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学校では怖いと有名なJKヤンキーのアマガミさん。家ではめっちゃ可愛い。  作者: 結乃拓也/ゆのや
第1章 【 ヤンキーとあだ名で呼び合うまで 】
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第74話 『 お家デートにハプニングはつきもの 』

 昼食を挟み午後。

 ゲームばかりするのも集中力が続かないという事で、僕とアマガミさんはリビングで映画を見ていた。


「おお。やっぱアメコミ映画はおもしれーな」


 さくさくと用意したポップコーンを食べながら、映画に夢中のアマガミさん。

 そして僕はというと――映画ではなくアマガミさんの可愛い光景を拝んでいた。


「(前から思ってたけど、アマガミさん、ぬいぐるみ抱く癖あるんだよなぁ)」


 僕がそれに気づいたのはつい最近。アマガミさんが部屋で漫画本を読んでいる時だった。

唐突にベッドに手を伸ばして何かを探し始めて、何事かと凝視する僕を無視して枕を掴むと、そのまま太ももとお腹に挟んでクッションにしたのだ。

 それが何回も続いたので、ある日試しに購入した大きめのサメのぬいぐるみを僕のベッドに置いてみたところ、やはり枕の時と同じようにクッションにし始めた。

 どうやらぬいぐるみ(というよりフワフワなもの)を抱くのは無意識なようで、アマガミさん本人はそんな癖がある事実に全く気付いていないよう。なので、いつも「あれ、なんだこのサメ?」と驚いている。

 僕はちょっとだけ罪悪感がありながらも、アマガミさんのそんな可愛い癖を堪能しているというわけだ。


「(無意識にぬいぐるみ抱きしめる癖があるとか、そんなの可愛すぎるでしょ)」


 控えめにいって尊い。何時間でも眺め続けられる光景だ。

 学校ではいつも眉間に皺を寄せて怖い顔のアマガミさんも、僕の家ではすっかり気が緩んで普通の女子だった。


「うわー。この敵めっちゃ強いじゃねえか。どうやって勝つんだろうな」

「……すぅ」


 映画に夢中のアマガミさんは、ぬいぐるみも無意識だが、僕の腕も無意識に掴んでくる。

 もはや彼女の可愛さに心臓が爆発寸前なのだが、僕はここで叫んでは気付かれると察して懸命に堪える。


 ……この人。日が経つごとに可愛くなっていってる気がするんだけど。


 そう思うのは単に気のせいだろうか。あるいは、僕が彼女に惹かれているからだろうか。

 いずれにせよ、家にいる時のアマガミさんは――


「――めっちゃ可愛いなぁ」

「なんだボッチ。何か言ったか? ……おっと悪ぃ。いつの間にか掴んじまってたわ」


 僕の呟きに反応したアマガミさん。それと同時、夢のような一時が終わる。

 僕は『なんて凡ミスを!』と胸中で嘆くのだが……、


「――――」


 すぐにまたアマガミさんが僕の腕を掴んできた。それに思わず驚く僕。

 どうやらアマガミさん、よほど映画に夢中しているみたいだ。

 うん。そんな彼女の邪魔しちゃ悪いよね、ということで、僕はニヤケ面を抑えきれず映画に戻る。

 けれどやはり、腕に伝わる彼女の温もりに意識が向いてしまい、映画には集中できなかった。


「……ま、楽しければなんでもいいよね」


 コロコロと変わるアマガミさんの表情をすぐ間近で見ながら、僕は微笑。

 今ここにあるのはただ幸せな空間と時間。

 けれど僕は知らなかった。

 僕らが映画に夢中になっている間に、外の天気が刻一刻と崩れ始めているということを。


 ***


「……マジか」


 夕方。映画鑑賞を終えた僕らは現在、リビングの窓で立ち尽くしていた。

 その理由は……、


「外、超雨降ってんだけど⁉」

「だねぇ。朝あんなに快晴だったのに、急に天気崩れたみたいだ」


 そういえば午後から雨が降る、みたいなことを昨日のニュースで言っていた気がする。

 土砂降りの外に、僕は失笑。アマガミさんは嘆きながら頭を掻きむしっていた。


「ちっくしょー! また傘忘れた!」

「傘なら貸すよ。……でも」


 土砂降りだけならまだしも、窓を震わせるほどの強風が吹いていた。こんな状況で外に出れば、傘なんて一瞬で折れてしまうと思う。


「うわ最悪っ」

「どうしたの?」

「電車止まってる」


 スマホで電車の運行状況を確認していたアマガミさんがその場で絶望していた。


「もう少し待ってれば雨弱まるかな」

「……ダメみたい。22時頃までこの大雨と強風続くって」

「マジか……うわっ!」


 お互いに詰みの状況に立ち尽くしていると、突然空がピカッと光り、雷鳴が響いた。


「ビックリしたぁ」

「雷まで鳴り始めたね」

「この時期の天気はマジで変わりやすいな」


 どうやって帰るかと途方に暮れるアマガミさん。

 こういう時親がいてくれれば車で送り届けられて心強いんだけど、生憎、僕の両親はただいま絶賛海外出張中だ。

 そして、こんな大荒れた天気の中で女の子を一人で帰すのは危険ということは一目瞭然だろう。


 ……一つだけ、この状況を解決できる案がある。


 しかし、この提案は果たして最善なのだろうか。ネ〇ロ会長に「そりゃ悪手じゃろ、蟻んコ」って呆れられる気がする。


 ……でも、もうこれしかないよなぁ。


 僕は覚悟を決めると、空を見つめながらアマガミさんに提案した。


「アマガミさん」

「なんだよぉ」

「もし、もしだよ。アマガミさんさえ嫌じゃなければだけど……」

「なんだ勿体ぶった言い方して。言うならさっさと言ってくれ」


 じゃあ、と一度息を整え、僕はアマガミさんに告げた。


「今日、僕のお家、泊っていきませんか?」

「――ひょえ?」


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