第69話 『 ボッチと定期的ゲーム集会 』
さて、本日は僕ら男子4人組によるいつものゲーム集会の日なのだが、いつもと様子が違う二人がいた。
「ちょっと海斗くん! それ敵じゃなくて僕だよ! フレンドリーファイアしてどうすんのさ⁉」
『あっ。わりぃボーっとしてた』
「調子悪いなら休めば?」
『いや悪くはない。むしろ好調だ!』
「じゃあなんで僕キルしたのさ!」
憤慨する僕に、海斗くんは申し訳なさそうに謝罪してくる。
はぁ、とため息を吐くと、それとほぼ同時に僕の耳に誠二くんの断末魔が上がった。
『ぎゃあああ! 遊李氏それ拙者でござる! なぜ同士討ちを⁉』
『あごめん。レイン返してた』
『戦闘中にレイン返すな⁉ どうりで誤射するわけですぞ!』
『めんごめんご』
『詫びる気0⁉』
こっちもか。
今日は味方が誤射しまくったせいで惨敗。僕らのキャラクターの醜態がゲーム画面に映し出されているのを見ながら、僕はゲーミングチェアの背もたれに体重を乗せた。
「二人とも、今日はどうしたのさ。疲れてるの?」
『『いや全然元気』』
『それならば何故あんな誤射を? 理解不能でござる』
誠二くんの意見に僕も同意。プレイを見ている限り、どうも集中できていないようだったから、そこを追求してみることにした。
「二人とも何かあった?」
『あったと言えばあったが、これはちょっと話づらいな』
躊躇っている海斗くん。しかし彼とは裏腹に、遊李はよくぞ聞いてくれたとでもいいたげに露骨に元気になった。
『お前たちや。ちょっと俺の話を聞いてはくれないかい』
「べつにいいけど」「つまらなくないなら」「勿体ぶってつまらなかったらアイス奢りでござるよ」
三者三葉に聞く姿勢を取ると、遊李くんは上機嫌に語り始めた。
『実は俺、ちょっと前に奇跡みたいな運命の出会いをしてしまったかもしれないんだ』
『ふーん。よかったじゃん』
「おめでと~」
『さ、早く次のバトルの準備しましょ』
『あれ思ったより興味ない感じ⁉ 俺にとっては人生最大のビックニュース告白したつもりだったんだけど⁉』
僕らの素っ気ないリアクションに驚愕する遊李くん。
そそくさと次のバトルの準備を始めようとする僕らを、遊李くんは『ちょっと待った!』と慌てて引き留めた。
『いやホント! 冗談じゃないんだって! これもうマジ! ガチ中のガチのやつだから! お願いだから少しは興味持って!』
『こっちはお前の恋愛話はもう聞き飽きてんの。どうせまた付き合って数か月で別れるんだろ』
『まだ付き合ってないし! 友達になったばっかだし!』
『まだってことはいずれ付き合うことが確定しているみたいな言い方でござるな。これは拙者にとっては胸クソ案件。聞くだけ耳が腐るでござる』
『おい誠二明日覚えてろよ! 会った瞬間チョークスリーパー決めるからな!』
じゃあ明日は学校休む、と返す誠二くんに苦笑しつつ、僕は遊李くんに訊ねる。
「海斗くんと誠二くんは興味ないみたいだけど、僕はちょっと興味あるかも。運命ってことは、余程何かの相性がいいってことだよね?」
『流石は現在クラスのヤンキーとラブコメ街道真っ只中にあるボッチくん! キミは裏切らないって信じてた!』
「やっぱ聞くの止めるね」
『冗談だから! ボッチくんは天刈さんと普通に仲良しなだけだもんね! ごめんね変なこと言って。だから俺の話聞いて!』
僕は大きくため息を吐きつつ、「それで」と促す。
「その人とはどういう所が相性よかったの? というか相手の性別は?」
『女子だよ。そして超可愛いの』
遊李くんは誰でも可愛いっていうけど、超とまで付け加えるのは珍しいな。そんなに可愛い人なんだ。
脳裏でどんな人か妄想していると、遊李くんがその人との出会いを語り始めていた。
『その子とは廊下で偶然すれ違った時に意気投合して仲良くなったんだけどさ。もうね、好きなものとか趣味が双子かよってくらい合うの。話してて気楽だし、何より会話がめっちゃ弾むんだよ!』
なるほど。つまり僕とアマガミさんみたいな感じか。それはとても居心地がよさそうだ。
「――――」
そんな感情が分かるようになった自分に驚いていると、誠二くんの失笑が聞こえて慌てて我に返る。
『そういっていつかは『ノリが合わなかった』と言って別れるのがオチでござる』
『ぶっぶー。彼女に限ってそれはありえませーん。何ならどこかのござる系オタクより会話が盛り上がるし楽しいですー』
『誰がござる系オタクでござるか!』
「それ自覚ある人の返し方だよ誠二くん」
たぶん顔を真っ赤にして抗議しているであろう誠二くんを想像して、僕は思わず苦笑い。
それからは約一時間ほど、ゲームそっちのけで雑談が続いて。いや、雑談というよりは、誠二くんと遊李君の口喧嘩が続いて。
『そもそも学生の本分は勉強でござる! 恋愛する暇があるなら少しはまともに勉強してみたらどうですかなバスケバカ』
『カッチーン。あー怒った。明日の体育のバレーで誠二に顔面スパイク決めてやるわ』
『それただのイジメだから!』
益体のない会話を弾ませて、僕らは目尻に涙を溜めながら笑い合う。
――けれどその中で一人だけ、何か思い詰めていたように沈黙していた友達に僕らは気付くことはなくて。




