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学校では怖いと有名なJKヤンキーのアマガミさん。家ではめっちゃ可愛い。  作者: 結乃拓也/ゆのや
第1章 【 ヤンキーとあだ名で呼び合うまで 】
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第12話 『 朝倉海斗とボッチ奪還作戦② 』

「なあ智景! 今日は俺たちと昼飯食わね⁉」


 そんなわけで俺のボッチ奪還作戦が始まった。

 三限目の休み時間。ここが狙い目だと確信した俺は、智景の席に足早に向かうと単刀直入に誘った。

 智景は突然のことに驚いたように目を瞬かせて、


「嬉しいお誘いだけど……ごめん。今日は既にアマガミさんとお昼一緒に食べるって約束しちゃったから」


 申し訳なさそうに断ってきた。

 ぐぬぬ、と呻きながらチラッと後方に目をやれば、件の天刈は俺たちの会話に興味なさげにスマホをイジっていた。なんだその正妻みたいな振る舞いはっ。ムカつく。

 しかし俺もそう簡単に引き下がるわけにもいかない。


「で、でも今日、とんでもなくお前と昼飯食いたい気分なんだよなー。それこそ一緒に食べられなかったら死んじゃうかもしれないくらいに!」

「あはは。面白いこと言うね海斗くん。でも大丈夫。誰かと一緒にご飯食べられないくらいで人は死なないよ」


 くっ⁉ 相変わらず手強い男だ智景! 

 コイツ、一度取り付けた約束は必ず果たさないと気が済まない質なんだよなぁ。

 だから、天刈との約束を必ず履行しようとして、並大抵のことじゃ揺らがない。

 そういう所が友達として尊敬できるし、誇りだとも思う。

 しかあし! 今は感嘆に浸っている場合ではない!


「そこをなんとか! 頼む! 今日お前と昼飯食わないと、俺が俺でなくなってしまう!」

「急に中二病設定持ち込むのやめてくれる?」

「お前が一番大切なんだよ!」

「クラスの皆の前で何言ってんの⁉」


 もはやなりふり構わず強引に智景を昼食に誘おうとする俺。

 そんな俺を、智景はおろかクラスの連中までもドン引きした視線を送ってきていた。若干その視線が痛いが、でも今は気にしてる場合じゃない。


「はぁ。なんでそんなに必死なのか分からないけど、やっぱり今日は先約があるし無理だよ。だからごめんね海斗くん」

「そんなぁ」


 ガックリと肩を落とす俺の後ろで、誰かがボソリとこう言った。


「……食ってやればいいねぇか」

「――ぇ」


 声のした方向に視線を移せば、それまでずっと沈黙を続けていた天刈が気怠そうな視線を俺たちに送って来ていた。

 まさかの援護射撃に、俺は唖然として開いた口が塞がらなかった。


「律儀に約束守ってあたしとメシ食う必要なんてないだろ」

「何言ってるのさ。約束を守るのは人として当然のことでしょ」

「お前は頑な過ぎんだよ。他の友達と食べるからやっぱり今日は無理、くらいのノリでいいじゃねえか」


 わずかに二人に漂う険悪な空気。それを引き起こした元凶の俺は、情けなく茫然と静観することしかできなかった。


「お前はあたしより友達を大切にしろよ」


 そんな、天刈の自嘲にも聞こえた言葉に、


「アマガミさんだって僕の大切な友達だよ」

「――っ」


 ボッチは真っ直ぐに、力強い眦で天刈を見つめながら告げた。


「僕はアマガミさんと一緒にお昼ご飯を食べたいと思ったから誘ったんだ」

「……でも、あたしより仲いい友達と食べたほうが、お前だって楽しいだろ」

「何言ってるんだよ。アマガミさんと一緒にいる時間だって僕には大切な時間だ」

「……お、おう。そう、か」


 嘘偽りのない熱の籠った言葉に、天刈は照れたように狼狽して、少しずつ頬を朱に染めていく。


「アマガミさんが僕と食べるのを鬱陶しい、煩わしいと思うなら……僕はこれ以上アマガミさんを誘いはしないよ」

「そんなことない! ……お、お前と食べるメシは、悪くない」


 おかずも美味いし、と小さい声で言う天刈。

 なんだ。この、二人の間に漂う甘酸っぱい空気は⁉

 一人その空気に置いて行かれる俺を無視して、智景と天刈は見つめ合いながら会話を続けた。


「海斗くんたちも僕の大切な友達だよ。でもね、アマガミさんだって僕の大切な友達なんだ」

「――うぅっ」

「そんな友達との約束を破るなんて、アマガミさんが許せても僕が許せない」

「――そ、そんな真っ直ぐな瞳であたしを見るなっ。なんか、心臓がザワつく⁉」

「アマガミさんは、僕と一緒にご飯食べるの嫌だ?」

「だからそんな顔すんなって⁉ ああもう分かったよ! 一緒にメシ食えばいいんだろ食えば! バカなこと言って悪かったな!」 


 せきを切ったように顔を真っ赤にして叫ぶ天刈。

 まさかあの誰とも関わろうとしないヤンキーの天刈をここまで狼狽えさせるとは、と誰もが感嘆としている最中、そんな偉業を成し遂げた男とはというと、


「うん! 今日は一緒にお昼食べようね、アマガミさん」

「分かったから。だからその笑顔あたしに向けるな。心臓が、心臓が破裂する!」


 およそ男子高校生とは思えない純真無垢な笑顔を咲かせながら、誰もが恐れるヤンキーを悶絶させていた。


「なんであたしはこんな小動物じみた男に言い負かされてんだ。くそっ、心臓がバクバクする⁉ ボッチの顔が直視できねぇぇ⁉」


 アマガミが小動物男子に懐柔される一部始終を茫然と見ていた俺に、その小動物――智景は顔の前で手を合わせて、


「そういうわけでごめんね海斗くん。誘ってくれたのは嬉しいんだけど、お昼はまた今度一緒に食べよう」

「あ、あぁ」

「その時はお詫びに大学いもも作ってくるね」

「……た、楽しみにしてるよ」


 謝る智景に、俺は半歩遅れて返事した。


 こうして智景に振られた俺は、見るも無残な敗北者たる有り様で自席へと戻っていき、


「智景にフラれた」

「「海斗が燃え尽きた⁉」」


 某あし〇のジョーよろしく、真っ白な灰になったように自分の席で佇んだのだった。


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