第13話 『 朝倉海斗とボッチ奪還作戦③ 』
「はい、どうぞ。アマガミさん」
「なんか悪ぃな。友達とメシ食う機会潰した挙句、おかずまで作ってきてもらっちまって」
「気にしないで。元々先にお昼一緒に食べようって先に約束したのは僕だもん。それなのに断るのは礼儀としてなってないでしょ」
「生真面目に生きてんなお前。窮屈そうだ」
「そうかな。僕は僕で充実した毎日を送ってるつもりだよ」
「ある意味じゃリア充だな……唐揚げうま⁉」
「ふふ。喜んでもらえてよかった」
全校生徒が待ちに待った昼休み。燦々《さんさん》と輝くお天道様の元、それはそれは楽しそうに昼食を食べている男女二人がいた。
実に楽しく、微笑ましい光景だ。そう、まるで付き合いたてのカップルのような距離でありながら、既に結婚しているのでは? と錯覚してしまうような光景。
そんなクラスの学級委員長と金髪ヤンキーの楽しそうな食事風景とは正反対に、俺の食事風景はなんて殺伐たるものやら。
「……あの二人、実は付き合ってるのでは?」
「冗談でもそんなこと言うんじゃねえ。その七三分けぱっつんにすんぞ」
「荒れてるでござるなぁ」
現在俺は、ゲーム仲間の誠二と遊李の三人で昼食を共にしていた。
男三人で昼飯を食う光景は、まぁ学生生活ならよく見る光景だろう。そこはいい。しかし問題なのは場所だ。
ボッチと天刈がぽかぽかとした絶好の場所で昼飯を食っているのに対し、俺たちは彼らに見つからないよう屋上の日陰でメシを食っていた。
「今日はやたら剣幕漂わせた顔で昼飯食おうって言ってきたから、何か悩み事の相談なのかと思ったら……まさかやることがストーカーとはねぇ」
「ストーカーじゃねえ。智景が天刈に何かされないか見張ってるだけだ」
「それをストーカーと言うのでござるよ」
二人は興味なさげに弁当を食べながらボッチと天刈を見ていた。
「つーか、三限目の休み時間? だっけ。2組から黄色い歓声が聞こえたんだけどあれはなんだったの?」
「智景が天刈を口説いてた」
詳しい経緯を省いての説明に、誠二と遊李が目を剥いて吹いた。
「ゴホッゴホッ⁉ は⁉ なんだそれ⁉ やっぱあの二人ってそういう……」
「全く以てそういう関係じゃねえ! 誰があんなヤンキー女との交際なんて認めるか!」
「なんですっかり父親気分なのでござるか海斗氏」
「アイツがヤンキーと交際するくらいなら、俺は父親にでも鬼にでもなってやるよ!」
「なんかいつにも増して過保護になってんなぁ。べつに他人の恋愛に口挟む権利俺らになくない?」
「お前らは智景と友達じゃねえのかよ!」
見損なったぞ! と叱責すると、遊李はめんどくさそうに返してきた。
「友達だし、大事なゲーム仲間だよ。でも、だからこそボッチの好きなようにさせるべきなんじゃないの」
「遊李氏の意見に賛成でござるな。外野がとやかく言うより、本人が選んだ相手であれば文句などありますまい」
うぐぐ、と呻く俺に、誠二は淡々とした口調で続ける。
「それに、ボッチ氏は我々よりも成熟した思考の持ち主ではござらぬか。そんなボッチ氏が天刈愛美と共に行動して問題ないと思っているのなら、海斗氏の危惧は杞憂でござろう」
「くっ! 寺の息子に説得されると説得力がちげえ⁉」
誠二の説得が強く胸に刺さる。
たしかに、二人の言う通りだ。智景が天刈と一緒にいて平気だと思っているのなら、俺は何よりも友達の想いを尊重すべきなのだろう。
理屈では分かる。
でも、やっぱり納得はできなかった。
「ボッチと話す時間が減って寂しいのも分かるけどさ。べつに俺たちの交流は何も学校の中だけじゃないじゃんか」
「そうでござる。学校で話せなかった分は、夜のゲーム集会でたくさん話せばいいではござらんか」
「そうそう。まずはボッチが女子と上手くやってることを祝ってやらないと」
「まぁ、上手く行ってる相手があの天刈愛美というのはやはり驚嘆せざるを得ませんが」
「あははっ。それな」
二人はどこまでも、智景の味方だった。
智景を信頼し、彼の取る行動に任せる。本当の友達だからこそ、余計な心配はせず、そっと陰から見守るという行動を選べている。
なら、俺は。
みっともなく喚いて、醜態を晒してまで智景を脅威から護ろうとした俺の行動は、ただただ迷惑でしかなかったのだろうか。
「(……俺はただ、アイツのことを守りたいだけだ)」
それは、自分の行動を正当化する為の言い訳でしかないのだろうか。
俺は何も分からないまま、ただ悔しさに奥歯を噛みしめた。
【登場人物紹介】
朝倉海斗。ボッチの中学からの親友。ゲーム仲間。ちょっぴり過保護。
遊李。ボッチの中学からの親友でゲーム仲間。茶髪の陽キャ。
誠二。ボッチの中学からの親友でゲーム仲間。お寺の息子。七三分け。語尾が「ござる」。
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