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学校では怖いと有名なJKヤンキーのアマガミさん。家ではめっちゃ可愛い。  作者: 結乃拓也/ゆのや
第1章 【 ヤンキーとあだ名で呼び合うまで 】
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第70話 『 海斗の相談事 』

 昨夜のゲーム集会から一夜明け、翌日。

 昼間は学生で賑わう食堂も、早朝は閑静な空気に満ちていた。


「おはよう海斗くん。ちょっと待たせちゃったかな」

「いや。俺もちょうど今来たとこ」


 食堂で待ち合わせていた海斗くんを見つけると、僕はひらひらと手を振りながら挨拶した。それに応じるように海斗くんも軽く手を振り返す。

 僕らが早朝の食堂で待ち合わせていた理由は一つ。実は、昨夜ゲーム集会が終わった後に海斗くんから『相談したいことがある』という趣旨のメールをもらったのだ。何やら真剣な相談なようで、こうして早朝かつ人気の少ない場所としてココを選んだというわけだ。


「悪いな。こんな朝早くから悩み事なんかに付き合わせちまって」

「気にしないで。僕、起きるのは早い方なのは知ってるでしょ」

「知ってる。修学旅行とお前ん家泊まった時に誰よりも早く起きてたの智景だもんな」


 朝の目覚めは他の人よりもいい方らしく、脳の覚醒も早い。修学旅行の時は皆を起こす係だったことを思いだして、海斗くんと笑い合う。

 それから椅子に座ろうとすれば海斗くんが腰を浮かせて、


「何か飲むか? 奢るよ」

「いいよべつに。それより、相談って?」


 椅子に座ると早速昨日のメールの内容に触れる僕。それに海斗くんは躊躇う仕草をみせたあと、腹を括ったように「実は」と切り出した。


「これは口が堅い智景だから打ち明けるんだけどさ」

「なにその怖い切り出し方」

「安心してくれ。決して怖い話じゃない。だから距離取らないで」

「ならいいけど、それで?」


 数センチほどテーブルから離した椅子を元に戻しながら促すと、海斗くんは急に指をもじもじし始めた。


「その……あのだな……こんなこと相談されても分かんねって言われるかもしれないけど……とにかく聞いてくれ」

「それだけ盛大に前ぶりされると怖いからちゃっちゃとお願いします」

「分かってるよ。けど、こっちにも準備ってものがなあってだな……」


 そして海斗くんはすぅ、と息を吸うと、ようやく告げた。


「その、実はさ、最近、幼馴染とよく話すようになったんだよ」


 顔を真っ赤にして吐露する海斗くん。僕は一瞬訳が分からず首を捻ったが、その幼馴染がすぐに誰か見当がつくと「あぁ」と息を吐いた。


「幼馴染って、水野さんのことね」

「そう」と首肯する海斗くん。

「そういえば海斗くんも水野さんも、幼馴染だけど全然話したことないって言ってたね」

「現実の幼馴染なんてラブコメみたいな関係にはならないもんだよ」

「でも最近よく話すようになったんでしょ?」

「……あぁ」


 嬉しそうに頬を緩める海斗くん。……こんな海斗くん初めてみたな。

 僕は友人の意外な反応に驚きつつも、話を進めていく。


「それで、相談ていうのは水野さん関係でいいのかな?」

「あぁ。智景にしか相談できなくて」

「誠二くんは嫉妬して聞いてくれず、遊李くんは絶対に揶揄ってくるもんね」

「その通りだ。あの二人に真面目な相談はできない。……それに、今の俺には智景のアドバイスが適格な気がするんだ」

「言っとくけど僕、恋愛に関するアドバイスならできないからね。そっち系なら多少揶揄われても遊李くんの方が適任だと思うんだけど」

「いや。この相談は智景。天刈と仲良くなったお前だからこそ適任なんだ」


「どういうこと?」と首を捻ると、海斗くんは「こほんっ」と咳払いしてから続けた。


「智景。お前はあのクラスでも琉莉と遜色ないくらい浮いてる天刈と見事距離を縮めてみせたろ」

「それは事実だけどいいの? 天刈さんと水野さんに名誉棄損で訴えられたら確実に敗訴だよ」

「琉莉は自覚してるし天刈なら先に手が出るよ。その場合は暴行罪で俺の逆転勝訴だ」

「ならアマガミさんの弁護人は僕がしなきゃかな」

「そこは長年の友人の味方であってくれよ」


 冗談だよ、と微笑する僕に、海斗くんは呆れたように肩を落とす。


「話を戻すぞ。智景。俺がお前に聞きたいのは、どうすればお前と天刈みたく、琉莉と距離を縮められるかなんだ」

「……えと、つまりあれかな。海斗くんは疎遠だった水野さんともっと仲良くなりたい! ってこと?」

「端的にいえばそうだな」


 真面目な顔で肯定する海斗くん。しかし僕は渋い顔をしてうめき声を上げる。


「どうすれば距離が縮まるかと聞かれても、僕がやったことはしつこくアマガミさんに絡んでいったくらいだしなぁ」

「つまり俺もしつこく琉莉に絡みにいけば仲良くなれるのか⁉」

「たぶんだけど、絶対止めた方が得策だよ。水野さん性格的に静かな人が好みに見えるし、そんなことしたら逆に嫌われかねないんじゃないかな」

「琉莉には絶対嫌われたくない!」


 バシン! と強くテーブルを叩く海斗くん。

 その反応に、僕は胸に引っ掛かる違和感を覚えた。


「……海斗くん。もしかして、水野さんのこと好きなの?」


 と聞くと、海斗くんは眉間に皺を寄せて首を捻った。


「好き……とはまた少し違う気がする。なんかあれだ。言葉にすんのは難しいけど、久しぶりに琉莉と交流関係を持てそうなのに、それを手放したくないみたいな感じかな」

「あー。その気持ち分かるー」

「? 大丈夫か智景? おーい」


 昨日の遊李くんとの会話の時もそうだったけど、僕、恋愛に対する感情が少しずつ分かってきている。

 その人といる居心地の良さやこの関係を手放したくないという感情が、自分の感情と同調リンクする感覚。以前はそんなこと微塵も共感できなかったのに、今ではその感情が理解できる。

 それも全て、アマガミさんとかけがえのない時間を過ごしたから知れたんだろうな。

 自分の成長とそんな感情を芽生えさせてくれたアマガミさんに感謝しながら、僕は海斗くんに向かって自分の胸を強く叩いた。


「よし決めた。僕は海斗くんを応援する! だから、僕ができるアドバイスを全部海斗くんに教えるよ!」

「マジで⁉」

「うん。それで成功するかは分からないけど、海斗くんの水野さんとの関係を手放したくない、って気持ちはよく分かるから。だから応援します」

「ありがとう智景。やっぱお前が親友でよかった!」

「その代わり、ちょっとでいいので、僕とアマガミさんの関係認めてね?」

「うぐっ。……しゃーねぇ、背に腹は代えられない。ちょっとだけ、一ミリくらいは認めるよ」

「それあんま認めてないよね?」


 なにはともあれ、こうして僕は海斗くんに異性と仲良くできる? かもしれない方法を伝授していったのだった。


「……そーいや、結局遊李の運命の人って誰だったんだろ?」

「そういえば聞いてなかったね。今度聞こうか」

「案外俺たちの近くにいる女子だったりしてな」

「あはは。まさかそんな偶然あるわけないじゃん」

「だよなー。それはいくらなんでも都合過るか」


 …………。

 笑い合う僕らは、お互いの顔を見つめ合うと、


「「なんかこれ、フラグ臭くね?」」


 自分たちが立てたフラグがこの後盛大に回収されることを、この時の僕と海斗くんはまだ知る由もなかった。



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