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学校では怖いと有名なJKヤンキーのアマガミさん。家ではめっちゃ可愛い。  作者: 結乃拓也/ゆのや
第1章 【 ヤンキーとあだ名で呼び合うまで 】
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第1話 『 アマガミさんと僕 』

 これはまだ、僕とアマガミさんが付き合う前のお話。


 僕とアマガミさんは同じ高校の同じクラスで、隣の席だった。


「……今日も来てない」


 とはいってもアマガミさんは遅刻の常習犯で、登校してくるのは基本2限目か3限目から。ひどい時は午後から登校してきたり、そのまま来なかったりする。

 だから先生に怒られるのも日常茶飯事で、教室に入ってくるアマガミさんはいつも不機嫌そうな顔をしていた。


「あ、来た」


 今日は三限目の休み時間にようやく登校してきた。

 露骨に不機嫌だという態度を放ちながら教室に入ってくるアマガミさんに、それまで騒然としていた教室には一気に緊張感が走って静寂が降りる。


「…………」

「「…………」」


 クラスメイトの誰もが自席に向かうアマガミさんを一瞥し、緊張と嫌悪感をはらんだ視線を向ける。

 そんな刺々しい視線は、アマガミさんが着席するまで続いた。

 ようやく彼女が席に着くと、クラスは徐々に|喧噪《けんそう』を取り戻していった。


「おはよう。天刈あまがいさん」

「――――」


 机に鞄を置いたアマガミさんに挨拶するも、当然のように無視される。

 今年の4月に入学して、彼女と同じクラスになってから早一ヵ月。こうして挨拶するも、僕は未だにアマガミさんから返事をもらえたことはない。

 べつに返事が欲しいわけでも、仲良くなりたい訳でもない。……ただ、そうだな。

同じ教室にいるのに、彼女を仲間外れにはしたくなかった。僕が彼女に無視されても挨拶するのは、そんな感じの理由だった。


 僕も決して友達が多い訳ではないけれど、それでもクラスで露骨にハブられる、なんてことはなかった。その理由は僕が学級委員長という立場なのと、男子が好きなアニメやゲームといった娯楽に精通していることが大きいかもしれないけど。

 大人しいけど頼れるヤツ。というのが僕に対する周囲の評価だった。

 対してアマガミさんの周囲からの評価は、生きる時代を間違えたヤンキーで楽しい空気をブチ壊す悪人だった。


 僕と彼女の周囲からの評価は、真逆だった。


 だから恐ろしい彼女に、誰も近づこうとしなかった。


「次の授業は数学だよ」

「――――」


 それでも僕だけは、アマガミさんと対話を試みることを続けていた。

 だって僕は、周囲から怖いと評される彼女のことを何も知らない。

 表面上や噂での彼女のことは知っていても、内面や実情は見ていない。

 ひょっとしたら本当の彼女は優しいかもしれないし、周囲の評判通りただ怖い人なのかもしれない。

 誰も知らないなら、知ろうとしないのなら、僕はアマガミさんの事を知らなければならない気がした。

 どうしてそんな気になるのかは僕自身も分からないけど、たぶん、自分の中の譲れない何かが働いているのかもしれない。友達曰く、僕って変にプライド高いらしいし。

 まぁ僕のことはどうでもよくて。まだよく知らない相手のことを判断するのは、相手を知り尽くしてからでも遅くないとはないと思うんだ。


「天刈さん、この前の数学いなかったから、分からないことがあったら何でも聞いてね」

「――――」


 確かに彼女は怖いし、無視され続けることは傷つく。

 でも僕は諦めない。彼女が僕と対話してもいいと思える日まで、声を掛け続ける。

 それが使命感なのか意地なのかは分からないけど。


「今日はいい天気だし、段々と暖かくなってきたよねぇ」

「――――」

「もうすぐ春も終わりかな。そうなると次は梅雨だね。あ、そうそう。この間ね。すごくおかしな猫さんに会ったんだ……」

「――――」


 一方的な会話は続く。


 今日も相変わらず、アマガミさんからの返事はないまま。

 アマガミさんは、もしかしたら不愉快なだけかもしれないけど。

 けれど、僕は不思議とこの時間が嫌いじゃなかった。


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