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学校では怖いと有名なJKヤンキーのアマガミさん。家ではめっちゃ可愛い。  作者: 結乃拓也/ゆのや
第1章 【 ヤンキーとあだ名で呼び合うまで 】
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第38話 『 ありのままの自分で 』

「……あの、アマガミさん」

「んだよ」


 昨日の喧嘩事件から一夜明け、僕らにまた日常が戻ってきた。

 がしかし、何故か僕はアマガミさんに距離を取られていた。


「ちょっと遠くない?」

「そんなことはねぇ。至っていつもの距離感だ」


 と言う割には話しづらい。


「……すす」

「……すすす」


 僕が近づこうとするとアマガミさんは磁石のS極とS極のように反発する。

 うーん。この前のように露骨に敬遠されてるわけではないけど、かといっていつもの距離間でもないなぁ。


「僕、また何かしちゃった?」

「何もしてねぇよ。これはあれだ。男女の適切な距離感ってやつだ」

「今更じゃない?」


 確かに最近はお互いに距離感が近かった気がするけども。しかしアマガミさんが今更そんなことを気にするとは到底思えない。


「この距離、話しづらい上に食べづらくない?」

「ない」


 アマガミさんはプチトマトを頬張りながらきっぱりと言い切る。


「ハッ! もしかして僕臭い⁉」

「いきなり体臭なんか気にしてどうしたんだ。全然臭くねえよ。柔軟剤のいい匂いだ」

「ならどうして距離取るのさ」


 体臭が問題ではないのなら他に思い当たる理由も思い浮かばず、僕は情けなくも弱々しく訊ねた。

 そんな僕にアマガミさんは困ったように狼狽したあと、諦観したように嘆息してからようやく教えてくれた。


「……昨日、ボッチを危険な目に遭わせちまったろ」

「え、うん。それがどうかしたの?」


 小首を傾げると、アマガミさんは僕のことをチラチラと見ながら続けた。


「前にさ、海斗ってやつに啖呵切っちまったじゃん。もしボッチを危ない目に遭わせたら、あたしは二度とボッチには関わらないって」

「そういえばそうだったね」

「だから、やっぱあたしはボッチと関わらない方がいいかもって……」

「そんなの嫌だよ!」

「――っ!」


 ようやくアマガミさんが距離を取っていた理由が分かった途端、僕は大声を上げてその言葉を否定した。

 僕は弁当箱をコンクリートの床に置くと、狼狽えるアマガミさんとの距離を詰めた。


「僕はもっとアマガミさんと居たい。僕の家でゲームする約束だってしたでしょ」

「そ、そうだけど。でもまたお前を危険な目に遭わせたら、あたしはその方が嫌だ」

「僕はアマガミさんと話せない方が嫌だよ。アマガミさんはどうなの?」


 ジッと赤瞳を見つめながら訴えかければ、彼女は視線を逸らしてぎこちなく答えた。


「あ、あたしだって。ボッチと話せないのは……嫌だ」

「なら答えは決まりだよ」


 アマガミさんも僕とまだ居たいと望んでくれるのなら、それが答えだ。

 けれど、僕の胸裏とは裏腹にアマガミさんはまだ納得していないようで。


「でも、それじゃあアイツは納得しないだろ」

「昨日のことならまだ誰にも知られてないでしょ」

「そんなの遅かれ早かれ誰かが言いふらすに決まってる。それでアイツにバレたら……」

「ならその時ははぐらかせばいいんじゃないかな」

「……なっ」


 僕の提案にアマガミさんが絶句した。


「ボッチの口からはぐらかすなんて出てきた」

「僕だって嘘を吐く時くらいあるよ」

「お前ってそんな奴だったっけ?」

「アマガミさんは僕のこと勘違いしてるよ。アマガミさんや皆が評価するほど、僕は達観していなければ善人でもない」


 皆、僕をいい奴だとか頼れる友達と評価してくれるけど、それは間違いだ。全部が過大評価でしかない。

 僕は、ただ僕が正しいと思ったことをしているだけ。いうなれば偽善者で、善良な人間では決してない。

 友達を失いたくないから。周りの目を気にしていい人を演じているだけの、中身のない人間が僕だ。

 だからこそ、僕はアマガミさんの生き方を尊敬していて、彼女の生き様をもっと近くで見たいと思っている。これも、結局は利己的感情でしかない。


「――ふはっ」

「……なんで急に笑うの?」


 突然笑いだしたアマガミさんに戸惑えば、そんな僕に彼女は「悪ぃ、悪ぃ」と笑いながら謝って、


「いや。ボッチも意外と悪い奴なんなだと思ったら急に親近感湧いて、そしたら急におかしくなって」

「…………」

「はぁ。そうかそうか。ボッチも嘘吐けるんだな」

「当たり前でしょ」


 アマガミさんが嬉しそうに呟く。

 依然として戸惑う僕に、アマガミさんは迷いの晴れたような顔を向けて、


「お前、大事な友達に嘘ついてまであたしと一緒に居たいのか?」

「……うん。もっと、アマガミさんのことを知りたい」

「はは。あたしはとんだ変わったやつに気に入られちまったな」

「嫌だ?」

「ちょっと引いてるけど、でも嫌じゃねえよ。あたしも、ボッチのこと気に入ってるからな。それにあたしも、ボッチと同じ気持ちだ」


 それまで僕と距離を保っていたアマガミさんが今度は自分から距離を縮めてきて、そして言う。


「そうだな。もしキザ野郎に言い詰められても、嘘吐けばいっか」

「少し後ろめたいけど、でもそれでアマガミさんと居られるなら、僕は昨日の事を内緒にするよ」

「ふふっ。この悪ガキめ」

「あははっ。そうだね。僕はとんだ悪ガキだ」


 何故だろうか。

 彼女と一緒にいると、心が軽くなる。

 ありのままの自分でいることを、許してもらえるような気分になる。


「アマガミさん」

「なんだよ?」

「ありがとうね」

「あぁ? なんで感謝されたのか全然分かんねぇ。むしろ感謝するのはあたしのほうだってのに」


 訳が分からないと鼻に皺を寄せて、アマガミさんは再びお弁当を食べ始めた。

 そんな彼女を見つめていると照れたようにそっぽを向いてしまって、「こっち見るな」と怒られてしまう。


「(――本当に、ありがとう)」


 僕も再びお弁当を食べ始める直前、胸裏でそんな感謝を告げる。

 これまでの自分が嘘だとは言わない。


 けれど。


 アマガミさんと関わって初めて、僕は等身大の自分を見れた気がした。


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