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学校では怖いと有名なJKヤンキーのアマガミさん。家ではめっちゃ可愛い。  作者: 結乃拓也/ゆのや
第1章 【 ヤンキーとあだ名で呼び合うまで 】
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第72話 『 アマガミさんとボッチのベッド 』

 ――休日。

 家のインターホンが鳴ると同時、僕は廊下を急ぎ足で駆け抜けた。

 玄関でサンダルを履いて扉を開けると、僕は門前で待つ彼女に大きく手を振った。


「おはよう、アマガミさん!」

「うっすボッチ」


 トタトタと駆け寄ると、アマガミさんは「相変わらず朝から元気だな」と呆れた風に微笑を浮かべた。


「そりゃ元気にもなるよ。だって今日はアマガミさんと一日ずっと一緒にいられるんだから。わくわくし過ぎて眠れなかったくらいだよ!」

「完全に小学生じゃねえか。どんだけあたしと遊ぶの楽しみにしてたんだよ」

「これくらいかな!」


 僕は両手をいっぱいに広げてこの高揚を表現してみせた。それに、アマガミさんはまた苦笑。

 そう。今日はなんと、アマガミさんが一日中僕の家で遊ぶこととなったのだ。

 そんなの、嬉しくない方が無理だよね。

 僕の無邪気な笑みに、アマガミさんは「大袈裟」と鼻で笑って一蹴する。


「たかがボッチの家でゲームするだけだってのに、お前は張り切りすぎなんだよ……と、忘れる前にこれ渡しとくわ」

「なにこれ?」


 突然アマガミさんから紙袋を渡された。


「果物。適当に見繕っておいた。今日は一日お前ん家で世話になるんだし、これくらいはな」

「ありがとう。でもわざわざ手土産なんて持って来なくてもよかったのに」

「そういう訳にはいかねぇ。それに、あたしは借りを作るのが好きじゃない。これ以上ボッチに貸しを作ったら、マジで一生掛けても返しきれなくなる。だから素直に貰ってくれ」

「そういうことなら。うん。分かりました。有難く受け取ります。……それじゃあ、お昼ご飯の後にでも一緒に食べようか」

「あたしまで食べたら土産の意味がなくなるってのに。ま、ボッチがそれでいいならそれでいいや」


 呆れた風に嘆息して、それから柔らかな笑みを浮かべるとアマガミさんは僕の頭に手を置いて撫でてきた。


「今日は一日よろしくな、ボッチ」

「こちらこそ。今日は精魂尽きるまでゲームしようね!」

「……そこまでする気はねぇよ⁉」


 一人盛り上がる僕をアマガミさんが引いた目で見てくる。

 こうして、僕とアマガミさんの長いようで短い休日が幕を開けた。


 ***

 

 さて、部屋に着いた僕らは、早速ゲームを――すると思いきや、アマガミさんがベッドにダイブした。


「たっはー。やっぱボッチのベッドはいいな。ふかふかで良い匂いがするし、つい寝転がっちまう」


 ゲームの前に部屋でごろごろし始めるアマガミさん。

 僕の部屋に来た当初は慣れない場所と緊張でゲーム機の前から微動だにしなかった彼女だが、今では御覧の通り見事なリラックスっぷりである。

 それだけ僕の部屋を自分の部屋同然のように思ってくれていることは嬉しく思いつつも、僕は少しだけ悶々としてしまう。


「(冷静に考えたら、男一人と女一人が同じ空間にいるって相当アレな状況だよね)」


 いくら友達といえど、やはり意識はしてしまうわけで。

 意識しないよう注意しても、頭は言う事を聞かず意識してしまう。

 しかもアマガミさんは今はベッドの上にいるから、余計に。


「(夜。大変なんだよなぁ)」


 アマガミさんがごろごろしているベッドは普段から僕が眠っているものだ。故に、布団に潜り込むとその、あれだ。故意ではないが嗅いでしまうのだ。彼女の香りというものに。

 アマガミさんは甘い匂いがする。嗅いでいて不快感はない甘い香りで、むしろ僕が一番好きな香りといってもいいかもしれない。そうなると当然、彼女の香りが付いたベッドに潜ると近くにアマガミさんがいる気がして悶々としてしまうわけで。


 ――これは、相当キモイよね。


 だって僕らは友達。いくら仲がいいと言えど、ベッドにキミの匂いがついて夜眠れないんだと告白したら絶交コース間違いなしだ。アマガミさんの場合は殺される気がする。

 なので、どういう風に伝えれば引かれずに自然と察してもらえるか分からず、結局何も言えぬまま悶々とする日々が続いている。


「くんくん。はぁぁ。やっぱボッチの匂い好きだな。落ち着くぅ」


 アマガミさんは僕の気なんてそっちのけで好きなだけ匂いを嗅いでいるけど。


 ……そういうこと、ぽろっと口にするの反則だよ。


 僕もアマガミさんの匂いが好きで。アマガミさんも僕の匂いが好き。でも、僕もアマガミさんの匂い好きだよなんて言ったら「マジキモ!」と罵倒された挙句ぶん殴られる気がする。マジで男は辛いよ状態だ。


「……やっぱりアマガミさんはずるい」

「うぁ? なんだボッチ。何か言ったか?」


 僕の枕を抱きしめながら振り向くアマガミさん。そんな彼女にため息を落としながら、僕は首を横に振った。


「なんでもないよ。ほら、早くゲームやろうよ」

「だな。でももうちょっとだけごろごろしてからがいい~」

「はいはい。分かったよ。なら飲み物とかお菓子持ってくるから、それまでごろごろしてていいよ。あ、でもうっかり寝ないようにね」

「わーってるよ。ふあぁ」

「……欠伸してるし」


 ベッドの上で両手両足を上げて喜びを表現するアマガミさん。そんな無邪気な所も可愛いと思ってしまって、つい甘えさせてしまう。これは世話焼きな僕が悪いのか、はたまた可愛いアマガミさんが悪いのか。結局答えは導き出せないままこの問題は迷宮入りになってしまう。

 部屋を出て、僕は扉に背中を預けるとまた大きな吐息を一つこぼした。


「……今日、もつだろうか」


 彼女に対する想いがどんどん肥大化していっている自覚がある。

 いつ爆発するか分からない感情に、僕は今日も振り回されるのだった。



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