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学校では怖いと有名なJKヤンキーのアマガミさん。家ではめっちゃ可愛い。  作者: 結乃拓也/ゆのや
第1章 【 ヤンキーとあだ名で呼び合うまで 】
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第68話 『 恋は盲目。運命は突発的 』

「ふっふーん」


 上機嫌に鼻歌をうたいながら廊下を歩いていると、友達のりっちゃんに苦笑された。


「アンタ、最近えらく人生楽しそうに見えるねぇ」

「うん。すごく充実してる!」

「恋人もいないのにリア充してんのかよ。うらま……でもないか」

「えぇ。なんで?」

「だってアンタが楽しいのってあれでしょ。天刈さんと話せてるからでしょ」


 呆れ気味に言ったりっちゃんに、私は食い気味に強く頷いた。


「そうなの! 天刈さんと話すのすごく楽しいんだ!」

「マジで理解できねぇ」

「前はすごく近寄りがたくて話せなかったんだけど、でもいざ話してみるとけっこう話しが弾むんだよ」

「いや。たぶんそれはアンタがぐいぐい来るせいで、天刈さんは応じざるを得ないんじゃないかな」

「そんなことないよ! 天刈さん。口ではうぜぇとかめんどとか言いながらも、絶対に私の話をちゃんと聞いてくれて答えてくれるんだよ」

「……そう聞くとあれだね。なんだかちょっと対人コミュニケーションが苦手……いや、あまり好きじゃないけど対応はする人に見えてくるね」


 流石はりっちゃん。鋭い分析。


「極めつけは先週ね。なんと1週間、私とお昼ご飯食べてくれました!」

「いやその光景観てたから私知ってるし。でもそれって、ボッチくんが委員会の仕事で一緒にいられないから、仕方なくもえっぴに付き合ってただけじゃないの?」

「それでもいいわ! 天刈さんとお話ができるなら、私は愛人ポジションも喜んで受け入れるわ!」

「ベタ惚れだねぇ。たかが体育の時に助けられたってだけで」


 はぁ。分かってない。

 私は大きくため息をこぼすと、乙女心がまるで分かっていない親友に向かって言った。


「りっちゃん。女の子っていうのはね。不意打ちとか突然の出来事に弱いの。あの時私を助けてくれた天刈さんは私にとっては白馬の王子様だったんだよ!」

「いや天刈さん同性だから。……まぁ、見た目ちょっといじれば王子っぽく見えなくもないけど」

「そうなの! 天刈さん。顔は可愛いけど目つきとか鋭いでしょ。そこら辺のギャップがもう堪らなくて。あぁぁ。あの目で睨んで欲しいぃ」

「限界オタクが過ぎるでしょ」

「それくらい天刈さんのことが好きなのっ」


 すっかり彼女の虜だねぇ、と失笑するりっちゃん。

 えぇ。そうですとも。私は天刈さんの虜ですとも。それこそ、ボッチくんに負けないくらい。


「皆も天刈さんと仲良くなればいいのになぁ。すごーく勿体ない」

「いやあの近づくなオーラ発してるヤンキーに臆せず絡んでいけるアンタとボッチくんが特殊なんだよ。うちのクラスの委員長二人は変人だね」

「ひっどーい。ボッチくんはともかく私は常識人だよ」

「そこで何の躊躇もなくボッチくんを切り離せるアンタはやっぱ恐ろしいわ。案外類友ってやつなんじゃないの? アンタと天刈さん」

「そうかな!」


 それはとても光栄なことじゃない⁉ だって、あんなにカッコいい天刈さんと私が似てるってことでしょ。似てる要素なんてひとつもないと思ってたのに。

 りっちゃんの言葉に上機嫌になってまた鼻歌をうたいだす私。そんな私をりっちゃんは「重症だねぇ」と呟きながら苦笑していた。


「にしてもアンタ、よく天刈さんとボッチくんの間に割って入れるよね」

「え? どうして?」

「だってあの二人。誰の目から見ても分かるラブラブっぷりじゃん」

「ラブラブって……あぁ。そういうことね。でもざんねーん。あの二人は付き合ってませーん」

「そうなの⁉ あれで付き合ってないのかよ」

「ね。不思議な関係よね」


 やっぱりほとんどの人たちはボッチくんと天刈さんが付き合ってるって勘違いしてるんだなぁ。まぁ、私も正直『嘘じゃない?』とは思ってるけど。

 でもその二人の進展具合を見るのも、最近の楽しみのひとつなのだ。


「けれど、あの二人はいずれ確実に付き合う。私の中の恋愛センサーがそう確信してる」

「そしたらアンタお邪魔虫だね」

「いやよ! 二人が付き合っても絡みにいくわ! 私だって天刈さんのこと大好きなんだから!」

「めんどいやつに目付けられちゃったなー天刈さんも」


 少しだけ同情するわ、と意味が分からないことを呟くりっちゃん。好きな人に絡みに行くのってそんなに面倒だと思われるのかな?

 そこの境界線が鈍い私は首を捻る。


「もえっぴは無自覚でメンヘラ気質あるからなぁ。まぁ、可愛い子は何をしても許されるの理論で、そのままでいなされー」

「えへへー。りっちゃんが言うならこのままで大丈夫だね」

「あ、これ私が戦犯なやつか? むむ、将来この子のカレシになる男が大変だなぁ」

 ぽんぽん、と頭を撫でながら神妙な顔して何か呟くりっちゃん。

「……それにしても、天刈さんが羨ましいなぁ。私も恋愛ドラマみたいな恋がしたいよぉ」

「おっ。もえっぴも恋したいんだ」

「当然でしょ。高校生なのに誰とも恋愛せずそのまま卒業なんて、青春損してみたいでやだー!」

「なら告ってくる男と適当に付き合っちゃえばいいじゃん」

「えー。それはやだ。だって私に告白してくる人、全員下心がある目で私を見てくるんだもん」

「もえっぴは素晴らしいものをお持ちですからなぁ。足も細くてウェストもくびれてる。女の私でも惚れるいい匂いがするし、男が鼻の下伸ばさないのも無理はない」

「だからそれが嫌なの! 私はね、運命的な出会いを待ち望んでるの。ありふれたものじゃなくて、最初はお友達から、それからお出掛けとか遊んだりしてね、徐々に距離を縮めていって、そして最後に「私が一番」って言われて告白されたい」


 それこそ私の憧れは、ボッチくんと天刈さんみたいな関係。あの二人の関係は、私の理想形といってもいい。

 だからなのかな。私があの二人を間近で見たいと思うのは。


「理想激高やねぇ」

「……知ってるもん」


 私の理想を聞いていたりっちゃんは嘆息して呆れる。その反応も分かってしまうから、私も苦笑を浮かべた。

 理想なんてものは早々叶うものじゃないし、大抵は夢半ばで終わるもの。それでも青春を謳歌している間は、臆せずに追っていいと思う。

 ――でも、人生の転機というものは、案外すぐ近くに転がっているようで。


「そうそう! 最近俺の友達の恋愛事情が超面白いんだよね」


 ふと私の耳に、そんな陽気な声が届いて聞こえた。

 でもそんなことは廊下ではよくあることで、だから私も気にせずりっちゃんと会話を続けていた。

 けれど、彼とすれ違う瞬間――


「やー。ボッチとヤンキーのラブコメが今俺の一番のトレンドだわ」


 彼が放ったその言葉が、思わず私の足を止めさせた。

 だってその話題が、私もよく知っているもので、しかも彼と同じく一番ハマっているトレンドだったから。


「え⁉」

「――をぇ?」


 まさか友人同士の恋愛を見物するもの同士でラブコメが始まるなんて、きっと誰もが予想していない展開だろう。

 でもそれは、もの凄く運命的で――。

 私は運命に導かれるように、彼と見つめ合った。


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