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学校では怖いと有名なJKヤンキーのアマガミさん。家ではめっちゃ可愛い。  作者: 結乃拓也/ゆのや
第1章 【 ヤンキーとあだ名で呼び合うまで 】
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第86話 『 この天秤は揺るがない 』

 ――遊李宅。


「ああーん。もー、また失敗しちゃったー」

「どんまいどんまい。めげずにトライしてこ」


 夏休みが始まり、数週間前に付き合い始めた俺と萌佳は、さっそく恋人の時間ってやつを満喫していた。


「ごめんね、ゆーくん。私何回も同じ所でつまずいじゃって。私ゲーム下手だー」

「全然気にしてないって。俺はゲームの上手い下手より、面白さ優先でやってるから」

「エンジョイ勢ってやつだ」

「そうそう。何事も楽しいのが一番! 萌佳だってそうだろ?」

「だねっ! やっぱ人生は楽しくなきゃ!」


 俺の言葉にこくりと頷く萌佳。以心伝心の俺たちはイエーイとハイタッチ。


「よしっ、それじゃあもうちょっとだけ頑張ってみようかな!」

「うんうん。その意気だ。萌佳のそういう根気強い所、俺めっちゃ好きだよ」

「えへへー。私もゆーくんのポジティブでいつも励ましてくれるところすごく好き!」


 お互いに好きな所を伝え合って、それが嬉しくて頬を垂らす。こういうのを世間一般ではバカップルと呼ぶのだろうが、否定はしない。萌佳が可愛いければなんでもいいのだ。

 それから再びゲーム画面に視線を落とす萌佳の傍らで、俺は彼女の懸命な努力を見届けた。


「そーいえば、本当によかったの? ……バスケ部辞めっちゃって」


 萌佳が俺を見ずに訊ねてきた。

 俺はそれに飄々とした調子で答える。


「いいのいいの。ボッチたちの前でも言ったけどさ、バスケなんていつでもできるから。まぁ、本気でやれる機会はもう来ないのはちょっと嫌だなーとは思ってるけど、あのチームじゃ俺はもう二度と本気でやることは出来なかったから」

「……わたしのせいだよね」


 萌佳の声音がワントーン落ちた。

 明るい雰囲気から一変、暗い空気を漂わせる萌佳。見れば操作ボタンを押す手も止まっていて、ゲーム画面のキャラクターがその場で足踏みをしている。


「なーに言ってんの。萌佳のせいじゃないから。これは絶対に」

「…………」


 俺はふっと笑うと、そのまま萌佳をぎゅっと抱きしめた。

 俺の腕の中に、萌佳がすっぽりと収まる。


「萌佳のせいじゃない。原因は俺にある。だから萌佳は気にせずに、いつもみたく可愛い笑顔見せてよ」

「でも、カレシ(ゆーくん)が辛いのにカノジョ()だけ笑うなんてできないよ」


 萌佳は優しい。だから、恋人である俺を気遣って一緒に傷を背負おうとする。

 でもそれは、萌佳の勘違い。

 俺は一度萌佳を放すと、笑みを浮かべながら問いかけた。


「見て、萌佳。俺は今、辛そうな顔してる?」

「……してない、ように見えるかな」

「だろ?」


 答えた萌佳を俺は再びぎゅっと抱きしめた。


「大正解。俺は辛くもなんともないし、何なら部活辞めて清々しいまである。だって部活続けてたら、萌佳と夏休み満喫できなかったもん」

「――――」

「俺、萌佳が思っている以上に萌佳のこと超好きだから。バスケは好きだけど、プロとか全国目指してる連中みたくこれ一本に全部掛けてた訳じゃない。楽しく本気でやれればいいって思っただけ。だから萌佳と過ごせる時間とバスケを天秤にかけた時、どっちが大事かはすぐに分かった」

「……ゆーくん」


 大切な恋人を抱きしめながら、俺の想いをカノジョに吐露していく。

 そして、その気持ちは嘘ではなく本音だと証明する為に、萌佳の唇に自分の唇を重ねた。


「「――んっ」」 


 軽く触れ合って、すぐに離れる。


「萌佳と過ごす時間の方が、俺には大事。だから萌佳は心配なんかしなくていいし、気にしなくてもいい。萌佳に暗い顔は似合わない。笑ってる顔が百倍可愛いんだから、いつも見たく笑って」


 萌佳の両頬を軽く抓んで、無理矢理笑みを作らせる。

 それに、萌佳何度か目を瞬かせたあと、へへっと笑って。


「そっか。うん。分かった。ゆーくんがそういうなら、もう気にしない」

「あははっ。やっぱ、萌佳は笑った顔がめっちゃ似合わうわ」


 破顔した萌佳にはもう暗い雰囲気はなく、いつもの明るく可憐な彼女に戻っていた。

 それから萌佳は両脇を引き締めると、


「よしっ、それじゃあ今年の夏休みはたっくさん思い出作らないとだね!」

「当然! 海も川も山も全部行こうぜ。花火大会も夏祭りもさ。……あっ、何なら旅行すんのもありか」

「いいねそれ! ゆーくん天才だよ!」

「ふふーん。そうだろ、そうだろ。もっと褒めてくれていいぞ~」

「ゆーくん天才! 最高! 唯一無二のカレシー!」

「いやぁ。こんなに可愛いカノジョにおだてられて木に登らないカレシはいないな~」

「言い回しも面白―い!」


 俺たちバカップルの夏休みはまだまだ始まったばかり。

 今年の夏は、きっと人生で一番充実した夏になる。そう確信できるのはやはり、萌佳といるからだろう。


「……ボッチも天刈さんと上手くやってればいいんだけど」


 俺の充実した夏休みの中で、唯一気掛かりなことは、恋愛初心者の親友が己の自覚していない意中の相手といい感じになれているかどうか、それだけだった。


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