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学校では怖いと有名なJKヤンキーのアマガミさん。家ではめっちゃ可愛い。  作者: 結乃拓也/ゆのや
第1章 【 ヤンキーとあだ名で呼び合うまで 】
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第76話 『 アマガミさんとお泊り会① 』

 突然の豪雨により急遽アマガミさんが僕の家に泊ることとなった。

 最初はお互い緊張からかぎこちなかったものの、次第に普段の僕らに戻っていき、


「ほい。こんな感じでいいか?」

「グッジョブです。アマガミさん料理できるんだね」


 今は二人で夕飯の準備をしていた。

 僕が親指を立てると、アマガミさんは満更でもなさげに鼻をこする。


「ふん。こんくらいあたしでもできるわ。ボッチはあたしを舐めてる」

「若干大雑把な部分はあるけどね。でもそれもアマガミさんが手伝ってくれたっていう何よりの証拠だから、僕は気にしないよ」

「むぅ。それはそれで腹が立つな。うし、もうちょっと丁寧に切ってやるか」

「いやもう切るものないから。ちょっと冷蔵庫漁って切れるものないか探すの止めてくれる?」


 そんな一幕がありつつも、夕飯の肉じゃがが無事に完成。

 夕食後はもはや定番となったソファでゆったりとした時間を過ごし。


「ボッチ。手」

「はい」


 これももはや日課になっていて、アマガミさんが僕の手を要求してくる。回数はそれなりに重なっているものの、やはり未だに女子と手を繋ぐという行為に慣れがくることはなく、心臓の音がドクドクと早くなる。

 しかしそれは彼女も同様で、僕の手を要求した顔にはわずかに朱みが帯びていた。

 緊張は未だ拭えない。それでも、僕らは互いの温もりを求めて手を握り合う。

 今日は、いつもより長く。


「…………」

「――――」


 この時間は、いつも口数が少なくなってしまう。

 ただ目の前の流れる映像を眺めながら、僕はアマガミさんの、アマガミさんは僕の手の温もりに意識を注ぐ。無意識にきゅっと強く手を握ると、アマガミさんは無言のままきゅっと強く握り返してくれた。


「……僕、アマガミさんの手、好きだよ」

「そっか」


 ぽつりと、呟くように伝えれば、彼女は素っ気なく返した。


「……あたしも、ボッチの手、好きだ」


 それから、精一杯に僕の気持ちに応えようとする。

 それがとても愛らしくて、僕は思わずくすくすと笑ってしまう。

 そんな僕を見て、アマガミさんは不服気に口を尖らせる。

 この時間が、たまらなく愛しくて、幸せだと感じて。


 ――いつまでも続けばいいのにと思ってしまう。


 ***


 21時前。


「ふぅ。上がったぞ~」


 わしゃわしゃとタオルで髪を拭きながらリビングに戻ってきたアマガミさん。

 お風呂上がりの濡れた髪に上気した頬が妙に艶めかしく思わずドキッとしてしまいながらも、僕はソファから立ち上がって彼女の下に寄った。


「お湯加減どうだった?」

「最高だった。あっとそうだ。ボッチ、あたしが入る前に入浴剤入れてくれたろ」

「うん。バイト先の人に貰ったやつ使ったんだけど、お気に召さなかった?」

「その逆。超いい匂いしてテンション上がったわー。今のやつってあんなにいい匂いすんだな」


 入浴剤のおかげか、アマガミさんからはすごくいい匂いがした。それこそ無意識に男としての本能が刺激されてしまうくらいに。


「(アマガミさんにリラックスしてほしくて入浴剤使ったんだけど、ちょっとこれはマズイかも)」


 僕はできるだけ息を止めて、彼女に視線を合わせないようにする。


「そうだ。シャツとパンツも貸してくれてありがとな」

「サイズはどう?」

「へへ。ちょっとぶかぶかかも。こうして着てみると、やっぱりボッチって男なんだよなー」


 アマガミさんは今、僕のシャツとズボンを履いている。着替えなど当然持ってきていないからその場凌ぎで貸したのだが、これも男心を擽る状況だった。


「(彼シャツってこんなに破壊力すごいのか)」


 なんだか本当にアマガミさんが自分の恋人になった気がして、頭がおかしくなってくる。

 気が動転している僕を尻目に、アマガミさんがその場でくるりと回転したり、僕のシャツの匂いを嗅いだりしている。


「へへ。ボッチの匂いがする」

「――すぅぅぅ」


 落ち着け僕⁉ 

 僕の服の匂いを嬉しそうに嗅ぐアマガミさん。……この人、なんで今日に限って超可愛いの?

 これが入浴剤のリラックス効果によるものなのか、はたまた湯船に浸かって緊張が解けて素の彼女になっているのかは分からない。けど、いずれにせよ可愛いが過ぎて吐血寸前だった。


「(落ち着け僕。アマガミさんは友達。アマガミさんはヤンキー)」


 下手なことしたら殺されると自分に必死に言い聞かせて、冷静さを保とうとする。

 けれど、そんな僕の胸裏など知らないアマガミさんは、


「ふぃぃ。にしてもちょっと湯船につかり過ぎたかも。あっちぃ」


 完全に我が家いる気分になっていて、ソファーにどかっと座ると股を大きく開いて背中をぐっと仰け反らせた。それにより彼女の豊満な双丘がより強調され、白く艶めかしい生足が露になる。

見てはいけないものを見てしまった気がして、僕は思わず「ごふっ」と拭いてしまった。


「うおっ汚ねぇ。なんだボッチ。急に吹き出して?」

「な、なんでもないよ」


 僕は慌てて視線を逸らして首を横に振った。

 そんな僕の不審な態度にアマガミさんは「そうか?」と怪訝に声をひそめるも、とくに気することはなく手をうちわにして仰ぎ始めた。


「……あちぃ」


 と呟くアマガミさんを、僕はチラチラと見る。


「(これ、アマガミさんより僕の方が精神的にキツイのでは?)」


 アマガミさんはその、思ったよりあれが大きい。あれ、というのはつまり、お胸であられる。

 これまでは制服姿の彼女を見ることが多かったから気にならなかったが、今のラフな格好は正直言ってそっちを意識してしまう。しかもシャツの生地が薄いから余計に大きく見える。意識しないように努めても、ごめん。無理だ。


「(はぁ。最低だな僕って)」


 アマガミさんが困っているから助けたかったのに、これでは彼女を泊めた理由に邪な感情があったと咎められても否定できなくなってしまう。

 一旦冷静になる為にも熱い湯船に浸かろう。と僕は風呂場に向かった。


「それじゃあ、僕もお風呂に入って来るね」

「いってらー」


 宿泊の提案をした時の動揺ぶりはどこへやら。すっかりいつものテンションに戻ったアマガミさんは、ひらひらと手を振りながら僕を見送る。

 僕も手を振り返してリビングから出た瞬間。その場にへろへろと座り込んだ。

 それから大きく、殊更に大きな吐息をこぼして、


「……今日のアマガミさん。ヤバすぎるな」


 破壊力満点のアマガミさんに、果たして僕は今夜耐えられるだろうか。

 とりあえず湯船に浸かって頭をリセットしようとするも、その湯船にアマガミさんが浸かっていたことに気付いた僕は、今夜はシャワーで済ませることにしたのだった。



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