 彼女の瞳に一瞬憂いが帯びた気がして問いかければ、水野さんはふるふると首を横に振った。


「苦手とかじゃない。ただ、どうして今更になって私に構うのかが理解できないだけ」


 そういえば、二人って最近までほとんど関わり合いがなかったんだっけ。

 海斗くん側の事情を知っている僕としては水野さんの疑問に答えを差し伸べられる。けれど、はたして僕がその答えを告げていいのだろうか。彼女の疑問は、海斗くんが答えるべきではないのだろうか。

 たぶん、正解は後者なんだろうな。


「なら海斗くんに直接聞くべきだよ。水野さんが今感じてる疑問を。そうすれば、答えをもらえるんじゃないかな」


 それにもしかしたら、水野さんはとっくに自分の中で答えを出しているんじゃないだろうか。彼女は秀才だ。それに加えて洞察力も鋭い。ならばきっと、海斗くんの行動の意味にもある程度回答を導きだしているに違いない。

 ただ、それはまだ解答用紙に答えを書いただけで、本当に正解なのかは分からない状態。

 水野さんが求めているのはきっと、その解答用紙の答えだ。


「友達と答えを確かめ合うのはいいけど、本当にその答えを知っているのは問題の出題者でしょ」

「――。ふふ、そうだね」


 僕の言葉に納得がいったのか、水野さんはくすくすと笑った。


「この本、買っていく?」

「うん。買っていこうかな。水族館に行くんだし、少しくらい事前知識くらいは入れておきたい」

「なら僕も買おう。お互いに読み終えたら感想でも言い合おうよ」

「いいねそれ。やっぱり帆織くんと話すのは心地がよくて気楽だな」

「ふふ。困ったことがあったらいつでも頼ってね。これでも水野さんのクラス委員長ですので」

「それじゃあ、今後も頼らせてもらおうかな。委員長」


 お互いに微笑み合って、そして同じ本を抱えながらレジに向かう。


「……やっぱり。水族館に行くなら帆織くんとがよかったな」

「? 何か言った、水野さん?」

「ううん。なんでもないよ」


 レジに向かう直前。水野さんが何か言ったような気がして訊ねるも、しかし彼女は首を横に振った。

 そう、と気を取り直して歩き出した僕――その隣に並ぶ少女が愛し気に見つめていたことに、僕は気付きもしなかった――。



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