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学校では怖いと有名なJKヤンキーのアマガミさん。家ではめっちゃ可愛い。  作者: 結乃拓也/ゆのや
第1章 【 ヤンキーとあだ名で呼び合うまで 】
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第35話 『アマガミさんと怨嗟の声 』

「――ち。――おい、ボッチ」

「――ぇ」


 不意にアマガミさんに袖を引っ張られて、僕はハッと我に返る。


「どうしたんだよボーっとして?」

「ごめん。ちょっと考えごとしてて」

「ふーん。べつにそれは構わねえけど、でも気を付けろよな。車に引かれたら大変だ」


 珍しくアマガミさんに注意されてしまった。

 僕はもう一度「ごめん」と謝りつつ、


「でも心配してくれてありがと」

「べ、べつに。礼なんざ言われる筋合いねぇし」


 照れたようにそっぽを向くアマガミさんに僕は「素直じゃないなぁ」とくすくす笑ってしまった。


 彼女はバツが悪そうに口を尖らせながら視線を戻すと、


「それで、考え事ってなに考えてたんだよ」

「…………」


 アマガミさんのことを考えた、なんて言ったら彼女はどんな反応するだろうか。気にはなりながらも、馬鹿正直に言えるはずもなく僕は誤魔化した。


「今日の夕飯は何にしようかなって」

「そんなこと真剣に悩んでたのかよ」


 呆れた、とアマガミさんが肩を落とす。


「そんなことでボーっとしてて事故にでも遭われたらたまったもんじゃねえからやめろよな」

「ふふ。アマガミさんってやっぱり優しいね」

「今は揶揄ってる場合じゃねえっつの。たくっ、お前は相変わらず緊張感がねぇな」

「そうかな」

「そうだ。ボッチはもうちょっと緊張感をもって生きろ。お前は危なかっしいんだよ。抜けてるようで抜けてねぇけど、でも時々気が抜けてるからな」

「どっちなのさそれ」

「とにかく! もうちょっとシャキッとしろってこと!」

「は、はい」


 アマガミさんに怒鳴られてしまった。

 慌てて頷く僕に、アマガミさんは疲れたように嘆息して後頭部を掻く。


「こんなんじゃあたしがボッチを見送る側になっちまう」

「流石に女の子に見送られる側になるのは男として情けなすぎるよ」

「でもボッチよりあたしの方が強いぞ」


 にしし、と八重歯をみせながら言うアマガミさん。


「アマガミさんの言う通りだけど、でも僕だってちょっとくらいなら戦えるよ!」

「へぇ。虫も殺せなそうな顔してんのにか?」

「無暗に虫さんを殺しちゃ可哀そうだよ」

「いや今のは比喩的表現ってやつで……そんな本気で切なそうな顔すんなよ」


 アマガミさんが狼狽する。それからやれやれと嘆息して、


「ま、喧嘩なんてボッチには似合わねえな。お前は笑ってる顔が一番いい」

「それ、僕がアマガミさんに言うべき台詞じゃない?」


 不覚にもちょっとときめいてしまったけど。

 眉根を寄せる僕に、アマガミさんは「ばーか」とデコピンを額に入れてきた。


「んな細かいことは気にしなくていいんだよ。あたしはボッチの笑ってる顔見るのが好きだからな。だからあたしがお前を守ってやる」

「――――」


 堂々とそう言い切るアマガミさん。

 あぁ、やっぱり彼女はカッコいいな。

 本当に、僕の憧れの人だ。


「……僕も」

「ん?」

「僕も、アマガミさんの笑ってる顔が好きだよ」

「~~~~っ。そ、そうか。それは、うん。まぁ、なんだ。いつも言われてるからな。うん。し、知ってるつの」


 僕も自分の胸の内を素直に吐露すれば、アマガミさんは顔を一気に真っ赤にして、そんな顔を見せたくないのか腕で隠した。


「うん。僕はアマガミさんのその顔も好きだな」

「言ったなこのやろー。ボッチぃ。あんま調子に乗ると痛い目みせるからな?」

「あははっ! 痛いよアマガミさん」

「調子に乗ったバツだっ。あたしを揶揄う奴はこうしてやる。うりゃりゃ」


 怒ったアマガミさんが僕にのしかかって来て、そして僕の頭を両拳でぐりぐりしてくる。

 少しだけ痛くて、でもこの行為から彼女からの親愛を感じ取れているような気がして、僕はそれが嬉しかった。

 こんな時間がいつまでも続けばいいのに――とそう思った瞬間。


「へぇ。随分とまぁ楽しそうだな。アマガミよぉ」


 低く、悪意をはらんだ声音が僕らの和やかな時間を引き裂いた――。


明日はお休み。

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