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学校では怖いと有名なJKヤンキーのアマガミさん。家ではめっちゃ可愛い。  作者: 結乃拓也/ゆのや
第1章 【 ヤンキーとあだ名で呼び合うまで 】
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第60話 『 校門での待ち人 』

「へぇ。あの本面白いんだ」

「うん。佳作作品だからって見落とすところだったけど、探偵とSFっていう設定がうまく織り交ぜて創られてた。どちらかといえば推理小説というよりラノベよりだけど、その分文章に柔軟さがあって読み易かったよ。私としてはもう少し硬派な文章が好きだけど」


 放課後。急遽委員会の仕事で図書室に集合することとなった僕と水野さん。現在はその帰りで、二人で昇降口まで廊下の廊下を話しながら歩いていた。


「水野さんが面白いって言うんだから面白いんだろうね。早速帰りに書店寄って買っていこうかな」

「判断が早いね。あくまで私個人の感想を帆織くんに述べただけで、帆織が気に入るかは分からないよ」

「だからこそ読む価値があるんだよ。本もゲームもそうだけど、人からオススメされたものって興味湧かない?」

「ならない。そもそもそういう友達がいないから」

「なら僕が水野さんのそういう友達になるよ」

「……帆織くんは今日もいつも通りだね」

「どういうこと?」

「そのままの意味だよ。他意なく相手の懐に入ろうとしてくる。だからこっちは身構えているのに調子が狂う」

「ひょっとして嫌だった?」


 不安げな声で訊ねると、水野さんは僕のことをジッと見つめながら答えた。


「嫌じゃない。ううん。正直に打ち明けると嬉しいよ」

「ふふっ。ならよかった」

「はぁ。ホント、キミといると疲れるわ」

「ご、ごめん」

「謝らないで。これはたんに私の意識がくだらない想像をしているせいだから」


 そう言って、水野さんは肩を落とす。僕としては不満点があれば指摘してもらった方が助かるんだけど、追求して不機嫌にさせるのも避けたい。


「それで、帆織くんのオススメの本はなに?」

「あ、うん。僕のオススメしたい本は――」

「帆織くん?」


 水野さんにオススメの本を紹介しようとしたその時だった。

 昇降口から見える外の景色。そこに、見覚えがある金髪の女子が見えた。


 ――アマガミさんだ。


 すぐにその女子がアマガミさんだと分かった瞬間、


「ごめん! 水野さん。オススメの本はまた今度! 明日でもいいかな?」

「う、うん。それはべつに構わないけど。でもどうしたの、急に慌てて?」

「人を待たせてたの思い出して。すぐに行かないと!」


 校門で佇んでいるアマガミさん。彼女が誰を待っているかはすぐに分かった。だから、早く行かないといけない。

 そんな焦燥が、僕の心臓を駆り立てる。


「それじゃあ、また明日も委員会の仕事頑張ろうね!」

「う、うん。また」

「気を付けて帰ってね!」


 僕の慌てぶりに困惑する水野さん。そんな彼女に手を振ると、ぎこちなく手が振り返ってきた。

 そして足早に昇降口で上履きから靴に履き替えて、外に出ると同時に僕は走り出す。

 向かう先はもちろん――


「アマガミさん!」

「――ボッチ!」


 大声で名前を呼ぶと、その声に気付いた彼女が退屈そうな顔から一変、パッと華やかに咲いたヒマワリのような笑顔を弾けさせた。

 そしてアマガミさんの前で足を止めると、僕ははぁはぁ、と息を切らしながら問いかけた。


「もしかして、ずっと待っててくれたの?」

「……あ、あぁ。先に帰れって言われたけど、やっぱりボッチと帰りたくてさ」


 だから待ってた、と少し照れながら答えるアマガミさん。その反応があまりに可愛いくて、こっちまで照れてしまった。


「つか、悪ぃな。連絡もしないで勝手に待ってるとか、迷惑だったよな?」

「そんなことないよ! 僕も、アマガミさんと帰りたかったから」

「そっか。ならあたしらは同じ気持ちってことか」

「そうだね。同じ気持ちだ」


 嬉しそうにはにかむアマガミさんに釣られるように、僕も微笑をこぼす。


「じゃあ、帰るか」

「うん。帰ろうか。……あ、途中で書店に寄ってもいいかな。買いたい本があるんだ」

「うげぇ。また本買うのか。べつにいいけどよ」

「まぁまぁ、付き合ってくれたお礼にジュース奢るから、それで許してよ」

「しゃーねぇ。ラノベ大好きオタクくんにこの優しいアマガミ様が付き合ってやるか」

「今日買いに行くのはラノベじゃなくて小説だよ」

「おおう。小説って聞いたら鳥肌立ってきた」

「……いくらなんでも嫌いすぎでしょ」


 それから、僕とアマガミさんはゆっくりと歩き出していく。

 そんな僕らを好奇と嫉妬が入り混じった視線が張り付くようにジッと見つめていたことに、彼女との話に夢中になっていた僕は気付きもしなかった。



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