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学校では怖いと有名なJKヤンキーのアマガミさん。家ではめっちゃ可愛い。  作者: 結乃拓也/ゆのや
第1章 【 ヤンキーとあだ名で呼び合うまで 】
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第62話 『 教えて帆織くん 』

「え? 僕とアマガミさんについて知りたい?」

「うん。二人のことを教えてほしい」


 昼休み。唐突に水野さんにそんなお願いをされ、困惑する僕。

 やっぱり昨日のあれ見られちゃってたか。それなら興味湧くのも無理はないかな。

 僕は一拍置くと、好奇心とは何か別の感情をはらんだ藍色の瞳でジッと見つめてくる水野さんに説明を始めた。


「えーと、僕とアマガミさんは普通の友達……でもないか。仲のいい友達です」

「それだけ?」

「え。うん。それだけだけど」


 追求の視線にぎこちなく頷くと、水野さんは「……そう」と短く呼気を吐いた。


「私はてっきり二人は付き合ってるんだと思ってた。クラスでもよく話してるの見かけるし、男女の仲としては距離が近いなって感じてたから」

「まぁ距離感については他の人たちからもよく言及されるね。でも僕らがこの距離でいい、って決めたから、これでいいんだ」

「帆織くんはどこまでも真っ直ぐだね」

「そうでもないよ。僕だってたくさん迷ったり、悩んだりすることがある。でも、それをアマガミさんはいつも強く肯定してくれて、だからこれでいいって決めることができるんだ」

「へぇ。じゃあそれは〝友情〟なのかな」

「あはは。そうかも」


 水野さんの言葉に笑いながら首肯する僕。そんな僕に彼女は理解できないとでも言いたげな視線を送ってきた。


「帆織くんはどうしてそこまで彼女に拘るの?」

「――え?」

「私も大概人の事をどうこう言える性格ではないと理解しているつもりだけど、だけど彼女は明瞭に私たちと住んでる世界が違ったでしょ」

「そんなことはないよ。アマガミさんも僕と同じ地球に住んでる。そして、同じ高校の生徒だ」

「もっと直接的な言い方をするね――どうして不良なんかと仲良くしようとするの?」


 まるで彼女の存在自体を否定しようとする静かで冷ややかな声音に、僕は一瞬怖気づく。しかしすぐに息を整えると、水野さんの言葉を反芻しながらこう返した。


「不良だから。陰キャだから。根暗だから。……そういう、ジャンルで人を判断したくないんだよ、僕は。その人にはその人の在り方がある。好きな趣味や性格が、その人の人生を形成していくものだと思うんだ。きっとこれに例外なんてものはなくて、皆好きなもので人生の色を染めていく。それを何も知らずに、ただ怖い人だからって排除したり敬遠したりしたくない。それが完全に利己的思考ということは分かってる。――でも、僕は知りたかった。いつも退屈そうな顔で授業を受けていて、何もかもに嫌気が差していたように景色を眺める彼女のことを。彼女の世界には何があるのか。何が見えるのか。それを知りたかったんだ」

「――――」


 自分の掌を見つめながら、僕は脳裏に彼女を思い浮かべて胸の内を吐露する。

 それを静かに聞いていた水野さんは、瞳の奥にわずかな寂寥を揺らめかせて。


「そっか。帆織くんが彼女に固執する理由はそれだったんだね」

「うん。だいたいそんな感じかな。あはは。改めて言葉にするとなんだか恥ずかしいや」

「……それは彼女がすごく妬ましいな」

「え?」


 ぽつりと、何か呟いた水野さん。

 聞き返そうとすると、水野さんは「なんでもないよ」と口許をほこらばせて、


「ありがとう帆織くんの気持ちを教えてくれて。おかげで理解できた」


 今夜はよく眠れそう、と水野さんは言うも、僕には彼女の顔がとても晴れたようには見えなかった。


「? なに。私の顔に何かついてる?」

「……ううん。なんでもない」

「そっか。……そうだ。帆織くん。昨日結局聞けなかったオススメの小説を教えてくれないかな」

「うん。喜んで。水野さんが気に入るかは分からないけどね」

「帆織くんと私の本の趣味が意外と似てるから、きっと気に入るよ」


 そう言って、水野さんは微笑む。そこに先ほど僕が感じた妙な違和感は完全に消えていた。

 ならば僕も深追いはしないと、胸に蔓延るもやもやを押し殺して平然を装う。

 これはきっと知ってはいけないと、そう僕の脳が警鐘を鳴らしていた――。


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