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学校では怖いと有名なJKヤンキーのアマガミさん。家ではめっちゃ可愛い。  作者: 結乃拓也/ゆのや
第1章 【 ヤンキーとあだ名で呼び合うまで 】
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第53話 『 それじゃあ、お友達からで! 』

 体育も終わり、休み時間の廊下をぞろぞろと歩く2組の男子たち。


「いてて。ねぇ海斗くん。僕の鼻赤くなってない?」

「なってるなってる」

「うへぇ。教室戻る前に保健室寄ろうかな」

「今日は盛大に顔面キャッチしてコケたからなぁ。行くなら次の授業の担任に言っておくぞ」

「委員長は基本全般そつなくこなせるのに運動は苦手だよなー。古典的な委員長キャラって感じ」

「あはは。運動自体は好きなんだけどね」


 歩きながら雑談していると、不意に僕の肩に腕が伸びてきた。


「そういえばボッチ。天刈とは結局どういう関係なの?」

「友達だよ」


 と答えると、周囲からは驚嘆と感嘆の声がそれぞれ上がった。


「あの天刈と普通に話せるだけでもすげえけど、友達って堂々と言える仲までいってるのはすげえや」

「てか何きっかけで二人仲良くなったんだよ? 俺たちいつの間にか仲良さげに話してる光景しか見てなかったから、そこら辺気になるわ」

「僕がアマガミさんにしつこく絡んだのがきっかけだよ。ほら、僕とアマガミさん、席が隣同士でしょ。それでせっかくだから仲良くなりたいなって」

「それでマジで仲良くなったと」

「さっすが委員長。天然女たらし」

「それアマガミさんにも言われるんだけど、そんな酷いことした覚えないよ」

「「だって天然だもん」」 


 口を揃えて言われてしまった。うーん。やっぱり女子を誑かしてる覚えはないんだけどなぁ。

 皆の反応に不服気に口を尖らせていると、海斗くんが煩わしそうに手を叩いた。


「ほら、怪我人相手にそんな質問攻めすんな。散れ散れ」

「出たボッチの母親。相変わらず過保護ねー。いいじゃん別に。せっかくの機会だから色々聞きたいじゃん」

「それな。それに海斗。お前どうせ委員長が天刈に取られて寂しいんだろ~?」

「そんなわけねえだろ! 今でも俺とボッチは週二でゲームで集まるくらい仲いいんだからなっ」

「あー。4組の奴らとオンラインで遊んでるんだっけ?」

「そうだよ。遊李くんと誠二くんと集まって遊んでるんだ」

「遊李ってあれか。バスケ部のイケメンだっけ。へぇ、あいつもゲームするんだ」

「するする。モンスタならお前らより上手いぞ」

「「なんだとっ」」


 俺らの方が上手い! と対抗意識を燃やすクラスメイトたちに苦笑しつつ、僕は見えてきた保健室で皆と別れようとする。


「それじゃあ……」


 ――と手を上げようとした時、僕らの背後からけたたましい騒音が聞こえてきた。


「「ん⁉」」


 全員が一斉に振り返ると、ギョッと目を剥く。

 何故か。それは僕らの正面から金髪の少女――アマガミさんが全力疾走でこっちに走ってきたからだった。


「ボッチぃぃぃぃぃ! 助けてくれ――――――っ!」

「何があったの⁉」


 何やら慌てているアマガミさんに、僕は状況が飲み込めず困惑する。それは全員も同じようで、その場にフリーズしていた。

 それからアマガミさんは僕の所まで駆け寄ると、そのまま背後に回って隠れた。


「え、え。なにこれ……」

「頼むボッチ! 今頼れるのお前しかいないんだ! あたしを守ってくれ!」

「守るって何から……」


 そうアマガミさんに聞き促そうとした時だった。彼女が走ってきた廊下から、さらにもう一人、黒髪を靡かせる少女がこちらに向かって手を振りながら走ってくるのが見えた。


「白縫さん?」


 白縫萌佳さんがこっちに向かって走ってきている。

 この場の全員が頭に疑問符を浮かべていると、白縫さんは廊下に響くほどの声で叫んだ。


「あーまーがーいさーん! どうして逃げるのよ――――!」

「お前がさっきからしこつくつきまとってくるからだろ!」


 僕の肩から顔だけ覗かせて叫ぶアマガミさん。そして白縫さんが僕らの前で足を止めると、アマガミさんは再び顔を引っ込めた。


「やっと追いついたのに、むぅ、なんで隠れるの?」

「むしろお前こそなんであたしに絡んでくるんだよ⁉」

「だってわたし。惚れちゃったんだもん。天刈さんに」

「え⁉」


 ぽっと頬を朱らめて告白する白縫さん。その衝撃的な告白を聞いていた僕らはギョッと目を剥く。


「さっきの授業で助けてもらった瞬間から、わたし、天刈さんのこと好きになっちゃった。……きゃっ」

「きゃっじゃねえよ⁉ あれはたまたまだって何度も言ってるだろ!」

「その偶然のおかげで私は無事だったんだよ! 助けられたこの御恩。一生かけてお返しします!」

「しなくていいからあっち行け!」

「ううん。させて!」

「圧強っ⁉ ボッチかよ!」

「アマガミさん。それは褒めてると受け取っていいのかな?」


 今のところ審議が怪しいぞ。僕としては前者であって欲しい限りだ。

 そんな希望的観測を余所に、アマガミさんは人慣れしていない犬みたくさらに僕の背中に隠れる。


「あーもう。ほんとどっか行ってくれ」

「いいじゃない。この機会に二人友達になれば」

「冗談じゃねえ。あたしは友達はボッチだけで十分だ」


 やばい。不覚にもちょっと嬉しくなってしまった。というか想像以上に嬉しい。

 しかし、それは勿体ないことだと思う。

 僕だけよりも他に友達がいた方がアマガミさんにとっても学校生活がより充実してくると思うし、それに何より、白縫さんは同性だ。

 だからきっと僕よりも気軽に接することが出来るんじゃないかな。

 そんな思案をしていると、白縫さんが爛々と目を輝かせて僕の手を握ってきた。


「素晴らしい提案よボッチくん! 天刈さん……ううんアマガミさん。私と是非友達になってください!」

「あたしをアマガミって呼んでいいのはあたしが認めたやつだけだ!」

「それじゃあこれからはそう呼べるよう頑張るわ!」

「なんで一向に退かねえんだよ! あれか、委員長ってやつは全員押しが強いのか⁉」

「はぁぁ! 私が委員長だって知っててくれたんだ。嬉しい!」

「体育の時そう呼ばれてたろ! いちいち感動すんな!」


 感嘆に浸る萌佳さんに声を荒げてツッコむアマガミさん。アマガミさんには申し訳ないけど、白縫さんの気持ち分かるなぁ。アマガミさんに自分のこと知ってもらえると、異常に嬉しくなるよね。ちなみに、僕はずっとそれが続いてる。


「くっそー。めちゃくちゃ面倒な奴助けちまった」

「よかったねアマガミさん。友達ができそうで」

「なんにもよくねえよ! お前も少しはあたしの話を聞け!」

「これからよろしくね、天刈さん!」

「あーもう! 最悪だ――――――――――――――――――――――っ‼」


 休み時間の校舎。学生たちの賑わう喧噪をかき消すように、アマガミさんの絶叫が校舎に響き渡った。


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