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学校では怖いと有名なJKヤンキーのアマガミさん。家ではめっちゃ可愛い。  作者: 結乃拓也/ゆのや
第1章 【 ヤンキーとあだ名で呼び合うまで 】
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第81.5話 『 夏休みの前に。最高の青春 』

 本格的に暑くなる季節に移行すると始まる恒例授業といえば、そう、プールである。


「あばば……」

「せんせー! ボッチが溺れてるー⁉」


 そんな訳で僕ら1年2組の男子、そして4組の男子は合同でプールの授業を受けていた。

 ちなみに、女子は水泳の授業はなく、体育館でバレーボールの授業中だ。といってもアマガミさん曰く「ほとんど自習変わんねえ」らしいけど。


「おーい。ボッチ息してるかー?」

「ぷはっ……ありがと、遊李くん」


 遊李くんに腕を引っ張り上げられ、なんとか水中から脱出できた僕。


「ボッチ氏、泳げないのだから無理はしない方がいいでござるよ」

「だね。でも今日はなんだかいける気がしたんだけどなぁ」

「その謎の自信に満ち溢れた精神だけは賞賛するけどさ、泳げないって分かってるのにビート板なしは無謀よ」

「智景―。ビート板持ってきたぞー」

「うぅ。この中でビート板なの僕だけだよぉ」


 泳ぎながらビート板を持ってきてくれた海斗くんにお礼をいいつつ、僕はしくしくとビート板を抱く。

 中学三年間同じクラスだった海斗くんたちは水泳での僕の扱い方に慣れているだけあって、他のクラスメイトたちと違って冷静に対応していた。


「いやぁ。こうして学校のプールで溺れるボッチを見ると夏が来たって感じがするわ」

「なにその風物詩。甚だ不服なんですけど」

「ボッチ氏には悪いですがこればかりは遊李氏の意見に同意ですな。毎年無謀にもビート板なしでチャレンジするボッチ氏は、我々にとってはもはや見慣れた光景と化してしまったでござる」

「中三の時は先生も万策尽きて智景だけ浮き輪持ってきていいって許可出した時は男子全員腹抱えて笑ったよな」

「もう! 人の黒歴史掘り返すのやめてよ!」


 これも、付き合いが長いからこそできる会話。

 僕はぷかぷかと水に浮かびながら、笑う三人にむっと頬を膨らませる。


「さてと、海斗も合流したことだしどうするか。今年こそビート板なしで泳ごうとする智景を猛特訓するか、それとも他の連中みたく遊ぶか」

「拙者は海の中を漂うクラゲがごとくまったりするに一票」

「却下に決まってじゃん。俺はそんな誠二を沈めるに一票」

「お前イジメ認定されても文句言えないからなそれ。俺は誠二の案に一票」

「僕も消去法で誠二くんの案に一票」


 多数決の結果誠二くんの案に決まり、僕らは早速プールで海を放浪するクラゲが如く漂い始める。


「……なぁ、ゲームしね?」

「あぁ、何だよ急に」


 ものの数秒でこの状況に飽きた遊李くんが、ぽつりとそんな提案を僕らにしてきた。


「どうせまた誰かを沈めたら勝ちみたいなろくでもないゲームだろ。大人しく浮いてろ」

「やだよつまんねぇ。ほら、あそこに水鉄砲あるじゃん」

「は? そんなもんどこに……なんであんの⁉」

「先生が用意したらしい」


 遊李くんが指さした方向に僕ら三人揃って振り向くと、テントの下に設置された長椅子に大量の水鉄砲が用意されていた。そういえば、ちらほらとだが水鉄砲で遊んでいる生徒が見える。


「プールの授業っつても半分は自由な訳じゃん。それで先生が気遣って用意したみたいよ」

「先生、生徒の心分かり過ぎだろ」

「だからゲームしようぜ。二チームで別れて水鉄砲打ち合うゲーム」

「FPSみたいな感じ?」

「そうそう。先に二人当てられた方が負け」


 それは確かに面白そうではあるけど。


「でも僕と組む人は貧乏くじ引くみたいなもんだよ。僕、ビート板なしじゃまともに動けないもん」

「じゃあボッチは三回まで当たってOKってルールにすればいいじゃん」

「いやいや。智景エイム最強なんだからそんなハンデ付けたら絶対智景のチームが勝つに決まってんだろ」

「僕がエイム得意なのはあくまでゲームの中であって現実は関係ないよ」

「「ダウト」」


 僕がそう言うと、海斗くんたちが抗議するようにジト目を向けてきた。


「それに関しては異議ありだね」

「この中の全員、智景がエイムザコだと思っていない。何故なら……」

「我ら一同、ゲーセンでボッチ氏のシューティングゲームの腕を見ているからでござる」

「……あはは」


 三人の言い分に、僕は思わず苦笑い。

 たしかに、シューティングゲーム全般は得意だ。家庭用しかり筐体用しかり。


「中学の頃遊びに行ったVRバーチャルリアリティーゲームイベントで、未だ誰もがクリアできなかったステージをクリアした伝説の男が何言ってんだ」

「俺たちは忘れてないからね。ボッチがまるで魔王を倒して帰還した勇者が住民たちから拍手喝采で迎えられた如く他のお客さんたちに拍手されてたことを」

「拙者はリアル黒の剣士キ〇トを見たかと思ったでござるよ」

「大袈裟だよ! というか、あれは皆でクリアしたやつじゃん!」

「「いや、拍手されてたのはお前 (ボッチ氏)だけだった」」


 三人からジト目向けられる僕。多勢に無勢という状況に僕は歯噛みするしかなかった。

 でもやっぱり、ゲームと現実は違う気がする。それにここは足場のない水の中。そして僕はカナヅチ。いわば彼らが妬む性能が大幅に低下した状態で戦うということだ。ここまで弱体化を受けてなおまともに戦えるのはアマガミさんか魔王くらいだろう。


「ビート版装備。水中戦。これらを以てして俺たちはようやく智景と互角なわけだ」

「弱体化が過ぎない? やるならせめて僕にハンデちょうだいよ」

「ないない。人並みのステータスに落ちたボッチなら誰がチーム組んでも同じチームレベルになるっしょ」

「えぇ、絶対均一じゃないよ。レベル90の勇者のパーティーにレベル1のスライムが前線で戦ってるみたいなもんだよ」

「ふふっ。ならばついに拙者が現実でも活躍する日が訪れたということになるわけですな」

「おい、少しはスライムの意見を聞いてくれよ」


 あ、これはどうやら僕以外は全員やる気みたいだな。

 僕の意見は一切聞かずに、遊李くんたちが準備を始めていく。


「じゃ、俺水鉄砲取って来るから、その間海斗たちはアップしててー」

「帰ってきたらチーム決めするからなー」

「分かったー」


 ばしゃばしゃと音を立てながら、水鉄砲を取りに向かった遊李くん。


「はぁ。本当にやるんだね」

「いいじゃん。授業で遊べるのなんて体育くらいなんだし。ぱーっと遊ぼうぜ」

「そうでござるそうでござる。息抜きは大事でござるよ」


 ぱしゃぱしゃと軽く泳ぎながら笑う海斗くんと誠二くん。そんな二人を見て、僕も覚悟を決める。


「よしっ。やるとなったらとことん全力でやらないとねっ」

「その意気だボッチ。お前の最強エイム力見せつけたれ」

「ボッチ氏と同じチームだったら心強い味方ですな」

「期待外れでも文句言わないでね?」


 両脇を引き締める僕を見て、二人はニカッと笑った。

 それから遊李くんが水鉄砲を持ってきて、チームを決めて――僕らは青春を謳歌する。


「あははっ! 結構楽しいね、水鉄砲で打ち合うのも」

「うおっ⁉ あっぶね。おいっ、誠二! ボッチ止めろ! アイツ自信ねえとか言っておきながら、的確に攻撃してきやがる! しかも全弾顔面!」

「ムリムリムリムリムリムリでござる! なぜ弱体化して尚こんなに正確に顔面を打ってこれるでござるか⁉」

「……つか、なんか水弾多くね⁉」

「ふはは! どうだ見たか! これが俺の最強兵器、ボッチ・ザ・バーサーカーだ!」

「あっ! おい! 智景に気を取られて分かんなかったけど、お前二丁拳銃使ってやがんな⁉ 卑怯だぞ!」

「水鉄砲持ってきたボーナスってやつさ。これで海斗たちを蹂躙……ぐああああ! なぜ後ろから攻撃が⁉」

「大変だ! ボッチが溺れてる⁉」

「「なんでえ⁉」」

「……あばばば」


 もうすぐ夏休み。その前に、僕らは学校で最高の思い出を作るのだった。



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