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学校では怖いと有名なJKヤンキーのアマガミさん。家ではめっちゃ可愛い。  作者: 結乃拓也/ゆのや
第1章 【 ヤンキーとあだ名で呼び合うまで 】
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第75話 『 アマガミさんとお泊り 』

「とととと泊るって……そんなのダメだろ! つ、付き合ってもない男女が同じ屋根の下で寝るなんて……ボッチのスケベ! 変態! エロ助!」 


 顔を真っ赤にして叫ぶアマガミさん。

 彼女の気持ちもよく理解できる。だって提案した僕自身が動揺してるんだから。

 それでも僕は冷静に状況を俯瞰しながらアマガミさんの説得を試みた。


「でもこんな状況下で外に出たら間違いなく風に吹っ飛ばされると思うよ。アマガミさんフィジカル最強だから強風くらいなら問題なさそうだけど、もし万が一にでもコンクリートとか瓦が頭に直撃したら流石のアマガミさんも即死でしょ」

「その前にキャッチすれば問題ねえだろ」

「反射神経も最強だもんねアマガミさんは」

 アマガミさんならできそうな気がするけども、

「でもびしょびしょになるのは確定でしょ」

「それくらいどうってこってねえ。自慢じゃねえけど、あたしは体調崩したこと一回もねぇんだ」

「でも電車止まってるのは確定してるよね。どうやって帰るつもり?」


 アマガミさんが「うぐっ」と呻く。


「この大雨と強風でしかも雷まで鳴ってるカオスな状況下で帰す僕は心配でたまらないんだけど。それでも帰りますか」

「……うぅ。でもぉ」

「誓って変な事は致しません。だから今晩は僕の家に泊っていってください」


 僕はただただ頭を下げる。

 今、アマガミさんを帰すのは流石に危険すぎる。どれほど彼女が頑丈であろうと、僕にとってアマガミさんはやはり普通の女の子だ。だから、危険な目には遭ってほしくない。

 ただひたすらに頭を下げて懇願を続けていると、アマガミさんはやがて諦観したように「くっそ」と後頭部を掻きながら、


「……泊るとして、メシはどうすんだよ」


 これが最後の抵抗は分からないけど、そんなことを訪ねてくるアマガミさん。

 僕は顔を上げると、そのまま彼女を連れて冷蔵庫に向かった。


「こういう時期は天気が変わりやすいから、念の為買い置きはしてあるんだ」

「流石はボッチだな。備えあれば憂いなしってか」

「凄い。よくそんなことわざ知ってるね」

「バカにしてるだろ? こんくらい知ってるわ」

「あてっ」


 アマガミさんにゲンコツをもらいつつ、僕は冷蔵庫の中身を確認する。


「牛肉があるし、ニンジンと玉ねぎとジャガイモがある……アマガミさん。夕飯はカレーと肉じゃがどっちがいい?」

「じゃあ肉じゃががいい!」

「うん。なら今晩の食事は問題なさそうだ」

「あれ、これ完全に泊る流れになってね?」

 

 僕はほっと安堵して、アマガミさんに振り向く。


「夕飯は問題ないし、デザートのアイスもあります。……どうしますか?」

「……はぁ。これは帰るって言っても意地でも連れ戻されそうだな」


 ガシガシと頭を掻くアマガミさん。はぁ、と重い息を吐くと、


「わーったよ。泊る。泊ればいいんだろ」

「――っ! よかったぁ」

「ほんとにボッチは心配性だな。……でも、おかげで寂しくはなさそうだ」

「? どうかしたの、アマガミさん?」


 一瞬アマガミさんの双眸に寂寥が垣間見えた気がして顔を覗けば、しかしすぐにそれは霧散した。そして、アマガミさんは「なんでもねえよ」と僕の頭をうりうりと撫でてくる。


「つーか、そんなことよりも、マジで変なことしたらボッチといえどぶっ飛ばすからな?」

「断じてしません。あ、そうだ。アマガミさんのご家族に泊ることになった経緯を説明したいんだけど、電話させてもらってもいいかな」

「……あー。いいよ。それはあたしの方でしとく。だからボッチはもうちょい何か作れるか冷蔵庫見ててくれ。このあたしが泊ってやるんだから、豪勢な夕飯にしろよ?」

「ふふ。分かりました。アマガミさんに喜んでもらえるよう、できる限り最善を尽くします」

「ふっ。楽しみにしてる」


 僕の頭をわしゃわしゃと撫でてから、アマガミさんは家族へ電話するために一度リビングから出て行った。

 その背中を見届けた僕は、再び冷蔵庫に視線を戻す。


「――嘘吐いてごめんな。ボッチ」


 パタン、と扉が閉じる直前。彼女から小さな謝罪がこぼれたことを、僕は知る由もなかった――。


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